ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年8月9日
評価年月日:平成29年7月14日
評価責任者:国別開発協力第一課長 原 圭一
1 案件名
1-1 供与国名
カンボジア王国
1-2 案件名
第四次プノンペン洪水防御・排水改善計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,プノンペン内の幹線排水路の改修及び除塵機設置による既存ポンプ場の機能の改善を行うことにより,雨水の適切な排水及び内水氾濫被害の最小化を図り,もって当該地域の社会開発の促進に寄与するもの。供与限度額は39.48億円である。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
事業実施機関により,プロジェクトサイトの住民移転及び用地取得手続き,環境影響評価(EIA)の承認取得などが適切に行われることが必要。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)カンボジアの首都プノンペンでは,その地形的特徴から毎年洪水被害が発生しており,特に河川氾濫による洪水に対しては市街地の周囲を守る堤防により,また市街地内の降雨水は排水施設(排水管,ポンプ)により,市街地を洪水災害から守ってきた。
- (2)しかしながら,これらの洪水防御・排水施設は,フランス植民地時代から1960年代に整備された施設が多いため老朽化が著しく,また70年代~80年代にかけての内戦による荒廃の影響により,機能が低下している。これに起因した洪水被害・排水不良は,家屋の浸水や道路の水没等,市民生活に支障を来しているほか,交通渋滞や衛生問題発生の一因となっている。カンボジアの国家戦略開発計画(NSDP,2014-2018)において,水資源管理を優先的な開発目標の一つに位置づけており,その中に洪水対策も明記されている。
- (3)我が国は,NSDP等を支援する位置づけとして策定されたJICAのマスタープランを踏まえ,無償資金協力を第三次まで実施し,堤防強化,市内幹線排水路の改修及び新規敷設,ポンプ排水施設の更新などを支援してきた。一方,依然として排水路等が未整備のためプノンペン中心部の北側(ワットプノン北側,トルコーク地区)における被害は大きい。また,近年首都人口の増加と都市化の進展に伴い,廃棄物の排水路への不法投棄が増加し,我が国が整備した排水ポンプに流れ込み,手動によるゴミの除去が困難となっている。これらに対応し,プノンペン中心部における排水の改善を図ることは,これまで実施してきた取組と一体となって効果を発揮することからも,実施の意義は大きい。
- (4)カンボジアは,南部経済回廊の中核を成しており,同国の発展はASEAN経済共同体の安定と繁栄には不可欠であるところ,同国の社会開発の促進に資する継続的な支援は外交的意義が大きい。
2-2 効率性
定期的な清掃計画の策定・見直しと実施及び廃棄物投棄の削減を目指した啓発活動をソフトコンポーネントを通じて指導することにより,事業実施機関の能力向上を図る。また,JICA開発計画調査型技術協力「プノンペン都下水・排水改善プロジェクト」(2014-2016)にて雨水排水分野のマスタープランの改訂作業を実施し,本事業の内容は同マスタープランにおいて優先的に取り組む事業に位置付けられており,技術協力との連携が図られている。
2-3 有効性
- (1)ワットプノン北側及びトルコーク地区で発生している浸水被害が減少する(浸水深:50センチメートル(2015年(実績値))⇒20センチメートル(2023年(事業完成3年後),浸水継続時間:最長9時間(2015年(実績値))⇒2時間(2023年(事業完成3年後))。
- (2)商業,観光,官公庁地区における洪水・浸水被害による経済的被害発生を防止する。
- (3)衛生環境が改善され,長期間の浸水による皮膚病,下痢,腸チフス,赤痢等の水因性疾病の発生,蔓延の改善に寄与する。
- (4)浸水による交通遮断が解消,軽減され,主要道路及び迂回路で発生する交通渋滞が改善される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)カンボジア政府からの要請書
- (2)外務省ODA評価年次報告書2016
- (3)「メコン地域のODA案件に関わる日本の取組の評価」報告書
- (4)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (5)カンボジア国別評価報告書(2005年度)