世界の医療事情
バヌアツ
1 国名・都市名(国際電話番号)
バヌアツ共和国(国際電話番号678)
2 公館の住所・電話番号
- 在バヌアツ日本国大使館(毎週土曜日、日曜日休館)
- 住所:Embassy of Japan, PO Box 242, Rue de Paris, Port Vila, Vanuatu.
- 電話:29393
- ホームページ:在バヌアツ日本国大使館
(注)土曜日、日曜日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので、ご覧ください。
3 医務官駐在公館ではありません。
在フィジー日本国大使館医務官が担当
4 衛生・医療事情一般
(1)気候
北部の島は熱帯性気候、南部の島は亜熱帯性気候で、年間平均気温は24から26、1年を通して19から30℃で変化します。
(2)医療水準
医師は、公立病院ではバヌアツ人常勤医の他、キューバ、中国からの派遣医師、多くはインターン医師から構成されています。首都ポートビラ、第二都市ルーガンビルには外国人医師経営の複数のクリニックがあります。但し、公立病院においても多くの診療科では専門医がおりません。血液検査・レントゲン検査は公立病院で受けることができますが、検体をオーストラリアなどへ送付して実施することもあります。入院・手術・特殊検査は後述のビラ中央病院・北部地区病院、海外の医療機関へ紹介されます。また、国内での手術は簡単なものに限られます。やや高度な医療を要する時は、国内では対応出来ず、ニュージーランドやオーストラリアなどの海外へ行く必要があります。
(3)医療制度
近年、我が国を含む各国の支援によりビラ中央病院などには最新の検査機器が整備されつつありますが、その数は限られており治療施設も不十分なため、ごく簡単な診療以外は近くの先進国に早めに出られた方が賢明です。先進国の医療費は高額で、支払いの保証がなければ診療が受けられない可能性があります。バヌアツに限らずこれら島嶼国を訪問する時は、万一の場合に備えて必ず十分な額の海外旅行傷害保険等に事前に加入して下さい。
(4)水質・食品など
ポートビラやルーガンビルのしっかりとした施設であれば、水道水を直接飲用しても基本的には問題がありません。ただし、施設によっては配管内に問題があったり、サイクロンなど大雨の後には水が濁ったりするので、注意が必要です。また、2つの都市以外で、上水道が普及していない地方島などでは、河川・湖水・雨水を貯水して供給している場合は細菌等に汚染されている可能性があります。煮沸・濾過してから飲料水として用いるか、ミネラルウォーターを使用してください。野菜などの生鮮食品も、流通の過程で汚染されている可能性や土などが混入していることがあるため、清潔な水道水(流水)で十分洗浄するなど、生で食する場合には注意が必要です。
5 かかり易い病気・怪我
(1)腸管感染症(細菌性赤痢、コレラ、サルモネラ、アメーバ赤痢、A型肝炎、腸チフスなど)
様々な細菌・ウイルスなどにより下痢が引き起こされますが、原因菌を特定できないことがほとんどです。多くは軽症で回復しますが、発熱を伴う場合、血便を伴う下痢、強い腹痛を伴う場合、体重減少を伴うような継続した下痢、などの場合は重症化することもありますので、早めに医療機関を受診してください。特に、A型肝炎や腸チフスは症状の出現が不定で診断を確定するまでに時間を要することがありますので、渡航に際してはワクチンの接種を考慮してください。
(2)蚊が媒介する病気:マラリア、デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症
いずれも蚊によって媒介される疾患で、マラリアはハマダラカ、それ以外はネッタイシマカやヒトスジシマカによって伝染します。
マラリアは、マラリア原虫による感染症で、都市部を含むバヌアツ全域において感染の危険性があります。ハマダラカは主に夜間に活動し、刺された後、7日から30日以上の無症状期をおいて発熱、頭痛、寒気、腹痛、だるさ、吐き気、筋肉痛などの症状が出現します。マラリアは有効な治療薬があるため、できるだけ早期に診断を確定して投薬を開始する必要があります。また、予防対策として、普段からしっかりと防蚊対策を行う必要があります。抗マラリア薬の予防的内服については、渡航前に本邦の医師にご相談ください。
デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症は、ウイルス性の感染症で、2日から2週間の潜伏期を経た後、頭痛、発熱、関節・筋肉痛、発疹などが出現します。重症度は様々ですが、疑わしい場合は必ず医療機関を受診して下さい。
風邪症状がないにも関わらず高熱がある場合は、これらの蚊が媒介する疾患を考慮する必要がありますので、早めに医療機関を受診してください。
(3)シガテラ中毒
珊瑚に共生している海藻に付くプランクトンの一種が作るシガトキシンなどの毒が、食物連鎖で魚の肉や内臓に蓄積し、それを食べた人に発症する中毒症です。このプランクトンは、珊瑚が死滅した後に大量に発生することが知られており、海が荒れて珊瑚礁が破壊される雨季(特にサイクロンの後など)に多く発生します。症状は神経症状、胃腸症状、関節・筋肉痛や痒みなどです。死亡率は低いのですが、「ドライアイス・センセーション」と呼ばれる神経症状(冷たいものに触ったり、冷たいものを飲んだりすると感電したような痛みを感じます)に数か月に渡り苦しめられることがあります。この毒素は加熱処理でも分解されません。治療も対症療法しかありません。
(4)その他
太平洋の島嶼国にはコショウ科の植物のカバを砕いたもの、粉末状になったものを水に溶かして飲用する習慣があります。特にバヌアツのカバは、他の島嶼国の国々より高い濃度で作られているため、肝機能障害を起こしたり、不衛生な製造過程で汚染されていたりする場合もあり、下痢の原因にもなりますので十分な注意が必要です。
