ODA(政府開発援助)

平成30年4月5日

評価年月日:平成30年2月13日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一

1 案件名

1-1 供与国名

エチオピア連邦民主共和国(以下「エチオピア」という。)

1-2 案件名

TICAD産業人材育成センター建設計画

1-3 目的・事業内容

 エチオピアカイゼン機構(EKI)の研修施設となるTICAD産業人材育成センター及び機材の整備を行うことにより,同機構のカイゼン実施・普及機関としての機能強化を図り,もってエチオピアの製造業の民間セクター開発に寄与する。供与限度額は29.31億円である。

【参考】カイゼンプロジェクト
 カイゼンとは,主に製造業の生産現場で行われている品質や生産性向上を目的に行う活動。「整理,整頓,清掃,清潔,躾」の頭文字をとった「5S」や品質管理サークルなどがあり,現場の従業員が様々なアイデアを出し合ったり,より効率的な方法を提案したりするボトムアップの取組み。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)本計画の環境社会配慮カテゴリー分類はCであり,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる大規模なものに該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断され,かつ,同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しない。
  • (2)事業実施の前提条件として,免税措置手続きなどの先方負担事項が遅滞なく実施されること,EKIによって施設建設予定地に残っている取り壊した建造物の瓦礫及び基礎の一部が撤去されること,及びアディスアベバ市の治安が現状維持されることがある。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)エチオピアでは,GDPに占める工業の割合は14.7%であり,近隣諸国のケニアの19.4%,タンザニアの25.0%(世界銀行,2014年)と比較しても低く,製造業の民間セクター開発の遅れが産業発展の阻害要因となっている。
  • (2)エチオピア政府は,国家開発計画に基づき,従来の農業中心の経済構造から工業を軸とした経済構造へのシフトを目指すべく,製造業の発展に取り組んでいる。その方策として,メレス首相(当時)の強い指導力のもと,「カイゼン」を通じた人材育成に注力し,2011年にはEKIを創設した。その後,JICAの技術協力によりEKIが製造業を中心とした民間企業に対する生産性向上を目的とした研修を実施しているほか,2014年にはハイレマリアム首相(当時)が毎年9月をカイゼン月間に制定すると表明する等,国民運動としてカイゼンに取組んでいる。我が国としても,対エチオピア国別援助方針(2012年4月)において,「民間セクター開発」を重点分野の一つとし,また「カイゼン」の普及をその柱として位置付け,上記技術協力を実施する等,エチオピア政府の取組みを支援している。
  • (3)EKIは,発足当初9人であった職員数が2015年には105人に増加し,組織が急速に拡大・強化されている。一方,EKIの既存施設は十分な研修室がないために外部で研修を実施している他,宿泊室がないために地方の人材の育成が機動的にできないなど,円滑な活動に支障を来している。また,EKIは,年間のべ28,593人規模の研修(2017年)を実施しているが,2023年までに同50,600人規模の研修を計画しており,既存施設の容量不足に加え,研修実施に必要な機材も不足している。
  • (4)このような状況を受けて,エチオピア政府は,EKIのカイゼン実施・普及機関としての産業人材育成能力を強化するため,我が国に対しTICAD産業人材育成センターの建設に対する支援を要請した。
  • (5)本計画は,第5回アフリカ開発会議(TICAD V)で我が国が表明した「TICAD産業人材育成センター」を設立するものであり,2014年1月にエチオピアを訪問した安倍総理大臣により,その第一号案件として表明された。また,2016年8月のTICAD VIにおいて,我が国はアフリカ諸国の経済の多角化・産業化を支援する旨表明しており,本計画はこれらを具体化するものであることから外交的意義は大きい。

2-2 効率性

  • (1)施設の構造について,当初1棟の高層建築を想定していたが,狭い敷地を有効利用し2棟の中層建築とすることで,研修室・宿泊室の設計を合理化した。これにより工期の短縮,安全管理面のコスト縮減を図った。
  • (2)施設の規模に適合し,かつ研修実施に必要な機材に絞り込んで供与することとした。

2-3 有効性

 本計画の実施により,以下の成果が期待される。

  • (1)事業完成2年後(2023年)には,EKIにおける研修生数が28,593人(2017年時点)から50,600人に増加する。
  • (2)EKIの活動がより円滑化及び充実化することにより,エチオピアの民間企業において,カイゼン活動の普及が促進し,生産性向上が図られ,民間セクター開発に繋がる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)エチオピア政府からの要請書
  • (2)協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)エチオピア国別評価(2009年度)
ODA(政府開発援助)
ODAとは?
広報・イベント
国別・地域別の取組
SDGs・分野別の取組
ODAの政策を知りたい
ODA関連資料
皆様の御意見
政策評価法に基づく事前・事後評価へ戻る