ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成27年6月18日
評価年月日:平成27年3月18日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓
1.案件名
(1)供与国名
パキスタン・イスラム共和国
(2)案件名
ラホール給水設備エネルギー効率化計画
(3)目的・事業内容
本計画は,パンジャブ州ラホール市において老朽化した給水設備を更新することにより,低下した井戸能力の回復と給水設備に係るエネルギーの効率化を図り,もって持続的で安定した給水サービスの実現及び同国の経済成長に寄与するもの。供与限度額は25億5,400万円。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
考慮すべき留意点としては,以下の事項が挙げられる。
- ア 治安・政情が極度に悪化しないこと。
- イ パキスタン側負担事項が適切に実施されること。
- ウ 電力不足や極端な電力料金の上昇が発生した場合に,優先的に電力供給がなされ,州政府等による電力料金支払いがなされる等,給水サービスが継続されること。
2.無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア パンジャブ州はパキスタンの国土の約4分の1を占め,人口の55%に当たる約9,700万人(2011年推計)が暮らす同国最大の州であり,経済活動の要でもある。ラホール市はパンジャブ州の州都として,同州の経済の中心地となっており,1970年代から州全体の人口増加率を上回る割合で人口集中が継続しており,現在は約740万人の人口を抱えている。パキスタン政府は,ラホール市の人口増加に伴う水需要の増加に対応すべく,1975年に「ラホール上下水道プロジェクト調査」を実施し,井戸建設による水源確保がなされた結果,ラホール都市部の給水率は89%という高水準となっている。
- イ 他方,ラホール市の給水施設(深井戸)の多くは耐用年数を超えて稼働しており,井戸の目詰まり,ポンプの老朽化による揚水量やエネルギー効率の低下,さらには都市部における計画停電等により,計画給水量が確保できなくなっており,実施機関であるラホール上下水道公社(WASA)の財政状況の悪化も招いている。
- ウ かかる背景からパキスタン政府は,ラホール市において老朽化した深井戸の更新と給水設備に係るエネルギー効率の改善を図るため,深井戸の更新とエネルギー監査機材の整備について我が国に支援を要請してきた。
(2)効率性
- ア 整備するポンプ形式にあたっては,運転の安定性,ポンプ効率,施工性に加え,地元業者による修理能力を念頭に置いたメンテナンス面を考慮して選定した。
- イ 将来的な地下水位の低下を考慮した上で,計画揚水量及びポンプ容量・揚程を設定した。
(3)有効性
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
- ア 深井戸の更新により,給水量が1日あたり約17.2万m3増加(基準値:2013年34.4万m3/日)するとともに,水質改善が図られ,ラホールWASA管区内の約550万人に対し,安全で安定した水供給が可能となる。
- イ ポンプ更新によりエネルギーの効率化(約37%)が図られることで,温室効果ガス削減等の気候変動緩和への寄与が期待されるとともに,ラホールWASAの財政が改善されることで,持続的な運営・維持管理体制の構築に貢献する。
- ウ エネルギー監査機材の導入及び技術指導により,揚水量の実態把握と無収水の対応強化が図られ,維持管理の効率化が期待される。
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)パキスタン政府からの要請書
- (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)