ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年8月3日
評価年月日:平成29年5月19日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一
1 案件名
1-1 供与国名
マダガスカル共和国(以下,「マダガスカル」という。)
1-2 案件名
アロチャ湖南西地域灌漑(かんがい)施設改修計画
1-3 目的・事業内容
アロチャ湖南西地域のPC23灌漑地区及びその上流域において,灌漑施設等を改修することにより,コメ生産性の向上を図り,もってマダガスカルの農業・農村開発に寄与する。供与限度額は30.48億円である。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画の環境社会配慮カテゴリ-分類はBであり,環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。
- (2)マダガスカル政府により,整備される施設・資機材の設置及び建設工事のために必要な用地の確保が確実に実施される必要がある。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)マダガスカルの農業は,総労働人口の63%,GDPの26%を占める重要産業である。特にコメはマダガスカル国民の主食であり,農民の7割以上が稲作に従事している。しかし,農地の上流域の森林が焼畑や森林伐採による荒廃等により,土砂が下流に流出しやすい状況となる中,河川や灌漑水路への土砂堆積がコメ生産性の低下を引き起こしている。また,サイクロンや病虫害などによりコメの生産拡大が阻害されており,コメの消費量の約10%を輸入に頼っている状況にある。
- (2)このような状況を受け,マダガスカル政府は2006年に国家プログラム「流域管理・灌漑国家プログラム」を策定し,全国の既存水田約100万ヘクタールを対象にした灌漑整備事業と,灌漑地区上流域の植生回復・植林による持続的水源涵養(かんよう)事業を一体的に実施し,コメの生産基盤強化を図ることとしている。また,国家開発計画「Plan National de Development 2015-2019」において,「包括的成長・地域に根差した発展」を優先課題の一つに掲げ,この中で農業分野をはじめとした重要産業の強化を謳(うた)っている。
- (3)我が国は対マダガスカル事業展開計画において,農業・農村開発を重点分野として掲げており,本計画はこれに合致する。また,我が国は,2016年8月に開催したTICAD VIにおいて,アフリカにおける食料安全保障の促進を表明しており,本計画はこれを具体化するものである。
- (4)マダガスカルは,鉱物・石油資源や水産資源にも恵まれており,2千万人以上の国内市場に加え,アジアとアフリカとの間の主要な海上航路上にあることから,日本企業のアフリカ進出の観点から重要な地域である。また,経済協力による二国間関係の維持・発展は,国際場裏における協力関係の強化の観点からも重要である。
2-2 効率性
- (1)本計画のソフトコンポーネントにおいて,本計画対象施設に係る灌漑施設維持管理マニュアルの作成及び灌漑施設維持管理研修が実施され,適切かつ効率的な維持管理が行われる。
- (2)JICA技術協力「コメ生産性向上・流域管理プロジェクトフェーズ2」(2015年-2020年)において,改良稲作技術の開発・普及及び水利組合連合の強化が実施されており,当該技術協力との連携によって,効果的に対象地域のコメ生産量を拡大することが期待される。
2-3 有効性
本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
- (1)適切な給水を受けることが可能となる灌漑地域が,2015年に比べて事業完成3年後の2023年に約40%拡大する(面積にして6,396ヘクタールから8,883ヘクタールに拡大)。
- (2)灌漑地への土砂流入量が,2015年に比べて事業完成3年後の2023年に約60%減少する(年間流入する体積にして3,970立方メートルから1,491立方メートルに減少)。
- (3)技術協力プロジェクト等との連携により,受益地のコメ生産量が拡大する。
- (4)沈砂池を新設することにより,土砂の浚渫(しゅんせつ)作業が容易になる。
- (5)通水ロスが減少し,水利用の効率性が向上する。
- (6)適正な水管理・施設維持管理が行われる。
- (7)洪水放流工の改修により,冠水被害が軽減する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)マダガスカル政府からの要請書
- (2)「アロチャ湖南西地域灌漑施設改修計画」協力準備調査報告書
(JICAを通じて入手可能) - (3)マダガスカル国別評価(2006年度)