ODA(政府開発援助)

平成29年4月13日

評価年月日:平成29年4月5日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治

1 案件概要

(1)供与国名

スリランカ

(2)案件名

カル河上水道拡張計画(第一期)

(3)目的・事業内容

 本計画は,西部州カルタラ県及びコロンボ県においてカル河水系の新規上水道施設の整備及び配水システムの再構築を行うことにより,両県における安全な水へのアクセス向上及び給水の効率化を図り,水需要の増加に対応し,もって同地域の居住環境の改善を通じて経済成長の促進に寄与するものである。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)取水施設,浄水施設,送水管,配水本管,配水池,ポンプ場等整備
    • (イ)デヒワラ地区の老朽管更新,維持管理機械調達等
    • (ウ)コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    318.10億円 1.40% 25(7)年 アンタイド

    (注)金利は,一般条件(固定・基準)を適用。コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア EIA(環境影響評価)
     本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当せず,カテゴリBに該当する。EIA報告書は,スリランカ国内法上作成が義務付けられていない。
  • イ 用地取得及び住民移転
     本計画では,非自発的住民移転は伴わないが,約2.8ヘクタールの用地取得が想定されているところ,スリランカ国内法及び「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」に基づき作成・承認された簡易住民移転計画に沿って補償が行われる予定。
  • ウ 外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

  • ア 開発ニーズ
     スリランカにおける上水道普及率は,西部州自体は59.7%と比較的整備が進んでいるが,本事業対象の中心地域であるカルタラ県は37.1%と同州において最も低い。カルタラ県及びコロンボ県は,今後の人口増加に伴い水需給が逼迫することが懸念され,2025年には水需給差が約14万立方メートル/日となることが見込まれている。
     国家上下水道公社「経営計画」では,2020年までに上水道普及率及び無収水率を全国平均60.0%及び25.3%とすることを目標としており,「西部州大都市圏上水道マスタープラン」において,本事業は優先度の高いプロジェクトと特定されている。
  • イ 我が国の基本政策との関係
     対スリランカ国別援助方針(2012年)においては,「後発開発地域に配慮した経済成長の促進」を援助の基本方針(大目標)に据え,(ア)経済成長の促進,(イ)後発開発地域の開発支援及び(ウ)脆弱性の軽減の3分野を重点分野(中目標)として設定。
     本計画は,対スリランカ国別援助方針中の重点分野のうち「経済成長の促進」に該当する。

(2)効率性

 本計画においては,都市計画・上水省が実施機関となり,同省監督の下,国家上下水道公社が運営・維持管理を行う予定となっている。同公社は,円借款等で建設された上水道施設を適切に運営しており,十分な実績・経験を有している。また,維持管理費はスリランカ政府予算及び料金収入により賄われる予定であり,本計画は技術面・財務面ともに問題なく運営される見込みである。
 加えて,過去の類似案件の教訓から,本計画においては,実施機関に対する技術支援を通じて調達手続の迅速化を図るとともに,無収水対策を進めるため,漏水対策に係るマニュアルの整備や研修等の技術協力についても実施予定である。

(3)有効性

 本計画は,西部州カルタラ県及びコロンボ県においてカル河水系の新規上水道施設の整備及び配水システムの再構築を行うことにより,両県における安全な水へのアクセス向上及び給水の効率化を図り,水需要の増加に対応し,もって同地域の居住環境の改善を通じて経済成長の促進に寄与することが期待される。
 運用・効果指標(いずれも第二期事業完成2年後(2023年)見込み)として,日最大吸水量(260,000立方メートル/日:2016年実績値は115,000立方メートル/日),戸別接続数(カルタラ県,コロンボ県)(244,110戸:2016年実績値は146,474戸),無収水率(コロンボ県デヒワラ地区,モラトゥワ地区)(18.5%:2016年実績値は29.6%)等を設定している。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

  • その他国際協力機構から提出された資料。

(案件に関する情報)

 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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