ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成27年5月7日
評価年月日:平成27年3月9日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓
1.案件名
1-1.供与国名
ブータン王国
1-2.案件名
国道一号線橋梁架け替え計画
1-3.目的・事業内容
本計画は、国道一号線上に架かる3橋を架け替え、橋梁の性能を向上させることにより、効率的・安定的な運輸・交通の確保を図るもの。この協力により、3橋で橋梁耐荷力、車両の平均走行速度及び年平均交通量が増加するとともに、橋梁の安全性が向上し物流が促進・円滑化されることにより、地域経済の活性化及び貧困削減に寄与することが期待される。
供与限度額は19億5,600万円。
1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
事業実施の前提条件:新設橋に必要な用地取得、建設ヤード用地の確保等事業実施に必要な各種申請、環境承認の取得が施工入札公示までに完了すること。
2.無償資金協力の必要性
2-1.必要性
- (1)ブータンは、国土の大部分が山岳地帯であり、道路交通が最も重要な交通・輸送手段である。道路の総延長は、2003年の約4,000kmから2013年の約10,600kmと着実に拡大しているものの、険しい山岳地帯などの地形的な制約もあり、幹線道路は短く、必ずしも十分な仕様(幅員、線形、舗装、斜面対策等)となっておらず、迂回路や代替路も少ない。また、災害による道路・橋梁の崩壊などの危険性も高いことから、本事業は、人道上の観点から、貧困、自然災害など個人の尊厳、生命、生活に対する脅威への対応を行う観点から必要である。
- (2)国道一号線はブータン国内の東西をつなぐ唯一の幹線道路であり、交通・輸送網として重要度が非常に高い。特に、南下する国道2号線、4号線及び5号線を結ぶ重要区間であるティンプー・トンサ間には、1980年代以前に設置されたため老朽化し、幅員・耐荷重ともに現行設計基準を満たしていない橋梁が10橋ある。うち3橋については、橋長、桁下高さ、家屋等の近接等から補強や架け替えの技術的難度が高く、東西連結性の確保の上で課題となっている。
- (3)ブータン政府は、「第11次五か年計画(2013年~2018年)」において、全国の既存道路の維持管理(3,522km)及び橋梁の架け替え(24橋)、国道一号線の拡幅等を行う計画であり、本件はこうしたブータン政府の計画に合致している。
2-2.効率性
本事業では、持続性を高めるために、ブータン側実施機関である公共事業・定住省道路局の維持管理に関する対応能力や現状を十分に勘案した橋梁設計(橋梁形式・付属物・取付道路・護岸等)や維持管理計画(高度な技術を必要としない点検・補修)を採用し、同国政府の維持管理負担を軽減することにより、高い効率性が見込まれる。
2-3.有効性
本件の実施により、以下のような成果が期待される。
- (1)橋梁耐荷力(合計軸重)が事業完了後(2020年)に3橋でそれぞれ55t(2014年実績値)から100tに増加する。
- (2)車両の平均走行速度が事業完了後(2020年)に3橋でそれぞれ13~16km/h(2014年実績値)から20~30km/hに増加する。
- (3)車両の年平均交通量が事業完了後(2020年)に3橋でそれぞれ314~434台/日(2014年実績値)から390~541台/日に増加する。
- (4)国道一号線において、橋梁の安全性が向上し、物流が促進・円滑化され、歩行者の安全性が確保される。
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ブータン政府からの要請書
- (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)