ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年12月19日
評価年月日:平成28年8月22日
評価責任者:国別開発協力第三課長 今福 孝男
1 案件名
1-1 供与国名
カメルーン共和国
1-2 案件名
「ドゥアラ市ユプウェ水揚場・魚市場整備計画」
1-3 目的・事業内容
ドゥアラ市ユプウェ地区の水揚場において,護岸施設,市場施設及び周辺環境を整備し,水産物水揚に係る荷役作業の安全性・効率性の向上,水産物販売環境の適正化を図り,もってカメルーンの農業・農村開発に寄与するもの。供与限度額13.57億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画の実施によって発生する店舗一時移転に対するJICA環境社会配慮ガイドラインに則った補償が行われること。
- (2)施設及び調達された機材の効果的な運用並びに維持管理を図るための体制が構築されること。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)カメルーンの水産物国内消費量は年間約33万トンである。今後安価な動物性蛋白質の供給源として水産物の需要がさらに増大すると予測されていることから,水産物の安定した供給に向けた取り組みが求められている。中でも,海面漁業において,水揚量の75%以上を占める零細漁業による漁獲と漁獲生産物の流通環境の改善が重要である。
- (2)カメルーン政府は,2005年に策定した「農漁村開発戦略」において,ア 貧困削減,イ 食の安全,ウ 国際的競争力の確保,エ 資源の持続的管理を重点戦略に掲げ,優先的な課題として,零細漁港の整備や水揚げ施設の改善などを進めている。また,2011年には,「牧畜・漁業・畜産戦略」を策定し,2020年までに,ア 安全な食品の供給,イ 漁業・畜産従事者の収入向上,ウ 持続的な資源管理を達成することを掲げている。
- (3)カメルーン最大の商業都市であるドゥアラ市に位置するユプウェ水揚場は護岸等,適切な水揚施設が整備されていないため,漁船からの漁獲物の水揚作業を足場が不安定な条件下で行わざるを得ず,作業の安全性・効率性に課題がある。また,衛生環境の整った市場が整備されておらず,水産物取引や後処理が炎天下の路上で行われ,水産物の品質低下につながっている。
- (4)本計画は,護岸施設,市場施設及び周辺環境を整備し,水産物水揚に係る荷役作業の安全性・効率性の向上,水産物販売環境の適正化を図ることにより,もってカメルーンの農業・農村開発に寄与するものである。
- (5)カメルーンは,鯨類を含む水産資源の持続可能な利用について,わが国と協力関係にあり,本計画の実施は,水産分野における関係強化の観点から重要である。
- (6)以上の背景から,わが国無償資金協力による支援が妥当と判断し,「ドゥアラ市ユプウェ水揚場・魚市場整備計画」を実施することとする。
2-2 効率性
必要性,施工効率を勘案し,先方政府とも調整の上,規模の絞り込みを行った。また,施設の整備に関しては,複数案を検討し,持続的かつ効率的な運用・維持管理を行う上で最も合理的で安価な構造を採用した。
2-3 有効性
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
- (1)市場棟内で直射日光の影響なしに鮮魚販売を行える店舗数の増加(仲買店:0(2015年)から75店以上(2022年:事業完成3年後),小売店:0(2015年)から70店以上(2022年:事業完成3年後))
- (2)大型運搬船荷役作業時間の短縮(荷卸時間:120分(2015年)から60分(2022年:事業完成3年後),積載時間:120分(2015年)から60分(2022年:事業完成3年後))
- (3)ユプウェ水揚場の荷役作業の安全性が向上する。
- (4)ユプウェ水揚場が安全で衛生的な沿岸漁業振興拠点であるとのカメルーン国内での認知度(評価)が高まる。
- (5)ユプウェ水揚場において取り扱われる水産物の品質が向上する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)カメルーン政府からの要請書
- (2)「ドゥアラ市ユプウェ水揚場・魚市場整備計画」協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)