ODA(政府開発援助)

平成30年2月13日

評価年月日:平成29年11月9日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子

1 案件名

1-1 供与国名

ラオス人民民主共和国(以下,「ラオス」という。)

1-2 案件名

セタティラート病院及びチャンパサック県病院整備計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は,首都及び地方のトップレファラル病院(地域の拠点となる高次医療機関)であり,教育拠点でもあるビエンチャン特別市のセタティラート病院及び南部地域のチャンパサック県病院の施設及び医療機材を整備することにより,保健医療サービスの提供体制の向上と卒前・卒後実習の量的・質的改善を図り,もって同国の保健医療サービスの改善とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に寄与するもの。供与限度額は19.40億円である。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 特になし。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ラオスは,人間開発指数が188か国中138位(UNDP Human Development Report 2016)と,東南アジアで最も開発が遅れた国の一つである。特に保健セクターについては,保健医療施設において,保健医療サービスの提供に必要な機材の劣化や人材不足が大きな課題であり,保健システムが依然脆弱な状況にある。かかる中で,ラオス政府は,「第8次保健セクター開発計画(2016~2020)」において,保健医療サービスの改善を優先分野と定めるとともに,同国保健省がユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成を目標とする「2025年までの保健セクター改革戦略とフレームワーク」の実施を推進し,同国唯一の医師養成機関である保健科学大学の定員増加,看護師教育課程のカリキュラム改訂等による,保健人材育成環境の改善を目指した取り組みを進めている。
  • (2)首都に5か所ある中央総合病院の一つであるセタティラート病院は,近年,同病院の外来患者数の増加が著しい一方で,外来患者数の増加に対応した適切な医療サービスを提供するための施設が整っておらず,本来行われるべき診断・治療を十分に提供することができていない。また,施設の不十分さと医療機材の不足から,適切かつ効果的な臨床実習を提供する環境が維持されていない。
  • (3)チャンパサック県病院は,近年経済発展が著しいパクセー市に位置しており,南部地域の要となる病院であるが,機材の劣化が著しく,緊急搬送や手術件数の増加等,増大かつ高度化する地域の医療ニーズに対応できていない。また,同病院は,当該県の医療従事者に対する現任教育の指導的役割を担っているものの,機材の不足から効果的な臨床実習を提供する環境が維持されていない。
  • (4)我が国は,ラオスに対し,同国の開発目標達成を支援し,ASEANが進める統合・連結性の強化・域内の格差是正を図っていく観点から,「経済・社会インフラ整備」,「農業の発展と森林の保全」,「教育環境の整備と人材育成」及び「保健医療サービスの改善」の4つを重点分野とし,特に環境などにも配慮した経済成長の促進に一層の重点を置いた支援を行うこととしている。本計画は,首都ビエンチャン市のセタティラート病院及び南部地域のチャンパサック県病院の施設及び医療機材を整備するものであり,上記援助方針における「保健医療サービスの改善」に合致する。
  • (5)さらに,外交面においても,2015年にASEAN経済共同体が発足し経済統合が進む中,ASEAN唯一の内陸国であるラオスの安定と繁栄は,ASEANの一体性及び地域全体の平和と繁栄の確保のために不可欠である。ラオス政府は「第8次国家社会開発5か年計画(2016年~2020年)」で掲げる3つの成果(ア 経済,イ 社会,ウ 環境の各分野におけるバランスの取れた発展)の実現を通じて,2020年までの後発開発途上国(LDC)脱却を目標としている。我が国は,かかるラオスの開発の取組の支援に向けて,2016年9月に両国首脳間で「日本・ラオス開発協力共同計画」に合意した。今回実施予定の「セタティラート病院及びチャンパサック県病院整備計画」は,この「日本・ラオス開発協力共同計画」の三本柱の一つである「環境・文化保全に配慮した均衡のとれた都市・地方開発を通じた格差是正」を具体化するための取組みと位置づけられ,実施における外交上の意義も極めて高い。

2-2 効率性

 我が国は,過去に行ったJICAの技術協力「セタティラート大学病院医学教育機能強化プロジェクト」(2007年~2010年),「母子保健人材開発プロジェクト」(2012年~2016年),及び現在行っているJICAの技術協力「保健医療サービスの質改善プロジェクト」(2016年~2021年)の各案件において,サービスの質を確保するための行政機能強化や,医療従事者の知識・技術向上を行っている。これらのプロジェクトで育成している人材を有効に活用することにより,本計画との相乗効果が見込まれる。

2-3 有効性

 本計画の実施により,主に以下の成果が期待される。

  • (1)セタティラート病院における1年間の外来患者数が,93,455(2016年:実績値)から114,938(2022年:事業完成3年後)に増える。
  • (2)セタティラート病院における1年間の画像診断検査数が,25,733(2016年:実績値)から33,465(2022年:事業完成3年後)に増える。
  • (3)セタティラート病院における1年間の手術件数が,1,699(2016年:実績値)から2,029(2022年:事業完成3年後)に増える。
  • (4)チャンパサック県病院における1年間の画像診断検査数が,28,166(2016年:実績値)から31,463(2022年:事業完成3年後)に増える。
  • (5)両病院の医療従事者への卒前・卒後における臨床実習環境が改善される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ラオス政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)ラオス国別評価(2013年度)
  • (4)メコン地域のODA案件に関わる日本の取組の評価(2014年度)
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