ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成27年5月20日
評価年月日:平成27年5月11日
評価責任者:国別開発協力第1課長 宮下 匡之
1.案件名
1-1.供与国名
パラオ共和国
1-2.案件名
上水道改善計画
1-3.目的・事業内容
本計画は,パラオ共和国の経済の中心地であるコロール州中心部(コロール島,アラカベサン島及びマラカル島)及びアイライ州(バベルダオブ島)において,送水管増強,配水区整理及び配水管の更新を実施することにより,同地域への安定的かつ均等な水供給の確保を図り,もって同地域の生活改善と同国の経済発展及び気候変動対策に寄与することを目的としている。供与限度額は18.43億円である。
1-4.環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がパラオ共和国政府により実施される必要がある。
- (1)維持管理のために必要な予算及び人員の確保
- (2)諸事務手続,免税措置の実施及び各種手数料の負担
- (3)必要な用地取得及び給水管から各戸への接続工事
2.無償資金協力の必要性
2-1.必要性
- (1)パラオは,観光業が主要産業であり,経済の中心地であるコロール州中心部(コロール島,アラカベサン島及びマラカル島)及び同州に隣接するアイライ州(バベルダオブ島)において,アイライ州に位置する浄水場を通じて,約1.4万人の人口に加え,年間約14万人の外国人観光客に水道サービスを提供している。
- (2)コロール州中心部及びアイライ州における水道事業はパラオ公共事業公社(PPUC)が担っており,アイライ浄水場から送水管により各配水池へ,配水池から配水管により各配水区に浄水が送水され,各家庭等に供給されるシステムとなっている。しかし,コロール州中心部及びアイライ州の水道施設の一部は老朽化が進んでおり,特にコロール州中心部内の幹線道路に埋設されている主要配水管は漏水が頻発している。また,アイライ浄水場からコロール州中心部及びアイライ州に浄水を供給する送水管は,一日の設計送水能力(7,950m3)を大きく上回る送水を余儀なくされており(一日最大送水量15,140m3),安定的な送水を保証できない状況である。さらに,一部の配水区で配水池が機能しておらず,他地区の配水池から水供給を行っているため,日常的に送配水圧が低い状況が続いている。
- (3)こうした中,2014年10月には,主送水管の破損により夜間の計画断水を余儀なくされ,国民生活のみならず観光業へも悪影響が生じたことから,水道システムの老朽化による送配水圧不足の解消や断水防止を図る対策を講じることが早急の課題である。
2-2.効率性
本計画は,先方政府の要請及び現地調査結果に基づき支援対象範囲を選定するとともに,PPUCの無収水管理や漏水探知手法に係る技術指導を実施することにより,支援の効果を最大限高めることとしている。
また,パラオ共和国の水道セクターに対しては,アジア開発銀行(ADB)も上下水道分野に係る支援を実施してきており,本計画との相乗効果により同地域住民や観光客に提供される水道サービスが効率良く改善されることが期待される。
2-3.有効性
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
- (1)2013年から事業完成3年後の2020年までの間に,(ア)設計送水施設能力が7,950m3/日から15,140m3/日に増加し,(イ)コロール州中心部及びアイライ州全域における最低給水圧が2psiから20psiに大きく改善されることで,同地域への安定的かつ均等な水供給の確保が図られる。
- (2)コロール州中心部及びアイライ州において安定的かつ均等な給水が実現されることにより,住民の生活環境が改善されるとともに,年間約14万人の外国人観光客に安定した水道サービスが提供できる。
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)パラオ政府からの要請書
- (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)