ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成30年3月19日
評価年月日:平成30年2月15日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一
1 案件名
(1)供与国名
アフガニスタン・イスラム共和国(以下,「アフガニスタン」という)
(2)案件名
アフガニスタン選挙支援計画(国連開発計画(UNDP連携))
(3)目的・事業内容
本計画は,アフガニスタンにおいて,ア 独立選挙委員会(IEC)及び選挙不服申立委員会(ECC)の能力強化,イ 有権者,選挙関連機関及び市民団体等への選挙プロセスに関する教育・啓発活動,ウ 選挙への女性参加の促進,エ 選挙関連用品の調達,オ 安全対策,に係る支援を行うことで,公正かつ平和裡な選挙を実現し,もって同国の平和と民主主義の定着の促進,さらには地域の安定化に寄与するもの。供与額は14.73億円である。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
円滑な選挙実施のため,今後,アフガニスタン全域の治安状況が著しく悪化しないこと。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア アフガニスタンにおいては,2001年以降,これまでに計8回の選挙が実施されてきており,国連機関及び我が国を含む主要ドナーは,公正かつ民主的な選挙実施の重要性に鑑み,選挙の資金面,技術面及び監視面等での継続的な支援を行ってきた。
- イ 2009年の大統領選挙及び県議会選挙,並びに2010年の下院議会選挙の実施支援を目的にUNDPが中心となって立ち上げた「未来のための選挙実施能力強化計画(ELECT-I)」(2006~2011)は,ELECT-II(2012~2015)へと引き継がれ,我が国を含むドナーはUNDPに対して合計約234百万ドルの資金協力を行い,IECの能力強化を中心に,2014年の大統領選挙及びその準備期間を含む選挙サイクル全体における中・長期的かつ包括的な選挙実施支援を行った。
- ウ アフガニスタンでは,2018年~2019年に下院議会選挙,郡評議会選挙及び大統領選挙が予定されており,これら選挙をUNDPの協力の下で行うことが決定され,我が国を含むドナーに選挙実施の支援要請がなされた。アフガニスタンにおいて公正な選挙を成功裡に実施することは,同国の安定と復興を実現するために必要不可欠なプロセスであり,同国の自立と安定に向けた同国政府の取り組みを支えるために開催された「アフガニスタンに関するブリュッセル会合(2016年10月)」で我が国が表明した同国支援方針に合致する。同国の安定化は世界共通の課題であり,国際社会の責任ある主要国の一員として,選挙実施支援も含めた包括的な支援を他ドナーと共に続けてきた我が国にとって,本計画を行うことは重要である。また,我が国は2016年5月のG7伊勢志摩サミットの機会に,中東地域安定のため3年間で総額約60億ドルの包括的支援を表明しており,本計画はその一環として実施するものである。
(2)効率性
- ア UNDPは,1976年から現在に至るまで,世界各地において選挙実施支援を実施してきた国連機関であり,選挙実施支援に係る十分な経験と知見を有する。また,アフガニスタンにおいて以下イのとおり,包括的な選挙実施支援が可能な唯一の援助実施機関である。UNDPは,同国の不安定な治安情勢及び政治情勢に伴う不測の事態発生に際しても,柔軟に対応し,選挙実施支援を行ってきた経験も有している。
- イ アフガニスタンにおいて予定されている選挙について,下院議会及び郡評議会選挙支援においては,国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)の直接的な監督の下に「国連選挙支援計画」が立ち上げられ,UNDPアフガニスタン事務所は,その実施機関として選挙支援チームを率いている。また,UNDPは,公正な選挙の要となるアフガニスタン側の独立機関であるIEC及びECCと極めて緊密な連携を図りつつ,他の国連機関や関係ドナーとの連携や情報共有も行い,国連機関及び国際社会一丸となって公正な選挙に向けた取り組みを総合的に推進しているため,我が国としても,同国への選挙実施支援に当たっては,UNDPを通じて行うことが効果的かつ効率的である。
(3)有効性
- ア アフガニスタン側の選挙関連機関の組織力・能力強化及び有権者教育・啓発活動を通じ,それら機関に対する有権者の信頼回復及び有権者の政治参加意欲が向上することにより,2019年に予定されている大統領選挙において,2014年大統領選挙の決選投票における投票総数約700万票を上回る約800万票の投票が期待される。
- イ 公平・公正な選挙の実現により,女性の平等な選挙参加が促進され,アフガニスタンの平和と民主主義の定着が促進される。また,本計画の実施を通し,アフガニスタンにとっての二国間及び多国間関係の強化,南アジア,中央アジア,及び中東地域の安定化,ひいては我が国を含む国際社会の平和と安定に資することが期待される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- UNDPからの要請書