ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年9月7日
評価年月日:平成29年7月12日
評価責任者:国別開発協力第二課長 寺田 広紀
1 案件名
1-1 供与国名
アルメニア共和国(以下「アルメニア」という)
1-2 案件名
消防機材整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,アルメニアのロリ地方,シラク地方,シュニク地方において,消防車両・機材等の整備を行うことにより,消防活動の改善を図り,もって対象地域の防災対策の強化に寄与するもの。供与限度額は15億4000万円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
安全対策に関し,事業実施機関や事業実施者との情報収集・連絡協議体制の構築を行う。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)アルメニアでは,首都エレバンと地方部の経済格差の縮小が課題となっているが,特に同国では自然災害が頻発し,地方部の開発を妨げる要因の一つとなっていることから,格差是正に向けた取組を進める上で,地方部での災害対策が優先課題となっている。このため,同国政府は,2012年に「国家防災戦略」を策定し,この中で持続的な国家の発展のためには防災システムの開発が重要であるとし,また,同国財務省が策定している「中期支出計画(2015~2017)」では,災害時の消火活動及び救命活動の能力向上を重要課題として掲げている。
- (2)アルメニアにおいて現在使用されている消防機材の多くは,旧ソ連時代に配備されたものであり,老朽化及び機能低下が著しく,消火及び救命活動に支障をきたしている。本計画対象のロリ地方,シラク地方,シュニク地方は地方都市と農村地域を含み,農村地域では焼畑農業に起因する山火事が頻発しているが,消防ポンプ車が不足しているため,迅速な消火活動ができず,被害拡大につながっている。また,地方都市では,ビル火災等の都市特有の消火活動に適したはしご車が不足しており,消火活動に困難が生じている。さらに,坂道が多く高低差が大きい地域では,老朽化の進んだ現有の消防車両では登坂が困難であり,消火活動が十分に行われない状況が生じている。
- (3)かかる状況から,アルメニア政府から我が国に対して,上述の課題を抱える優先地域に適した消防車両の整備のための支援の要請があった。
- (4)2015年1月の在アルメニア日本大使館の開館を契機とし,同国との関係はますます緊密化しており,同国の開発への取組を後押しすることは,二国間関係の更なる深化に加え,国際場裏における同国との協力関係の強化に寄与する。また,同国の安定は,地政学的に重要なコーカサス地域全体の安定にもつながることから,我が国と同地域との連携強化の観点からも重要である。2017年は同国と外交関係樹立25周年である中,本計画は外交的にも大きな意義を有する。さらに,2015年3月の第3回国連防災世界会議で安倍総理大臣から発表した「仙台防災イニシアティブ」に基づく協力の一環としても位置付けられる。
2-2 効率性
平成20年度無償資金協力「エレバン市消防機材整備計画」では,救助庁幹部の課題別研修への参加によってリーダーシップが強化され,組織力向上の観点から重要であったとの教訓が得られているため,本計画においても,非常事態省救助庁幹部職員の課題別研修を通じて幹部によるリーダーシップの下,組織一体となった消防活動に係る知識や技術の習得を図る。
2-3 有効性
本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
- (1)出動指令から消防車両出動までの平均準備時間が現状の「10分以上」(2016年)から「1分以下」(事業完成3年後の2022年)に短縮される。
- (2)出動指令から1分以内に出動可能な消防車両の整備比率が現状の0%(2016年)から100%(2022年)に向上する。
- (3)現場到着から放水開始までに要する時間の平均が現状の5分以上(2016年)から5分未満(2022年)に短縮される。
- (4)消防車・はしご車の運用技術及び消防隊員の消火技術が向上することで,安全で効果的・効率的な消防・救助活動が実現し,対象地域住民の安全が強化される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)アルメニア政府からの要請書
- (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)コーカサス諸国への支援の評価(2015年度)