ODA(政府開発援助)

平成29年10月26日

評価年月日:平成29年10月10日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一

1 案件名

(1)供与国名

シリア・アラブ共和国

(2)案件名

シリア保健分野強化支援計画(WHO連携)

(3)目的・事業内容

 本計画は,保健施設の整備や保健分野を対象とした能力強化活動を実施することにより,シリア国内避難民及び市民への安定的な保健サービス供給を図り,もって人道ニーズに寄与するもの。供与限度額は11.70億円である。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の点が確保される必要がある。

  • ア 円滑な計画実施のため,今後シリアの治安状況が著しく悪化しないこと。
  • イ 本計画の実施に際し,シリア政府機関及び現地コミュニティ等の積極的な関与を促すとともに,本計画完了後もWHO側で適切な維持管理がなされること。

2 無償資金協力の必要性

(1)必要性

  • ア シリアは2011年3月以降の政府と反政府勢力との間の暴力的衝突以降,人道状況が急速に悪化し続けており,同国の周辺国へ流入した難民は約500万人以上といわれている(2017年5月現在)。また,これまでの死者はシリア全土で30万人以上,国内避難民は600万人以上と,国内の人道上,危機的な状態が続いている。
  • イ シリアでは,確認されただけでも,2016年には保健施設に対し,300回以上の攻撃が加えられ,現在,戦乱で国内の半数以上の公立病院や一次保健施設が閉鎖されたか,部分的にしか機能していない。また,保健従事者の約3分の2以上が国外へ逃れた他,国内の医療品生産は3分の1になり,戦乱前に95%を誇ったワクチン接種率も約半分になるなど,保健体制も脆弱なものになっている。
  • ウ こうした中,シリアの保健分野に対する支援は,喫緊の課題となっており,2017年,WHOによりドナーに対し,総額163百万ドルの支援の新規要請がなされている。
  • エ 本計画は,シリアの国内避難民を含む市民に対する緊急人道支援として位置付けられ,我が国の当面のシリア支援の援助方針にも合致し,人間の安全保障の確保の観点から実施の必要性は高い。本計画の実施は,国際社会の課題に応えるものであり,我が国がシリアの安定化及び復旧等へのコミットメントを国際社会に示す上で重要なものである。

(2)効率性

 WHOは,我が国の平成28年度補正予算でも「シリアにおける保健セクター緊急支援事業」等を実施しており,十分な支援実績及び社会経済事情,現地情勢等における知見を有するWHOと連携することが効率的である。

(3)有効性

  • ア 保健施設の荒廃による,シリア国内の甚大な保健ニーズが発生しているところ,本計画の実施により,約100万人の裨益者が保健支援を受けることができるなど,シリア国内避難民及び市民への安定的な医療サービス供給を図ることができる。
  • イ 本案件では,地元事情に精通したシリアNGOを実施パートナーとしており,WHOと現地NGOが連携して各地コミュニティを有効に支援し,地元住民の保健サービスへのアクセス向上に寄与することが期待できる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)UNDPからのプロジェクト・プロポーザル
  • (2)国連シリア人道支援対応計画(SHARP)
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