ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年11月24日
評価年月日:平成29年11月2日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子
1 案件名
(1)供与国名
マーシャル諸島共和国
(2)案件名
イバイ島太陽光発電システム整備計画
(3)目的・事業内容
イバイ島において,太陽光発電設備,系統安定化設備及び系統接続設備等の整備並びに機材等の維持管理や環境啓発を推進することにより,再生可能エネルギーの導入促進を通じた電力の安定供給と燃料消費の削減を図り,もってマーシャルの経済成長基盤の強化及び環境・気候変動対策に寄与する。供与限度額は10.70億円。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア 施設整備に必要な建設予定地の整地及び建設認可取得がマーシャル側によりなされる必要がある。
- イ 機材・施設の運用・維持管理に係る予算配分がマーシャル側によりなされる必要がある。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア マーシャルは,29の環礁からなる国であり,エネルギー資源に乏しく,発電電力量の99%以上を輸入燃料によるディーゼル発電に依存している。輸入燃料は,国際的な石油価格の変動を受けるとともに,輸送コストが上乗せされることにより割高な電気料金となり,国民生活に大きな影響を与えている。また,単一電源への依存は,設備の故障時や悪天候等により燃料輸送に問題が生じた際に長時間停電に陥るおそれがあることなどから,マーシャルはエネルギー安全保障上の脆弱性を抱えている。
- イ このような状況を受け,マーシャル政府は,2009年に「国家エネルギー政策及び行動計画」を策定し,2020年までに電力供給の20%を再生可能エネルギーで賄うことを目標として掲げた。現在,首都マジュロでは太陽光発電システムの導入が徐々に進んでいるが,目標達成のため,国内第二の人口を擁するイバイ島においても再生可能エネルギーの導入を推進する必要がある。
- ウ イバイ島では,上水供給を海水淡水化設備に依存していることから(総需要の84%に相当),電力の安定供給は上水供給の観点からも極めて重要である。
- エ 我が国は,マーシャルをはじめとした太平洋島嶼国との関係強化を図るため,3年に一度太平洋・島サミットを開催しており,2015年に開催された第7回太平洋・島サミットで採択された「福島・いわき宣言」の中で「気候変動」を協力の柱の一つとして位置付けるとともに,再生可能エネルギーの導入を推進するための協力を表明している。また,対マーシャル国別開発協力方針において,環境・気候変動を重点分野の一つに定めており,本計画は同方針に合致する。
(2)効率性
- ア プロジェクトサイトの自然条件等を考慮し,架構体(高さ5.5メートル)を整備し,架構体上部に太陽光電池モジュールを設置し,架構体下部は採光,通風等に配慮しフリースペースとして活用できるよう設計した。
- イ 塩害対策として,手すりや架台等の鉄部は溶融亜鉛メッキ処理を施し,太陽光発電システムの接続箱については,ステンレスを用いる設計とした。
- ウ コスト削減努力として,架構体建設について,現地業者による施工が可能な構造を採用し,コンクリート材料を主体とする建設資機材についても現地に流通するものを採用する計画とした。
(3)有効性
本計画の実施により,イバイ島において以下の成果が期待される。
- ア 太陽光発電量の増加
最大電力:
基準値(2017年)0キロワット→目標値(2022年:事業完成3年後)600キロワット
発電電力量:
基準値(2017年)0メガワット時/年→目標値(2022年:事業完成3年後)707.3メガワット時/年 - イ ディーゼル燃料使用量の削減
基準値(2017年)0キロリットル/年→目標値(2022年:事業完成3年後)170キロリットル/年 - ウ 温室効果ガス排出量の削減
基準値(2017年)0トンCO2/年→目標値(2022年:事業完成3年後)441トンCO2/年 - エ 定性的効果
電力の安定供給に寄与するとともに,太陽光発電システムの維持管理能力の向上が期待できる。また,地域住民への環境啓発活動を推進することにより,コミュニティの環境意識の向上が期待できる。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)マーシャル諸島共和国政府からの要請書
- (2)JICAの準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)平成20年度外務省第三者評価 太平洋島嶼国国別評価
- (4)平成27年度外務省ODA評価 太平洋島嶼国のODA案件に関わる日本の取組の評価