ODA(政府開発援助)

平成29年10月4日

評価年月日:平成29年9月4日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子

1 案件名

1-1 供与国名

カンボジア王国

1-2 案件名

洪水多発地域における緊急橋梁架け替え計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は,洪水影響地域の重要道路である国道11号線及び国道73号線において,仮設橋梁の架け替え及びアプローチ道路の整備を行うことにより,洪水影響地域における安全,円滑で安定的な交通・物流の確保と共に対象地域の自然災害に対する脆弱性の軽減を図り,もって同国の産業振興に寄与するものである。供与限度額は39.42億円である。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 事業実施機関により,プロジェクトサイトの住民移転及び用地取得手続きなどが適切に行われることが必要。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)カンボジアでは,1970年以降の20年に及ぶ内戦の影響により,道路,橋梁等の多くが破壊された。1991年の内戦終了時から日本を含む国際社会の支援を得て復旧が進められているが,特に地方では修復が必要な道路網が依然として広範囲に存在している上,地方の道路網を構成する国道及び州道は舗装率が低く,多数の仮設橋梁が利用されている。また,同国はメコン河下流に位置し,国土の多くが低地であるため,近年においても雨期に大規模な洪水が発生しており,インフラにも被害が及んでいる。
  • (2)本計画の対象である国道11号線(プレイベン州)及び国道73号線(クラティエ州)はメコン河沿いに位置しており,洪水影響地域における主要道路であるが,両国道には,規制荷重を超える車両の通行による崩落のリスクが高く,幅員が狭いため対向車とすれ違うことができない複数の仮設橋梁が存在している。また,洪水時に仮設橋の橋台周り,河床及び取付道路が浸食され安全性が損なわれていることから,自然災害に対する脆弱性を軽減し,安全で円滑な交通・物流網を整備することが喫緊の課題となっている。
  • (3)同国は,運輸インフラの整備が経済成長及び貧困削減の前提条件との認識の下,「国家戦略開発計画」(2014-2018)の中で,運輸インフラの修復と整備を優先すべき柱の一つに掲げ,交通網整備を重点分野と位置づけている。国道11号線は国道1,7,8号線を接続し,国道73号線は首都圏から北東州への地域物流を支えているなど,いずれも地方部の主要道路であり,我が国が推進するアジアにおける連結性強化に資することから実施の意義は大きい。
  • (4)カンボジアは,南部経済回廊の中核を成しており,同国の発展はASEAN経済共同体の安定と繁栄には不可欠であるところ,同国の経済社会開発に資する継続的な支援は外交的意義が大きい。

2-2 効率性

 事業実施機関に対して実施しているJICA技術協力「道路・橋梁の維持管理能力強化プロジェクト」(2015-2018年)は,仮設橋架け替え後の橋梁の維持管理能力向上に資するところ,本計画は,同技術協力との連携が図られている。

2-3 有効性

  • (1)国道73号線の対象橋梁において15トン以上の貨物車両の通行が可能となる。
  • (2)片側1車線化により,橋梁手前での一時停止(国道11号線:114秒/台,国道73号線:42~162秒/台(いずれも2016年実績値))が事業完成3年度の2023年に解消され,通過時間が短縮される。
  • (3)大型車によるクラティエ州からコンポンチャム州への国道利用による移動時間が,従来の国道7号線の利用から73号線への利用ルート変更により214分から140分に短縮される。
  • (4)本計画対象地域の自然災害に対する脆弱性が軽減され,橋梁・道路の性能及び安全性が向上し,安定的な運輸・交通が確保される。また,首都圏を含む南部経済回廊との連結性の強化により,地方部の発展に寄与する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)カンボジア政府からの要請書
  • (2)外務省ODA評価年次報告書2016
  • (3)「メコン地域のODA案件に関わる日本の取組の評価」報告書(2014年度)
  • (4)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (5)カンボジア国別評価報告書(2005年度)
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