6 健康上心がけること
- ポートビラやルーガンビルのしっかりとした施設であれば基本的には水道水の飲用も可能です。ただし、施設によっては配管内に問題があったり、サイクロンなどの大雨の後は水道水も濁ったりすることがあるので、注意が必要です。2つの都市以外においては、雨水を貯めた水も水道水も安心して飲用に供しうる物ではありませんので、飲料水にはミネラルウォーターを飲用するようにして下さい。
- 高温多湿な気候のため、食べ物は腐りやすく細菌が繁殖しやすいので、食中毒に十分注意してください。
- 気温が高く発汗しやすい気候であるため、水分や電解質をスポーツドリンク等で意識して多めに補給し、脱水にならないように注意してください。熱中症を避けるため、長時間炎天下で行動することは避けてください。
- 当地では蚊が媒介する感染症の危険性があり、防蚊対策が重要です。電気蚊取り器、蚊取線香、昆虫忌避剤(虫除けスプレー等)(有効成分DEET)の使用や、長袖・長ズボンなどの肌を露出しない服装等を心がけてください。
- 紫外線が非常に強いため、日焼け止めクリームを使用し、直射日光に素肌をさらさないようにしてください。また、目の保護のためにサングラスなどを着用するようにしてください。
- バヌアツには、潜水病(減圧症)の治療機器が首都ポートビラの民間救急搬送会社『プロメディカル』に1台のみありますが、治療費は非常に高額です。無理をしない安全なダイビングを心がけて下さい。
7 予防接種(ワクチン接種機関含む)
(1)赴任者に必要な予防接種(任意)
- 成人:A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、破傷風など。
- 小児:就学に必要なワクチン(3)参照。
(2)現地の小児定期予防接種一覧
ワクチン名 | 回数 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 |
---|---|---|---|---|---|---|
BCG | 1 | 生直後 | ||||
ポリオ(注1) | 3 | 6週 | 10週 | 14週 | 6歳 | 12歳 |
DPT(3種混合)(注2) +B型肝炎 +インフルエンザ菌b型 |
3 | 6週 | 10週 | 14週 | ||
麻疹(注3) | 1 | 1年 | ||||
B型肝炎(単独) | 1 | 生直後 | ||||
TD | 2 | 7歳 | 12歳 |
- (注1)ポリオは経口生ワクチンです。(日本は2回のみです。)
生後14週のみ経口生ワクチンと不活化ワクチン(IPV)接種を共に行っています。 - (注2)通常の3種混合DPT(ジフテリア・百日咳・破傷風)に、B型肝炎とインフルエンザ菌b型の2種を加えて、5種混合が行われております。
- (注3)MMR(麻疹・流行性耳下腺炎・風疹)接種は行われず、麻疹ワクチンのみ接種しています。
- (注4)義務教育時(6、12歳)に、TD(ジフテリア・破傷風)を接種しています。
(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明
現在はあまり厳密ではなく、未接種でも入学が許可されることがあります。しかしながら、当地の医療事情を考慮しますと、予防接種を受けることをお勧めいたします。なお当国には予防接種による副作用に対する補償制度はありませんので、本邦で全て済ませて来られる方が賢明です。
8 病気になった場合(医療機関)
首都ポートビラには公立総合病院が1か所、北部のサント島にも公立総合病院が1か所あり、緊急の場合は基本的には24時間診療をしてくれることになっております。
また、ポートビラには複数の個人クリニックもあります。救急車を呼ぶ電話番号は、
- ポートビラ:112(ビラ中央病院)
- サント島地域:774-2448
- マレクラ島地域:529-6848
尚、(1)、(2)地域では民間救急搬送サービス「115」も利用できます。
救急車が実際に患者を迎えに来るまでに時間がかかる場合も多いため、直接病院に行かれた方が早い場合もあります。
(首都)ポートビラ エファテ島
- (1)Vila Central Hospital
- 所在地:Rue De Wales
- 電話:22100
- 概要:公立の総合病院で、内科、外科、小児科、産婦人科、眼科、耳鼻科、救急外来などがあります。外来では一般医・診察可能な看護師が行います。専門医の受診は、通常一般医・開業医からの紹介、予約が必要です。
- (2)The Medical Centre
- 所在地:Wantok House Nambatu, Rue d’Artois corner, Rue Languedocs
- 電話:22826
- 概要:要予約。内科、外科、産婦人科など。バヌアツ在住外国人が多く利用します。
- (3)Novo Medical Centre
- 所在地:Novo House, Kumul Highway
- 電話:26698
- 概要:総合診療。オーストラリア、UKでの診療経験のあるオーストラリア人医師。歯科併設。24時間救急体制あり。
ルーガンビル エスピリトゥ・サント島
- (1)Northern Provincial Hospital
- 所在地:Luganville
- 電話:773-0804(Dr. Andy Ilo)
- 概要:北部地域サント島の公立総合病院で救急外来は24時間対応しています。
内科、外科、小児科、産婦人科、眼科、耳鼻科、歯科などがあります。
9 その他の詳細情報入手先
10 一口メモ
バヌアツではほとんどの病院で英語が通じます(一部フランス系医療機関では通じにくいこともあります。)。
「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)を参照願います。