ODA(政府開発援助)

平成29年8月10日

評価年月日:平成29年4月28日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治

1 案件名

(1)供与国名

セントルシア

(2)案件名

カルデサック流域橋梁架け替え計画

(3)目的・事業内容

 本計画は,首都カストリーズとヘワノラ国際空港を結ぶセントルシア島東海岸道路において,土砂災害対策のための橋梁の架け替え(2か所)を行うことにより,主要幹線道路における自然災害リスク軽減に伴う通行の安全性及び交通の効率性の向上を図り,もってセントルシアの防災・環境対策に寄与するもの。
 供与限度額は15億3,000万円。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 先方政府による用地取得,工事用迂回路整備,電線等のユーティリティー移設が本計画の施工入札公示までに完了することが,考慮すべき留意点として挙げられる。

2 無償資金協力の必要性

(1)必要性

  • ア セントルシアは,大型のハリケーン,洪水をはじめとする災害による大きな被害を受けやすい国であり,気候変動リスクの観点から世界で160か国中14番目に脆弱な国として位置付けられている(Global Climate Risk Index 2015; Germanwatch)。2010年10月のハリケーン「トマス」におけるインフラ被害額は145百万米ドル(GDPの11.7%),2013年12月のクリスマス豪雨では70.6百万米ドル(GDPの5.3%)であり,同国では災害時にインフラに与える被害額が極めて大きい。
  • イ これに対し,同国政府は,国家危険緩和政策(2006年~),セントルシア国家開発計画(2008年8月~)を策定し,限られたリソースを有効的に活用しつつ,国内の災害リスクの軽減を目指している。更に,セントルシア中期開発戦略(2012年9月~)や分野別行動計画(2012年~2016年)を策定し,ハリケーン「トマス」で被災した道路,橋梁の補修及び改良をはじめとしたインフラの強靭化を図っている。
  • ウ しかしながら,自然災害発生時に交通が阻害される場合,技術や資金の不足から,迅速な復旧ができず経済的な損失が生じる事態が懸念されている。このため,道路セクターにおける災害リスクを軽減し,安定的な交通を確保することが同国政府の喫緊の課題となっている。中でも,中央丘陵部を抜ける唯一のルートであり,首都カストリーズとヘワノラ国際空港を結ぶ島内物流における最重要幹線である東海岸道路では,洪水,地すべりなどの自然災害のリスクが高い。特に,カルデサック橋,ラヴィン・ポアソン橋の2箇所では,深刻な洪水が定期的に発生し,災害発生時には長期の通行止めとこれに伴う大幅な迂回を強いられている。
  • エ このような中,同国政府は,中期開発計画においてハリケーン「トマス」に被災した道路網及び橋梁の復旧及びアップグレードを優先課題に掲げている。本計画は,同国の開発計画及び我が国の開発協力方針とも合致し,同国のニーズに応えつつ実施する案件として,二国間関係強化の観点から重要である。特に,同国との二国間関係の強化は,国際社会の課題において共通の立場を取ることが多いカリコム諸国との連携強化の観点からも重要性を有する。また,我が国が打ち出した「美しい星への行動2.0(ACE2.0)」等の気候変動政策等に合致する具体的な取組であり,気候変動分野で存在感を示す小島嶼開発途上国のニーズに応え,連携を強化することに資する。

(2)効率性

 これまでの当該分野における主な支援実績として,技術協力「カリブ災害管理プロジェクトフェーズ2」(2009年~2012年)及び広域技術協力個別案件(専門家)「カリブ地域防災管理」(2015年~2017年)が挙げられ,これら協力を補完するものとして位置づけることができる。

(3)有効性

 本計画の実施により,2016年の実績値を基準値として事業完成3年後の2023年の目標値と比較すると,以下のような成果が期待される。

  カルデサック橋 ラヴィン・ポアソン橋
2016年 2023年 2016年 2023年
橋梁封鎖に伴う
通行阻害台数(台/年)
64,000 0 2,000 0
越水による封鎖日数(日/年) 8 0 0.4 0
輸送旅客量(万人/年) 990 1,170 650 750
輸送貨物量(万トン/年) 190 230 140 160

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)セントルシア政府からの要請書
  • (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
ODA(政府開発援助)
ODAとは?
広報・イベント
国別・地域別の取組
SDGs・分野別の取組
ODAの政策を知りたい
ODA関連資料
皆様の御意見
政策評価法に基づく事前・事後評価へ戻る