ODA(政府開発援助)

平成29年8月29日

評価年月日:平成29年7月14日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一

1 案件名

1-1 供与国名

ギニア共和国(以下,「ギニア」という。)

1-2 案件名

「カポロ漁港整備計画」

1-3 目的・事業内容

 本計画は,首都コナクリ市のカポロ漁港において,水揚げ・水産物取扱保蔵施設等を整備することにより,衛生環境と労働環境の改善を図り,もって漁業コミュニティの生計活動の改善と地域住民への衛生的で良質な水産物の提供及びギニアの食料安全保障(水産業)に寄与する。供与限度額は12.19億円である。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)環境社会配慮カテゴリーはBであり,本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる港湾セクターのうち,大規模なものに該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。かつ,同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しない。
  • (2)ア ギニア漁業養殖海洋経済省により,本計画により整備される施設への上水道への接続に加え,殺菌処理された井戸水が供給されること,イ アクセス道路の整備に必要な都市国土整備省の同意書が取り付けられること,また,ウ 本計画サイト内の住民移転・商業移転,零細漁港の漁業従事者への一時移転に関する補償手続きが滞りなく行われることが前提条件となる。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ギニア沿岸部は西アフリカ最大の大陸棚を有する好漁場であり,水産開発の高い潜在性を有している。ギニアの海面漁業の生産量は約19.2万トンであり,海面漁業従事者の9割超を零細漁民が占める(2013年,ギニア政府統計Bulletin statistique)。他方で,零細漁業の生産量は海面漁業生産量の約6割にとどまっており,漁業生産性の安定化のためには零細漁業の生産性向上が課題となっている。
  • (2)ギニア政府は,「漁業養殖政策枠組文書」(2016年~2020年)及び「漁業養殖投資計画」(2016年~2020年)を策定し,漁業活動及び水産物の付加価値化を促進するとともに,水産物保存・流通の強化による食料安全保障の改善に向けた取り組みを進めている。零細漁業については,特に水揚げ場開発,流通改善,品質管理や水産物付加価値化を進めることとしており,零細漁業の生産性向上に向けて,主に首都コナクリ市南西地域に集中して整備を進めてきている。しかし,既存の零細漁港が過密であること,加えてコナクリ市東部地域における急激な人口増加に伴い消費需要が高まっていることより,漁港整備のニーズは常に拡大している。
  • (3)カポロ漁港は,コナクリ半島の北部で最も大きな零細漁業拠点の一つであり,人口増加が著しい地域にも隣接していることから,零細漁業従事者とともに消費者にとっても重要な拠点として位置付けられている。しかし,現在,同漁港には水揚護岸や冷蔵施設,加工施設等の基本的な施設が整備されておらず,満潮時等に利用が制限されるなど非効率な水揚作業かつ不衛生な環境下での水産物加工・流通が行われており,水産物の品質低下の原因となっている。
  • (4)本計画は,昨年8月のTICAD VIにおいて,我が国が表明した「アフリカにおける食料安全保障を促進」の具体化やSDGsゴール2(飢餓・食糧安全保障・栄養・持続可能な農業)及びゴール14(海洋資源・海洋)にも貢献すると考えられるところ,実施の意義は大きい。
  • (5)アフリカ連合(AU)議長を務める同国のコンデ大統領は,本年6月,我が国を公式訪問し,首脳会談において,同国における農林水産分野の開発を進める重要性を確認した。我が国にとり,同国の外交的重要性が急速に高まっているところ,同国の経済・社会開発を支援し,二国間関係の強化を図ることの意義は大きい。

2-2 効率性

  • (1)当初,ギニア側から要請のあった桟橋の建設については,コストに比して非常に限定的な生産性の向上に留まることが想定されたことから,本計画のコンポーネントから除外することで先方と合意した。
  • (2)また,供与後の維持管理が困難と思われる機材(製氷・冷蔵施設)についても,本計画のコンポーネントから除外することで合意し,コスト・施工効率の観点から機材の絞り込みを行う等,事業規模の適正化を図った。他方,屋根付施設の設置,漁獲物保管用の機材(保冷庫,チェストフリーザー)の供与により衛生環境の改善を図ることとした。なお,ソフトコンポ-ネントより,民間製氷施設の誘致支援を行うことで先方と合意している。

2-3 有効性

 本件の実施により,以下のような成果が期待される。

  • (1)2016年と比べて,事業完成3年後の2022年に,水揚場における満潮時の利用可能面積が2,391平方メートルから4,449平方メートル(約1.8倍)に増加し,屋根付施設で漁網修理等の作業可能な面積が196.6平方メートルから320平方メートル(約1.6倍)に増加することで,作業の効率性と衛生環境が改善し,水産物の品質が向上する。
  • (2)2016年と比べて,事業実施3年後の2022年に,衛生的な環境において,約63トン/月(盛漁期)の鮮魚を取扱えるようになる。また,約50隻の漁船が水揚岸壁を利用出来るようになり,漁業従事者の労働負荷が大きく軽減する。
  • (3)改良型燻製窯の導入により,共同燻製作業を行う女性の健康被害リスクの低減や,漁業従事者,荷受人,水産加工業者の生計活動がより効率的に行われるようになる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ギニア政府からの要請書
  • (2)「カポロ漁港整備計画」協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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