ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成27年4月8日
評価年月日:平成27年2月4日
評価責任者:国別開発協力第1課長 宮下 匡之
1.案件名
1-1.供与国名
カンボジア王国
1-2.案件名
スバイリエン州病院改善計画
1-3.目的・事業内容
本計画は,カンボジア国スバイリエン州の拠点病院において,病院施設の整備及び医療機材の供与を行うことにより,産婦人科,外科,外来等の患者を中心に質の高い保健医療サービスの提供を行うもの。供与限度額は10.77億円である。
1-4.環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)州病院の敷地内で用地の選定が行われること。
- (2)政府が定める拠点病院としての機能が大幅に変更されないこと。
2.無償資金協力の必要性
2-1.必要性
- (1)カンボジアでは,1970年代からの内戦により国の保健医療システムが崩壊し,内戦終結後は,妊産婦死亡率が2000年の470(出生10万対)から2010年には206(出生10万対・カンボジア人口保健調査2010)に低減するなど保健指標は改善傾向にあるものの,周辺国に比べると依然改善の余地がある。特に地方では,医療従事者及び保健医療施設・機材の不足により病院の保健サービスの提供体制は脆弱である。
- (2)スバイリエン州の5歳未満児死亡率は,出生1,000人当たり93人(カンボジア平均54人・カンボジア人口保健調査2010),妊産婦死亡率は出生10万対559人(カンボジア平均461人)(カンボジア人口センサス2008),人口1万人当たり病床数が3.5床(カンボジア平均6.7床)(カンボジア国民保険統計2011)と国内平均を大きく下回っており,保健医療の充実が求められている。また同州は,11の経済特区を持つ経済的にも重要な州であり,今後は南部経済回廊上の国道1号線の整備及びネアックルン橋の開通により交通量の大幅増も予測され,長期的には経済特区の発展による人口増加が想定されているが,同州病院は施設及び機材の不足や老朽化のため,拠点病院として十分機能しておらず,早急な対応が必要となっている。
- (3)なお,カンボジア政府は「国家開発戦略計画」において保健医療を優先課題と位置付け,「国家保健戦略計画2008-2015」に第三次医療施設での保健サービスの拡充を掲げている。
2-2.効率性
- (1)技術協力プロジェクトとの連携
「レファラル病院における医療機材管理システム強化プロジェクト」(2009-2014年),助産能力強化を通じた母子保健改善プロジェクト」等の技術協力プロジェクトを通し,スバイリエン州を含むコンポンチャム地域で病院の実習指導者の能力強化及び地方の助産人材研修体制の強化を支援しており,本計画による施設,機材の改善とともに母子保健サービスの向上の相乗効果が期待される。 - (2)他ドナー事業との整合性の確保
世界銀行,英,仏,豪,ベルギー,国連児童基金,国連人口基金等が「保健セクター支援計画2」に共同出資し,保健分野全般の支援を行っており,その中で地方のヘルスセンターの建設や機材整備が行われている。また,韓国国際協力事業団(KOIKA)がプノンペンにおいて眼科病院の建設や複数の地方病院の改修事業を実施中。本計画においてもこれら事業との整合性ある実施により,目標を効率的に達成する。
2-3.有効性
- (1)スバイリエン州の拠点病院において施設の整備及び医療機材の供与を行うことにより,産婦人科,救急,外科等の患者を中心に質の高い保健医療サービスが提供される。
- (2)医療サービス利用者数について,現在から2020年の目標値として,救急患者数を年間約2,000人から約2500人,産婦人科の延入院日数(人日/年)を約8,900日から約14,000日,分娩件数を約2300件から3000件,外科手術数を約600件から約900件,外来患者数を年間約9700人から約16000人にそれぞれ増加が見込まれている。
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)カンボジア政府からの要請書
- (2)JICAの調査報告書