ODA(政府開発援助)

平成30年3月30日

評価年月日:平成30年2月21日
評価責任者:国別開発協力第二課長 寺田 広紀

1 案件概要

(1)供与国名

インド

(2)案件名

ムンバイメトロ三号線建設計画(第二期)

(3)目的・事業内容

 マハラシュトラ州の州都ムンバイ都市圏において,大量高速輸送システムを建設することにより,増加する輸送需要への対応を図り,もって交通混雑の緩和と交通公害の減少を通じた地域経済の発展及び都市環境の改善に寄与するもの。
 今次は,2013年に開始された本建設計画の第二期として2019年9月までの資金需要に対応するもの。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)土木・建築工事(全線地下:約33.7キロメートル,26駅)
    • (イ)車両保守基地設備調達
    • (ウ)軌道工事
    • (エ)電気・機械工事
    • (オ)信号・通信工事
    • (カ)自動料金収受システム調達
    • (キ)地下区間換気設備設置工事
    • (ク)自動昇降設備設置
    • (ケ)車両調達(248両:31編成,1編成8両)
    • (コ)その他(車両保守基地工事,駅保安設備調達)
    • (サ)コンサルティング・サービス(入札補助・施工監理等)
      円借款対象部分は,上記のうち,(コ)以外の全て(車両調達は210両が円借款対象)。
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    1,000.00億円 1.5% 30(10)年 一般アンタイド

    (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
 本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる鉄道セクターに該当し,影響を及ぼしやすい特性を伴うため,カテゴリAに該当する。本計画に係る環境影響評価(EIA)報告書は,インド国内法上作成が義務付けられていないが,本計画第一期開始前の2012年9月に作成済みである。また,事業実施に際しては,一部地域において工事開始までに樹木伐採許可(Tree Cutting Permission),森林クリアランス(Forest Clearance)及び沿岸地域開発許可(Coastal Regulation Zone Clearance)が必要となっており,いずれも2018年4月までに取得される見込みである。
用地取得及び住民移転
 本計画では,約76.9ヘクタール(うち民有地は約2.52ヘクタール)の用地取得,2,744世帯(6,867人)の住民移転が発生する見込みである。実施機関であるムンバイ都市鉄道公社は用地取得・住民移転対象者との協議を開催しており,JICAガイドラインの要件を満たすよう策定された住民移転計画(新土地取得法及びマハラシュトラ州政府の住民移転政策等に基づく)に沿って,2018年6月までに用地取得・住民移転の手続きを完了する予定。
外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドでは近年急速な都市化が進んでおり,自動車登録台数が約10年で3倍近くになるなど,自動車及び二輪車の登録台数が急激に増加している。一方で,公共交通インフラの整備が進んでおらず,デリー,ムンバイ等の大都市では,道路交通需要の拡大に伴う交通渋滞が重大な問題となっており,経済損失及び大気汚染・騒音等の自動車公害による健康被害が深刻化している。このため,交通渋滞緩和及び都市環境の改善を図るための公共交通システムの整備が必要となっている。
 インド最大規模の人口(2016年時点で2,070万人)を有するムンバイ都市圏において,その中心であるムンバイ市の人口密度は非常に高く(20,482人/平方キロメートル),交通渋滞及び自動車公害が深刻化している。その一方で,用地不足から道路網の拡充が難しく,既存の公共交通であるバスの輸送能力の大幅な向上も困難な状況にある。
 マハラシュトラ州政府は,ムンバイ都市圏における従来の公共交通システムの混雑緩和,交通事情の改善及び大気汚染の緩和を目指し,大量高速輸送システムの導入を柱とする都市交通整備を計画してきた。2004年1月には「ムンバイメトロマスタープラン」を策定し,9路線に分けて総延長146.5キロメートルにわたる都市鉄道整備計画を示したが,その中で,ムンバイ南端から市内中心部を経て,ムンバイ国際空港に接続し,市内北部郊外までを結ぶ本計画を早期に実施すべき計画とし,ムンバイ都市圏の経済成長の促進に不可欠な事業として位置付けている。
我が国の基本政策との関係
 インドの人口の約3割が依然として貧困状態にあること,電力,運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえて2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては,今後の対インドODAの重点目標として,(ア)連結性の強化,(イ)産業競争力の強化及び(ウ)持続的で包摂的な成長への支援を掲げている。
 本計画は,マハラシュトラ州の州都ムンバイ都市圏において,大量高速輸送システムを建設することにより,増加する輸送需要への対応を図り,もって交通混雑の緩和と交通公害減少を通じた地域経済の発展及び都市環境の改善に寄与することから,上記(イ)に合致する。また,インドの開発政策とも高い整合性を有している。
 また,2017年9月の安倍総理大臣のインド訪問時には「両国のパートナーシップを新たな次元に引き上げるべく協力することを決定」するとともに,日本の「自由で開かれたインド太平洋戦略」とインドの「アクト・イースト政策」の連携に向けた取組の強化を誓うなど両国の関係強化が着実に進んでいる中,円借款を始めとするODAを通じて,経済・社会開発を進めるインドの取組を支援することは,こうした日印二国間関係の更なる強化につながる。

(2)効率性

 公共交通機関が競合するのではなく,体系的な都市交通を構成するよう互いに協力し,また,財務的に自立した事業実施体制の確立が重要であることから,ムンバイ都市鉄道公社において,ムンバイ市バス公社によって運営されているバス路線や,ムンバイ都市開発庁により実施されているムンバイメトロ1号線,2号線,モノレールとの接続を調整する。また,同公社は,商業・不動産開発の関連事業を計画しており,財務体質の強化を図る。

(3)有効性

 運用・効果指標(いずれも事業完成2年後(2023年)の見込み)として,運行数は676本/日・1方向,乗客輸送量は1,360万人・キロメートル/日が設定され,1日あたりの乗降者数は約129万人,整備区間であるSEEPZ駅からカフ・パレード駅間(約33.7キロメートル)の所要時間は,自動車では約2時間10分(基準値(2014年))のところ1時間20分程度となる見込みである。
 また,定性的効果として,ムンバイ都市圏における交通事情の改善(車両台数の減少),公害の緩和,温室効果ガスの排出削減,移動の定時性確保による利便性の向上が図られ,ムンバイ都市圏の経済発展に寄与する。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,インド国別評価報告書(2009年度)国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構から提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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