ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成30年3月28日
評価年月日:平成30年2月5日
評価責任者:国別開発協力第二課長 寺田 広紀
1 案件名
1-1 供与国名
パキスタン・イスラム共和国(以下,「パキスタン」という。)
1-2 案件名
第二次空港保安強化計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,主要国際空港(ムルタン,ファイサラバード,新イスラマバード及びカラチ)において,保安機材を整備することにより,空港保安体制の強化を通じたテロ発生のリスクの低減を図り,もってパキスタンの安定化及びバランスの取れた発展に寄与するもの。供与限度額は,23.92億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
本計画の実施に際し,対象地域の治安が事業の遂行に支障を来すほど大幅に悪化しないこと。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)パキスタンにおいては,テロ事件の発生が,減少傾向にあるものの,依然として,安全を脅かす深刻な問題となっている。140人以上が犠牲になった2014年のペシャワール学校襲撃事件を受け,パキスタン政府は,新たなテロ対策国家行動計画を策定し,包括的なテロ対策を行っている。その中でも特に,物流と人の移動を担う経済活動の拠点である国際空港の保安設備強化は,同国の治安対策上,喫緊の課題となっている。
- (2)パキスタン政府は,「国家航空政策(National Aviation Policy 2015)」に基づき,テロ行為の標的となりやすい空港において,国際基準に準じた保安対策強化を進めているが,近年,旅客の受託荷物に爆発物が隠され運搬されるケースが増加し,深刻な懸念となっている。そのため,爆発物の検出をより確実に行うため,国際民間航空機関(ICAO)が定める国際基準を満たした手荷物及び車両用X線検査装置の国内の空港における整備が特に重視されている。
- (3)パキスタンの主要国際空港のうち,ムルタン及びファイサラバード国際空港は,日本人の利用が多いパキスタンの主要国内空港と中東諸国との間を結ぶ航空便(直行及び経由便)の多くが発着するが,検査用資機材の整備が不十分であり,両空港に持ち込まれる手荷物及び機内受託手荷物の検査レベルは低い。そのため,危険物等の持ち込み防止のための対策として,国際基準を満たす検査体制を確立することが急務となっている。さらに,カラチ空港及び新イスラマバード空港においても,旅客数増に伴う更なる保安体制強化の必要性から,国際基準を満たす検査機材の追加導入が不可欠となっている。
- (4)かかる状況を受け,パキスタン政府は,空港保安体制の強化のため,我が国に対して,国際基準を満たした検査機材の整備に係る支援を要請した。
- (5)対パキスタン国別援助方針では,「国境地域などの安定・バランスの取れた発展」を重点分野に位置づけ,テロ対策支援が主要な柱の一つとなっている。また,対パキスタン・イスラム共和国JICA国別分析ペーパー(2014年3月)において,「テロ対策」は重点課題に位置づけられ,治安関連施設,機材整備に対する支援を重視すると分析されており,本計画はこれら分析,方針に合致する。
- (6)2016年9月の日・パキスタン首脳会談において,我が国は,パキスタンが進めるテロ対策への支持を表明しており,本計画の実施は,同会談のフォローアップの観点からも意義が大きい。
2-2 効率性
- (1)協力準備調査において,各空港サイトを調査し,空港及び保安当局からの詳細なヒアリングを基に適切なコンポーネント及び配置計画,コストの精査を図った。
- (2)現地調査や関係者へのヒアリングを踏まえ,選定機材の絞り込みを図った。特に,重量が大きい機材については,施工効率を高めるため,設置位置の確認等を重点的に行った。
2-3 有効性
本計画の実施により,以下の成果が期待される。
- (1)ムルタン空港,ファイサラバード空港において,国際基準を満たす検査機材による安全性の確認後に出発する航空機の割合(航空便数)が,0%(2017年)から100%(2023年)になる。
- (2)カラチ空港において,国際基準を満たす検査機材による安全性の確認後に出発する航空機の割合(航空便数)が,1.3%(2017年)から100%(2023年)になる。
- (3)ムルタン空港,ファイサラバード空港,新イスラマバード空港において,国際基準を満たす検査機材による安全性の確認後にエアサイド(空港敷地内)に入場する車両の割合(車両台数)が,0%(2017年)から100%(2023年)になる。
- (4)パキスタンにおけるテロ発生リスクが低減する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)パキスタン政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)パキスタン国別評価(2014年度)