ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年12月20日
評価年月日:平成29年11月9日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子
1 案件名
1-1 供与国名
カンボジア王国(以下,「カンボジア」という。)
1-2 案件名
教員養成大学建設計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,プノンペン及びバッタンバン州において,小・中学校の教員を養成する既存の2年制教員養成校2校の大学の校舎の建て替え及び同校への教育用機材の整備を行うことにより,4年制教員養成課程の開始に向けた基盤整備を図り,もって産業人材育成の基盤作りを通じたカンボジアの産業振興に寄与するものである。供与限度額は31.70億円である。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
特段なし。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)カンボジアにおける近代教員養成制度は,1980年代以降の紛争復興期における圧倒的な教員不足に対応するため,変則的な短期研修から開始された。その後,小・中学校教員養成校が設置され,1998年に現在の高等学校卒業後に2年間の教員養成課程を受講する制度に移行後は,同制度の下で小・中学校教員を養成し,教職員を増やすことで基礎教育の普及が図られてきた。しかし近年は,教員の知識・授業実践力不足に起因する基礎教育の質の低さが問題となっており,教員養成課程の基盤整備等,根本的な改善が必要となっている。
- (2)カンボジア政府は,国家戦略開発計画(2014~2018年)において,2030年までにカンボジアを高中所得国に引き上げるための人的資源確保に取り組むとしており,教育戦略計画(2014~2018年)において,教員を教育の質を左右する重要な要素と位置付けている。また,教員政策行動計画(2015~2020年)において,現在の2年制の教員養成課程を4年制化することを重要課題とする中,同計画においてプノンペン及びバッタンバン州の2校を他に先駆けて開校するモデル校と位置づけ,優先的に整備することとしている。
- (3)我が国は,対カンボジア国別開発協力方針(2017年)において,「産業振興支援」を重点分野として定め,産業人材育成の観点から教育の質の改善の重要性を挙げている。本計画は,カンボジアの基礎教育強化に資するものであり,ひいては同国に対する産業人材育成支援の基盤となり得るものであることから同方針に合致する。また,我が国が2015年11月に発表し,アジア地域において推進する「産業人材育成協力イニシアティブ」にも合致したもの。
- (4)カンボジアは,インドシナ半島の南部経済回廊の中核を成しており,同国の発展はASEAN経済共同体の安定と繁栄には不可欠であるところ,同国の経済社会開発に資する人材育成を通じた継続的な支援は外交的意義が大きい。
2-2 効率性
事業実施機関に対してJICAが実施している技術協力「教員養成改革のための基盤構築プロジェクト」(2017~2022年)において,4年制教員養成大学設立に必要となる新たなカリキュラム・シラバス・教材開発等の支援を行っており,また,長期研修プログラム「教育の質の改善」において,教員養成校にて勤務する教官の育成も行っていることから,本計画との相乗効果発現が期待される。
2-3 有効性
- (1)初中等教員養成課程在籍者(4年制養成数)が事業完成3年後の2023年に2,720人/年(純増)となる。
- (2)質の高い教員の養成,基礎教育の質の改善が図られる。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)カンボジア政府からの要請書
- (2)外務省ODA評価年次報告書2016
- (3)「メコン地域のODA案件に関わる日本の取組の評価」報告書(2014年度)
- (4)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (5)カンボジア国別評価報告書(2005年度)