ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年8月24日
評価年月日:平成29年7月14日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一
1 案件名
1-1 供与国名
エチオピア連邦民主共和国(以下,「エチオピア」という。)
1-2 案件名
坑口地熱発電システム整備計画
1-3 目的・事業内容
エチオピアのオロミア州に位置するアルトランガノ地域において坑口地熱発電プラント(発電容量:5メガワット)を設置することにより,地熱による電力供給の早期実現を図り,もってエチオピアの電源の増強と多様化に寄与するもの。供与限度額は18.42億円である。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画はJICA環境社会配慮ガイドラインにおいてカテゴリBに分類されており,環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。
- (2)エチオピア政府が実施する既設送電線の改修工事及び世界銀行の支援による追加の生産井(地熱井)の掘削が必要。
- (3)エチオピアでは,2016年10月より非常事態宣言が発令されていることから,現地の治安情勢を踏まえた安全対策を講じる。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)エチオピアの電力供給体制は脆弱であり,国内の電化率は約27%(2016年世銀)にとどまっている。首都圏の電化地域においても停電が頻発するなど,国民の社会生活及び経済活動の大きな障害となっている。同国の電力需要は1,326メガワット(2012年)から25,761メガワット(2037年)まで増加することが見込まれており,安定的な電源の開発が急務である。
- (2)エチオピアの電源構成は水力発電が9割以上を占めているが,渇水時には需要を下回る電力供給にとどまる。一方で,東アフリカ大地溝帯に位置する同国は地熱資源にも恵まれ,その潜在的発電ポテンシャルは5,000メガワットと見込まれており,乾季の電力供給の不安定化を補うベースロード電源として,同国政府は地熱発電の開発に取り組んでいる。オロミア州アルトランガノ地域は,資源量の大きさ,開発コストの観点から同国の地熱開発の有望地点として挙げられている。
- (3)かかる状況から,アルトランガノ地域において地熱発電プラントを整備することを含む支援に係る要請が,エチオピア政府から我が国政府に対してなされた。
- (4)本計画は第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)で我が国が表明した「質の高いインフラ投資」,「気候変動対策」のコミットメントにも合致するものであり,外交的意義は大きい。
2-2 効率性
- (1)設計に当たり,試掘井の蒸気性状を確認し,発電プラントの適切な仕様・規模について確認を行った。
- (2)エチオピア国内での機材として適正な規模及び単価となるよう,国内外の類似案件と事業内容の比較を行い,設計及び積算を実施した。
2-3 有効性
本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
- (1)2016年に比べて事業完成3年後の2022年に年間総発電量が15,943メガワット時増加する(計画対象地域における人口の約8割に当たる約24万人分の消費電力量に相当)。
- (2)アルトランガノ地域において電源構成が多様化し,電力供給が安定化することにより地域経済の発展が見込まれる。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)エチオピア政府からの要請書
- (2)「坑口地熱発電計画」協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)「全国地熱発電開発マスタープラン策定プロジェクト」詳細計画策定調査報告書(PDF)
- (4)エチオピア国別評価(2009年度)