ODA(政府開発援助)

平成29年8月8日

評価年月日:平成29年2月3日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一

1 案件概要

(1)供与国名

イラク共和国

(2)案件名

ハルサ火力発電所改修計画(フェーズ2)

(3)目的・事業内容

 イラクの南部に位置するバスラ県最大級のハルサ火力発電所を改修することにより,イラクにおける電力需要に応え,電力供給能力の回復・安定化を図り,もって同国の経済基礎インフラの強化に寄与する。

  • ア 主要事業内容
    • 土木工事,資機材調達
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件
    215.56億円 円LIBOR+5bp 15(5)年 一般アンタイド

    (注)下限金利は,年0.1%。また,コンサルティング・サービス部分の金利は0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア EIA(環境影響評価):本計画は「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる国立公園等の影響を受けやすい地域及び影響を及ぼしやすい特性に該当せず,自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される。
  • イ 土地収用及び住民移転:本計画は,既設発電所の敷地内での改修事業であり,新たな用地取得及び住民移転は伴わない。
  • ウ 外部要因リスク:国内の一部地域が,「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)の侵攻の影響を受けているものの,本計画の対象地はイラク政府が管轄する地域であり,実施においてイラク政府と連携し安全対策を行うことで,治安上のリスクに対応する予定。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

  • ア 開発ニーズ
     イラクでは,1980年代以降三度にわたる戦争と長年の経済制裁の影響により,発電所や送配電施設等の電力インフラの破壊と老朽化が進行した。2003年のイラク戦争終結以降,イラク政府は電力インフラの復旧を進めているものの,2016年現在,イラクでは国内電力需要約21,500メガワットに対して,約13,300メガワット程度の電力供給にとどまっており,1日10時間以上の停電も珍しくない。
     かかる状況の中,国内の電力供給は,治安が比較的安定しているイラクの南部に位置するバスラ県等の発電施設に依存している。バスラ県で最大級のハルサ火力発電所において,本計画の先行案件となる同発電所4号機の改修に加え,本計画で1号機等の改修を行うことは,イラクの電力需要に応えるものである。特にISIL占領地の奪還作戦により元の住まいを追われた住民の解放地域への帰還が開始しているが,公共施設に十分な電力が供給されておらず,喫緊の対応が必要とされている中,発電所改修のニーズは高い。
     イラクにおいては,酷暑の時期には電力不足に対する抗議デモが起きる等,電力不足は国内不安定化の一因となっていることから,本事業はイラクの政治的安定の実現,さらには,過激主義対策上も有意義である。
  • イ 我が国の基本政策との関係
     我が国は,国別援助方針において,イラクに対し,「経済成長のための産業の振興と多角化」,「経済基礎インフラの強化」及び「生活基盤の整備」を重点分野として協力していくこととしている。国際秩序を揺るがすイスラム過激派との戦いにも取り組む同国において,電力インフラの復旧や電力需給ギャップの解消に寄与する本件は,「経済基礎インフラの強化」に合致する。
     本件は電力供給安定化を通じて,ISILから解放された地域の復興への貢献が期待できるとともに,基礎的公共サービスの復旧への貢献として,地域の安定化にも資することから,外交上の戦略的意義が認められる。また,本件は,過去に我が国企業が円借款等を通じて建設した4基からなるハルサ発電所を改修するものであるため,我が国の知見や技術の活用が期待される。

(2)効率性

 我が国は,発電所の運営・維持管理等に係る技術協力(研修等)を実施しており,当該分野での相乗効果が見込まれる。

(3)有効性

 本計画の実施を通じ,本計画完成2年後の2023年には,最大出力は200メガワット(2015年実績値:116メガワット),設備利用率は85.0%(2015年実績値:49.3%)になる見込みであり,イラクにおける電力需要に応え,電力供給能力の回復・安定化を図り,もって同国の経済基礎インフラの強化に寄与することが期待される。
 さらに,イラクの経済・社会の発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構より提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお,本計画に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

ODA(政府開発援助)
ODAとは?
広報・イベント
国別・地域別の取組
SDGs・分野別の取組
ODAの政策を知りたい
ODA関連資料
皆様の御意見
政策評価法に基づく事前・事後評価へ戻る