ODA(政府開発援助)

平成29年8月18日

評価年月日:平成29年7月14日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一

1 案件名

1-1 供与国名

ヨルダン・ハシェミット王国(以下「ヨルダン」という。)

1-2 案件名

「第二次バルカ県送配水網改修・拡張計画」

1-3 目的・事業内容

 本計画は,ヨルダンの首都アンマンの北西部に隣接するバルカ県において,送配水網を改修・拡張することにより,給水圧の適正化や無収水率の低減等を通じた水道サービスの改善及びシリア難民の流入に伴い増加した上水需要による負担の緩和を図り,もって同国の平和創出努力を支援し,自立的・持続的な経済成長の後押しに寄与するもの。供与限度額は13億9,100万円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画実施の前提条件として,対象地域の治安状況を注視すること,また,バルカ県への追加的な送水量が確保されること(ヨルダン水・灌漑省の計画では,年間400万立方メートルが約束されている。)が必要である。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ヨルダンは,不安定な中東地域における緩衝国の一つとして重要な国であり,中東和平にも積極的に貢献している。我が国は,ヨルダンが中東地域の穏健派として安定を維持し,自立的な経済発展のための産業基盤を形成できるよう支援を行っている。
  • (2)ヨルダンは,国土の75%が砂漠地帯に属しており、一人当たり水資源賦存量(理論上,利用可能な水資源の最大量。世界平均は8,400立方メートル/年。)が145立方メートル/年に過ぎず,水資源が世界で最も少ない国の一つである。限られた水資源に対し,人口増加等により水需要は増加を続け,深刻な水需給の不均衡を引き起こしている。ヨルダン政府は,水セクターの中心戦略として,「Water for life:ヨルダンの水戦略2008-2022」を策定し,安全・十分な飲料水供給,持続的な水資源利用等を目標に掲げている。ヨルダン水道庁は,同戦略に基づき,水資源の開発と管理,水道施設の拡張・改善等を重点政策として,ドナーの支援を受けながら各地でプロジェクトを実施している。
  • (3)ヨルダンは,2011年3月のシリア危機発生以降,UNHCRに登録されているだけで,全人口の約1割に相当する約65万人(2016年12月現在)のシリア難民を受け入れており,特にシリア国境に近い北部地域に難民が集中している。難民流入に伴い増加した人口によって,受入コミュニティの給水事情が更に悪化している。ヨルダン政府は,シリア危機対応として,「ヨルダン対応計画2015(JRP:Jordan Response Plan)」等を策定し,これらの中で,水・衛生分野を最優先セクターの一つに位置付けている。
  • (4)首都アンマンの北西部に隣接するバルカ県にも,地価や物価が上昇している国境地域や都市部から難民が流入しており,特にディルアラ地区及びアインアルバシャ地区では,貧困度が高く人口が急増している一方,基幹送配水網が過去25年にわたって改修されておらず,高い無収水率や過剰な電力消費,水道管の摩耗・腐食による水質悪化等の問題が生じていることから,その整備が急務となっている。
  • (5)我が国とヨルダンとの二国間関係は良好であり,要人往来も活発である。2016年10月のアブドッラー国王訪日時に行われた日・ヨルダン首脳会談では,安倍総理大臣から同国王に対し,我が国は地域の安定の要であるヨルダンを引き続き支える旨表明した。本計画は,首脳間の合意を踏まえた先般の国王訪日のフォローアップとして位置付けられ,また,2016年5月のG7伊勢志摩サミットの機会に表明した中東地域安定化のための包括的支援を具体化するものともなるところ,高い外交的効果が期待できる。

2-2 効率性

  • (1)2014年度の無償資金協力「バルカ県送配水網改修・拡張計画」(以下「第一次計画」という。)により,ディルアラ地区における送配水網の改修・拡張を行うこととしており,これと併せアインアルバシャ地区向けのコンポーネントを本計画として実施することで,より広範囲での上水道サービスの改善等の相乗効果が期待される。
  • (2)2016年度に採択した「上水道分野アドバイザー(個別専門家)」をヨルダン水・灌漑省/水道庁に派遣予定であり,その活動との連携も期待される。
  • (3)過去の無償資金協力「ザルカ地区上水道施設改善計画フェーズI・II」では,自然流下方式による効率的な送配水システムにより,送配水設備の電力消費量を低減し,運営管理費に占める電力費の削減につなげた。これを踏まえ,本計画でも,送配水施設の電力消費量を低減し,運転費の削減を通じた事業収支の改善に資するよう,自然流下方式を採用する。

2-3 有効性

 本計画の実施により,以下のような成果が期待される。

  • (1)アインアルバシャ地区において,基準値(2012年実績値)から目標値(2020年:事業完成1年後)への推移として,ア 給水圧は0.01~2.0メガパスカルから0.1~0.7メガパスカル,イ 配水量は20,000立方メートル/日から27,200立方メートル/日,ウ 送配水施設の電力消費量は0.458キロワット時/立方メートルから0.239キロワット時/立方メートルになると見込まれる。
  • (2)給水圧不足地域の削減,無収水率の低減,水質の向上を始め,水道サービスが改善され,住民の生活環境が改善されるとともに,効率的な配水管理が可能となる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ヨルダン政府からの要請書
  • (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)ヨルダン国別評価報告書(2003年度)
  • (4)相対的に所得水準の高い国に対する無償資金協力の評価(2014年度)
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