ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:平成29年7月27日
評価責任者:国別開発協力第一課長 原 圭一
1 案件概要
(1)供与国名
カンボジア王国
(2)案件名
シハヌークビル港新コンテナターミナル整備計画
(3)目的・事業内容
カンボジア唯一の大水深港であるシハヌークビル港の新コンテナターミナルの整備を通じて,同港の貨物取扱能力を向上させることにより,物流機能の強化を図り,もって同国における貿易促進及び経済社会発展を通じた経済基盤の強化に寄与するもの。
- ア 主要事業内容
- 土木工事
- 荷役機械等の調達
- コンサルティング・サービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件 235.02億円 年0.01% 40(10)年 一般アンタイド
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア 環境影響評価(EIA):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」上,セクター特性,事業特性及び地域特性に鑑みて環境への望ましくない影響が重大でないと判断されるため,カテゴリBに分類される。
- イ 用地取得及び住民移転:既存港湾内にて実施されるため用地取得及び住民移転を伴わないが,工事用の船舶等の航行により影響を受ける可能性がある漁民に対してはコントラクターが工事時間や船舶航行時間の周知や安全な航行支援等の対策をとる予定。
- ウ 外部要因リスク:特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア 開発ニーズ
カンボジアでは,長きにわたった内戦や国際社会からの孤立状態によって,国造りの基礎である人材と制度,さらには経済・社会インフラなどが破壊された。同国は,内戦終結後,過去20年以上に亘り順調な経済成長と貧困削減を達成してきており,2016年7月に低中所得国入りを果たした。しかしながら,経済構造は依然として脆弱であり,また,都市部と地方部の格差やプノンペンにおける都市問題の深刻化といった新たな課題にも直面している。
カンボジア政府は,2013年に,グッドガバナンスを中心課題とし,農業,民間セクター,インフラ整備,人材育成を重点開発分野とする「四辺形戦略」を策定した。同戦略を具体化するために策定された「国家戦略開発計画(2014-2018)」において,シハヌークビル港の拡張は,最優先事項の一つである運輸インフラの整備を実現するためのアクションプランにおける取組の一つに位置づけられている。本案件は,カンボジアの主要国際港であるシハヌークビル港のコンテナ貨物取扱能力の向上を図るものであり,カンボジアの開発ニーズに合致している。 - イ 我が国の基本政策との関係
2012年4月に策定した我が国の対カンボジア国別援助方針においては,「経済基盤の強化」を重点分野の一つとしている。本案件は,カンボジア経済を下支えする物流拠点であるシハヌークビル港の物流機能の強化を図ることにより,カンボジアの経済基盤の強化に寄与するものであり,同方針に合致している。 - ウ 二国間関係等
カンボジアは,メコン地域の連結性強化に向けてその整備が重視されている南部経済回廊の中核を成しており,同国の発展はASEAN経済共同体の安定と繁栄には不可欠である。また,地域経済統合と連携促進のための同国の重要性は高まってきている。我が国は,1991年パリ和平合意以降,我が国初の本格的なPKOを派遣するなど同国の復興・開発に積極的に関与しており,良好な二国間関係を築いてきている。2013年12月には両国関係が「戦略的パートナーシップ」に格上げされ,地域・国際場裏の課題に関しても一層緊密に連携・協力していくことで一致している。かかる関係に鑑み,同国に対して適切な支援を行うことは,カンボジアの経済発展や投資促進に貢献し,それを通じた我が国との二国間関係の強化が期待され,我が国にとり外交的意義が大きい。
(2)効率性
1999年以降長年にわたり,技術協力や資金協力を通じて,同港の港湾インフラ整備及び運営能力強化にかかる支援を継続的に行ってきており,我が国は同港を運営するシハヌークビル港湾公社にとって最も重要なパートナーとなっている。今後も個別専門家「港湾運営アドバイザー」や港湾手続き改善のために実施予定のJICA技術協力プロジェクトを通じて同公社の港湾運営の効率化を図る予定であり,右技術協力との連携により,本計画での運営・維持管理の効率性を確保する。
(3)有効性
本計画の実施により,港湾サービスの向上,カンボジアにおける貿易促進及び経済社会発展が期待される。運用・効果指標として,コンテナ貨物取扱量(TEU)は392,000(2015年実績値)から870,000(2025年:事業完成2年後),入港船舶の最大載荷重量トン数(DWT)が30,000(2015年実績値)から50,000(2025年:事業完成2年後)となる見込み。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布),その他国際協力機構より提出された資料,「メコン地域のODA案件に関わる日本の取組の評価」(2014年度),「カンボジア国別評価」(2005年度)。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。