ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成27年4月8日
評価年月日:平成27年2月4日
評価責任者:国別開発協力第1課長 宮下 匡之
1.案件名
1-1.供与国名
カンボジア王国
1-2.案件名
プノンペン交通管制システム整備計画
1-3.目的・事業内容
本計画は,プノンペン都における100箇所(既存の整備交差点69箇所中64箇所の取り換えを含む)の交差点信号機や交通管制センター等の導入を進め,交通状況の改善を図り,もってプノンペンの経済活動の活性化に寄与するもの。供与限度額は17.27億円である。
1-4.環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)先方負担事項(工事監理,機材置き場,必要スタッフの配置,諸事務手続,免税措置の実施及び各種手数料等)の確実な実施
- (2)工事実施箇所の埋設物等にかかる先方関係機関の情報提供及び対応
2.無償資金協力の必要性
2-1.必要性
- (1)カンボジア政府は,第3次四辺形戦略(2013-2018)における戦略の柱の1つである「インフラ整備」を通じ,経済成長及び貧困削減のための交通インフラ整備を推進している。
- (2)首都であるプノンペン都は人口185万人(2012年)を有するカンボジアの政治経済の中心地であり,近年の経済発展を背景に登録車輛台数は2000年の62,000台から2011年は235,000台まで増加し,2001年には約20km/hであった都市内の平均走行速度は,2012年には15km/h(2012年・プノンペン市都市交通計画プロジェクト)を下回り,交通渋滞が深刻化している。
- (3)また,現在プノンペン都には交差点信号機が69箇所(この内都心部は64箇所)あるが,信号機器,制御システムが統一されておらず,その多くが交差点毎に独立した現示パターンとなっているため,特に朝夕の交通混雑に対応できていない。
- (4)これまでプノンペン都は主に独自に信号機の整備と交差点改良,立体交差の建設,細街路の拡幅等の交通改善施策に取り組んできたが,今後も引き続き人口増加と所得増加による車両保有台数の拡大が見込まれ,交通死亡事故も多発しており(死者11人/1万台,国土交通省資料),抜本的な交通改善施策の実施が必要となっている。
2-2.効率性
- (1)技術協力との連携
2001年に開発調査型技術協力「プノンペン市都市交通計画調査」を実施。さらに,開発調査型技術協力「プノンペン市都市交通改善プロジェクト」を通じ,市内の道路・橋梁整備や,信号設置等を含む交差点改良に取り組んできてきた。近年の交通渋滞や交通事故数が深刻化を受け,2012年から「プノンペン都総合交通計画プロジェクト」を実施し,プノンペン都と共に交通マスタープラン(以下「2014M/P」とする。)の策定を進めており,都市道路網の拡張整備,公共交通導入,信号機・交通管制システム等のITS導入を含む計画が2014年度中に完成する予定。本計画は同M/Pにおける短期計画の最優先プロジェクトの一つに位置付けられており,同M/Pを始めとする累次の技術協力との相乗効果が期待される。 - (2)他ドナー事業との整合性の確保
アジア開発銀行はカンボジア地方部の二次幹線以下の道路整備に積極的に参画しているが,交差点信号機と交通管制センター等については他の援助機関の支援との重複はない。 - (3)施工方法
信号機の設置工事では各交差点に1機ずつ設置される制御機と信号灯器をケーブル接続する必要がある。ケーブルの敷設方法として,切断リスクが低く,景観上も優れている地下埋設とする。地下埋設工法としては車両通行止めが必要ない水平推進工法を採用する。水平推進工法は,カンボジアの信号機設置工事で既に採用されており,施工能力と実績を持つ現地工事業者が存在することを確認済み。 - (4)コンサルティングサービス
運用維持管理マニュアル類を充実させるとともに,プノンペン都公共事業運輸局職員の運用担当者及びその管理者に対する交通管制システム運用OJTの実施,プノンペン都交通警察に対する交通管制システムの基礎知識の教育,道路利用者に対する信号利用に関する啓発活動を実施することにより,本計画の効率的な達成を図る。
2-3.有効性
- (1)プノンペン都内の交通状況の改善,経済活動の活性化,国民満足度の向上
- (2)2014年現在と比較し,事業完了後の2020年には平均旅行速度が時速12.5kmから14.2kmに,旅行時間価値は14,742百万円から12,978百万円に低減,主要交差点の1日当たり警官配置数を400人から320人に低減等。
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)カンボジア政府からの要請書
- (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)