ODA(政府開発援助)

平成29年5月23日

評価年月日:平成29年3月3日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場雄一

1 案件名

1-1 供与国名

ヨルダン・ハシェミット王国

1-2 案件名

「第二次北部地域シリア難民受入コミュニティ水セクター緊急改善計画(UN連携/UNOPS実施)」

1-3 目的・事業内容

 本計画は,シリア難民が多く流入するヨルダン・ハシェミット王国北部のイルビッド県ハワラ地区において,配水管網の改修等を行うことにより,漏水量の削減及び給水圧の適正化を通じた上水道サービスの改善を図り,もって平和創出に向けた同国の安定の維持に寄与するもの。供与額は24億1,200万円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)実施中の無償資金協力「北部地域シリア難民受入コミュニティ水セクター緊急改善計画」(以下「第一次計画」という。)では,国道を横断する配管工事に際して必要となる許認可の取得に時間を要したことを踏まえ,本計画では,道路掘削等の工事に関する許認可が遅滞なく取得されるよう,工程管理に留意することが必要である。
  • (2)本計画実施の前提条件として,対象地域の治安状況を注視すること,また,ヨルダン側負担事項(水道メーター設置を含む配水管以後の給水管接続,工事実施に必要な各種許認可取得支援,案件完了後の適切な維持管理)に関する予算が確保され,円滑に実施されることが必要である。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ヨルダン・ハシェミット王国(以下「ヨルダン」という。)は,不安定な中東地域における緩衝国の一つとして重要な国であり,中東和平にも積極的に貢献している。我が国は,ヨルダンが中東地域の穏健派として安定を維持し,自立的な経済発展のための産業基盤を形成できるよう支援を行っている。
  • (2)ヨルダンは,一人当たり水資源賦存量(理論上,利用可能な最大量)が国連の定義で「絶対的水不足」とされる500立方メートル/年の30%にも満たない129立方メートル/年(2014年)に過ぎず,水資源が世界で最も少ない国の一つである。限られた水資源に対し,人口増加等により水需要量は増加を続け,深刻な水需給の不均衡を引き起こしている。ヨルダン政府は,「Water for life:ヨルダンの水戦略2008-2022」を策定し,安全・十分な飲料水供給,持続的な水資源利用等を目標に掲げている。
  • (3)ヨルダンは,2011年3月のシリア危機発生以降,UNHCRに登録されているだけで,全人口の約1割に相当する約65万人(2016年12月現在)のシリア難民を受け入れており,特にシリア国境に近い北部地域に難民が集中している。このうち,難民キャンプに滞在する難民は2割強に留まり,残りは一般のヨルダン人が居住するコミュニティ(受入コミュニティ)で生活している。難民流入に伴い増加した人口によって,受入コミュニティでは,給水事情が更に悪化している。ヨルダン政府は,シリア危機対応として,「ヨルダン対応計画2015(JRP: Jordan Response Plan)」等を策定し,これらの中で,水衛生を最優先セクターの一つに位置付けている。
  • (4)北部のイルビッド県には約13.6万人のシリア難民が滞在しており,県都イルビッド市の南東部に位置するハワラ地区では,難民流入が顕著である。一方,1970年代に敷設された亜鉛メッキ鋼管を主な配水管として使用しており,漏水率が高いことから,限られた水資源の有効活用のため,その更新が急務となっている。
  • (5)実施中の開発計画調査型技術協力「シリア難民ホストコミュニティ支援緊急給水計画策定プロジェクト」は,中長期的な視野に立った北部地域の給水状況改善のためのマスタープランを策定するものである。本計画は,同マスタープランで喫緊に整備が必要な事業として位置付けられている。
  • (6)我が国とヨルダンとの二国間関係は良好であり,要人往来も活発である。2016年10月に行われた日・ヨルダン首脳会談では,安倍総理からアブドッラー国王に対し,我が国は地域の安定の要であるヨルダンを引き続き支える旨表明した。本計画は,首脳間の合意を踏まえた先般の国王訪日のフォローアップとして位置付けられ,また,2016年5月のG7伊勢志摩サミットの機会に表明した中東地域安定化のための包括的支援を具体化するものともなるところ,高い外交的効果が期待できる。

2-2 効率性

  • (1)中東地域の治安に対する不安等を理由として,日本企業のヨルダン進出に対する意欲は低下している状況の下,本計画を迅速に進めるためには,国際機関連携方式による実施が妥当である。国際機関の中でも,UNOPSは,本計画に高い関心を示している上,過去に上水道分野の工事等を含む事業実施の実績を有しており,技術や調達手続等の観点からも,本計画を適正に実施することが可能である。
  • (2)第一次計画は,本計画対象地域に隣接するホファ=ベイトラス地区の配水管敷設及びハワラ地区の一部の配水管網整備を行うものである。第一次計画において優先順位が高かったものの,予算の都合上実施できなかったコンポーネントを本計画に含めることで,より広範囲での漏水量の削減等の相乗効果が期待される。
  • (3)2016年度に採択した「上水道分野アドバイザー(個別専門家)」をヨルダン水灌漑省/水道庁に派遣予定であり,その活動との連携も期待される。

2-3 有効性

 本計画の実施により,以下のような成果が期待される。

  • (1)ハワラ地区の配水区の設定,配水管の新設・更新により,適正な給水圧(0.25~0.75メガパスカル)での給水が可能となる(現状の給水圧は0.11~0.5メガパスカル。)。
  • (2)配水管を更新することで老朽管が減少し,配水管網内の漏水量が削減される。併せて,給水圧が適正化されることにより,同一時間内に配水される給水量が増加し,ハワラ地区の住民に適正な水量が均等に配分される。その結果,出水不良地区が削減される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ヨルダン政府からの要請書
  • (2)UNOPSからのプロジェクト・プロポーザル
  • (3)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (4)ヨルダン国別評価報告書(2003年度)
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