ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年4月7日
評価年月日:平成29年1月25日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件名
(1)供与国名
ジャマイカ
(2)案件名
緊急通信体制改善計画
(3)目的・事業内容
本計画は,ジャマイカ全土において,防災デジタル無線通信システムを整備することにより,防災関係機関及び一般市民に対する情報伝達の迅速化・安定化を図り,もって同国の防災・環境対策に寄与するもの。
供与限度額は13億9,900万円。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
考慮すべき留意点としては,以下の事項が挙げられる。
- ア 無線中継局アンテナ及び機器設置に際し,無線中継局施設所有関係機関から使用許可を得ること。必要な周波数の取得がなされること。
- イ 国家公共事業局によりIP通信基幹網が適切に運用されること。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア ジャマイカは,長期的社会経済開発方針である「Vision2030」の目標実現に向け「中期社会経済政策フレームワーク2012-2015年」を策定しており,その重点分野の一つとして「環境保護及び気候変動への対応」を掲げている。我が国は,ジャマイカが抱える小島嶼国特有の外部経済や自然災害に対する脆弱性の克服に寄与する支援を重視し,防災分野における我が国の知見を活用しつつ支援を行っている。本計画は,ジャマイカ国家開発計画の開発目標及び我が国の援助方針とも合致し,同国のニーズに応えつつ実施する案件として,二国間関係強化の観点から重要である。
- イ 本計画は,緊急通信網の構築を通じて災害被害の軽減に資することで,SDGsゴール11「包摂的,安全,強靭で,持続可能な都市と人間住居の構築」及びゴール13「気候変動とその影響への緊急の対処」に貢献するものである。特に,ジャマイカを含むカリブ諸国は,ハリケーン等の自然災害に極めて脆弱であり,人命及びインフラへ甚大な被害を生じさせているため,個人の尊厳,生命,生活に対する脅威への対応として人道上のニーズが認められ,人間の安全保障の観点からも重要であり,無償資金協力として本計画を実施する必要性は大きい。
- ウ 同国との二国間関係の強化は,国際社会の課題において共通の立場を取ることが多いカリコム諸国との連携強化の観点からも重要性を有する。また,我が国が打ち出した「美しい星への行動2.0(ACE2.0)」等の気候変動政策等に合致する具体的な取組であり,気候変動分野で存在感を示す小島嶼開発途上国のニーズに応え,連携を強化することに資する。
(2)効率性
ジャマイカを拠点として活動中の広域技術協力個別案件(専門家)「カリブ地域防災管理」と連携し,防災関連機関との連絡体制の強化のため必要に応じ本事業実施機関への改善提言を行うことで,支援の相乗効果が期待できる。
(3)有効性
本件の実施により,2016年の実績値を基準値として事業完成3年後の2022年の目標値と比較すると,以下のような成果が期待される。
- ア 1無線中継局当たりの音声回線数が1チャンネル(全国/2016年)から3又は6チャンネル(全国/2022年)に,防災無線伝達対象組織が20(2016年)から52(2022年)に,災害脆弱地域カバー率が25%(2016年)から90%(2022年)になる。
- イ 災害対策本部からの14の拠点への無線伝達時間が60分(2016年)から5分(2022年)に短縮される。
- ウ 緊急警報裨益人口が2,600人(2016年)から16,000人(2022年)に増加する。
- エ 同国政府防災関係機関の連絡手段拡大・安定化を通じた日常的な情報交換,連携の促進による減災効果が期待できる。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ジャマイカ政府からの要請書
- (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)