ODA(政府開発援助)

平成29年11月14日

評価年月日:平成29年11月1日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子

1 案件概要

(1)供与国名

インドネシア共和国

(2)案件名

パティンバン港開発計画(第一期)

(3)目的・事業内容

 本計画は,ジャカルタ首都圏東部パティンバンに新港(コンテナターミナル,カーターミナル等)を建設することにより,首都圏の物流機能強化を図り,もってインドネシアの投資環境の改善を通じた更なる経済成長に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • 土木工事
    • 建設工事
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    1,189.06億円 0.1%(STEP) 40(12)年 日本タイド

    (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア 環境影響評価(EIA):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる港湾・道路セクター,影響を及ぼしやすい特性に該当するため,カテゴリAに分類される。本事業の環境影響評価(EIA)報告書は港湾,道路事業一体として,2017年2月にインドネシア環境林業省により承認済。
  • イ 用地取得及び住民移転:本計画は,バックアップエリア,アクセス道路の建設により,それぞれ356.23ヘクタール,15.79ヘクタールの用地取得,297名,95名の非自発的住民移転を伴う他,港湾施設の建設により漁業への影響が想定されるため,インドネシア国内手続き及びJICAガイドラインに沿って作成される用地取得・住民移転計画(LARAP)に基づいてインドネシア政府により,用地取得・補償・生計回復支援が進められる予定。
  • ウ 外部要因リスク:バックアップエリア及びアクセス道路の用地取得が完了しない場合,本計画も完了しない点に留意が必要。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

  • ア 開発ニーズ
     近年の急激な経済成長に伴い,首都圏唯一の国際港湾であるタンジュンプリオク港の年間コンテナ取扱量は2009年の380万TEU(注)から2014年には650万TEUと5年間で1.7倍に増加しており,今後数年のうちに取扱可能量(820万TEU)に到達することが想定されている。
    (注)TEU:海上コンテナの貨物量を表す単位であり,1TEUは,20フィートコンテナの1個分を表す。
     また,首都圏の道路では慢性的な渋滞が発生しており,首都圏東部に製造拠点を有する本邦企業を含む多くの企業にとっては,同港へのアクセスの悪さがビジネス展開上の障壁となることから,首都圏の貨物交通量の分散を図ることが強く期待されている。
     このような状況の中,ジョコ政権は,中期国家開発計画(2015-2019)において,経済成長の促進を支えるインフラ整備を国家開発の優先事項としている。また,ジョコ大統領の掲げる「海洋国家構想」でも,港湾整備による連結性強化と輸送インフラ拡充を重視している。2016年5月,パティンバン港開発に関する大統領令が制定され,本件はインドネシア政府の方針・港湾インフラ整備計画において優先度の高い事業として位置づけられている。
  • イ 我が国の基本政策との関係
     2012年4月に発表した対インドネシア国別援助方針では,(ア)更なる経済成長,(イ)不均衡の是正と安全な社会造り,(ウ)アジア地域及び国際社会の課題への対応能力向上を重点分野としている。本計画は,新港の建設を通じてジャカルタ首都圏の物流環境の強化を支援することにより,ジャカルタ首都圏の投資環境を改善し,更なる経済成長の実現に寄与するものであり,同方針に合致する。
     我が国とインドネシアは,政治・外交・経済及び地理的関係において極めて重要な関係にあり,同国は我が国にとって重要な戦略的パートナーである。2017年1月の日インドネシア首脳会談では,経済インフラ整備を通じたビジネス環境改善,海洋分野での協力,及び,産業人材育成に係る協力を強化する方針を両首脳が確認しており,本計画はこの方針を具体化するものである。

(2)効率性

 港湾諸手続きの情報化・簡素化を目的としたJICA技術協力「港湾EDI(Electronic Data Interchange:港湾諸手続きを電子申請するためのシステム)強化戦略計画策定プロジェクト」を実施しており,当該分野での相乗効果が見込まれる。

(3)有効性

 本計画の実施により,パティンバン港につき以下のような成果が期待される。

  • ア コンテナターミナルでのコンテナ貨物取扱量が800,000TEU/年(2024年:事業完成2年後)となる。
  • イ カーターミナルでの完成車取扱量が360,000台/年(2024年:事業完成2年後)となる。

 また,ジャカルタ首都圏の物流を含む投資環境改善,経済発展の促進,インドネシアの持続的経済成長への寄与が期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,インドネシア国別評価報告書(2007年度),JICA環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構より提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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