ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年12月1日
評価年月日:平成29年11月7日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子
1 案件名
1-1 供与国名
モンゴル国
1-2 案件名
ウランバートル市初等・中等教育施設整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,ウランバートル市において,モンゴル国政府が今後,学校建設を進める際のモデルとなる質の高い初等・中等教育施設(障害児・防災・環境配慮)を建設することにより,教育環境の改善を図り,もって同市の初等中等教育環境の質の改善に寄与するもの。供与限度額は23.79億円である。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
環境社会配慮カテゴリーはCであり,本計画は,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(2010年4月公布)上,環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。なお,外部要因リスク等は特段想定されていない。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)中国とロシアという大国に挟まれたモンゴルが,我が国による支援を通じて民主主義国家として更に成長し,経済発展していくことは,東アジア地域の安定及び我が国の安全保障と経済的繁栄に重要な意味を持つ。モンゴルは豊富な地下資源に恵まれており,我が国の資源やエネルギーの安定的供給確保の観点からも,同国への支援は重要である。
- (2)モンゴルでは,初等教育(5年制)就学率は99.3%,中等教育前期までの義務教育(9年制)就学率は96.9%(2015年,国家統計局総計年鑑)に達しているものの,学齢期にあたる人口の増加及び地方から首都のウランバートル市への人口移動による急激な児童・生徒数の増加に対して教育施設の整備が遅れているため,二部制・三部制による授業の実施や学区外への通学を余儀なくされるなど,施設数不足による教育環境の悪化が深刻になっている。また,学校施設の質的側面においても,障害児への合理的配慮や耐震等の防災対策の視点を取り入れた設計とする必要性が指摘されている。
- (3)また,昨今の鉱物資源価格の下落や中露の景気失速の影響を大きく受けてモンゴル経済は失速しており,これはモンゴル政府の財政状況に直接的な影響を及ぼしており,特に教育セクターでは,校舎建設・改修のための予算が絶対的に不足している。かかる状況下,同国政府から我が国に対して本計画支援要請があったものである。
- (4)本計画は上記(2)の課題に対し,モンゴルが今後,学校建設を進める際のモデルとなる質の高い初等・中等教育施設を建設することにより,教育分野の基礎的社会サービスを強化することで,貧困層の生活水準の改善に寄与するものであり,国別援助方針における「全ての人々が恩恵を受ける成長の実現に向けた支援」に合致し,SDGsゴール4(教育)に貢献すると考えられる。
- (5)更に,2013年に両国首相により署名された「戦略的パートナーシップのための日本・モンゴル中期行動計画」により,「両政府は初等中等教育環境の改善において,引き続き協力する」旨が記載され,2015年10月の首脳会談では,モンゴル首相から本計画実施への要望が表明された。2017年3月に両国外相で新たに署名された5か年計画「戦略的パートナーシップのための日本・モンゴル中期行動計画」においても,「日本国政府は,モンゴル国の初等中等教育における学習環境及び教育の質の改善において引き続き協力する」旨が記載されており,本計画実施の外交的意義は高い。
2-2 効率性
本計画実施期間中に行う技術協力「障害児のための教育改善プロジェクト」(2015~2019年)により,本計画の対象校関係者に研修を行い,障害児の受入促進につなげる。また,障害当事者のユーザビリティを考慮した施設・設備設計につき「ウランバートル市における障害者の社会参加促進プロジェクト」(2016~2020年)と連携を図る。
2-3 有効性
- (1)対象校・地区において,継続使用が可能な教室数が35教室(2016年)から96教室(2023年(事業完了後3年後))に,児童・生徒数が2,383人(2016年)から6,912人(2023年(事業完了後3年後))に増加する。
- (2)施設数不足の緩和により教育環境・教育の質が改善する。
- (3)「障害児配慮」,「防災配慮」,「環境配慮」が学校施設に取り入れられることで,それぞれの課題に対する校長,教員及び地域住民の意識が向上する。
- (4)本計画による完成施設やユニバーサルデザインをモデルとすることにより,モンゴルにおける質の高い初等・中等教育施設の普及に寄与する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)モンゴル政府からの要請書
- (2)JICAの調査報告書