世界の医療事情

令和6年10月1日

1 国名・都市名(国際電話番号)

 トンガ王国(国際電話国番号676)

2 公館の住所・電話番号

在トンガ日本国大使館(毎週土曜日、日曜日休館)
住所:Embassy of Japan, Level 5, National Reserve Bank of Tonga Building, Fasi-Moe-’Afi, Salote Rd., Nuku’alofa, Kingdom of Tonga
電話:22221
ホームページ:在トンガ日本国大使館別ウィンドウで開く

(注)土曜日、日曜日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので、ご覧ください。

3 医務官駐在公館ではありません

 在フィジー日本国大使館医務官が担当

4 衛生・医療事情一般

(1)気候

 熱帯性気候で、気温は最も涼しい7から8月で約18から25度。最も暑い1から2月で約23から30度です。年間降雨量は首都のあるトンガタプ島の約1,700mmからババウ島の約2,790mmまで幅があります。

(2)医療水準

 自国で医師は養成しておりません。医師は、フィジーやパプアニューギニアの医学部か、ニュージーランドやオーストラリアの医学部を卒業して戻ってきています。専門医は少なく、多くの科では専門医が全くおりません。やや高度な医療を要する時は国内では対応出来ず、ニュージーランドやオーストラリアなど海外での治療が必要になります。

(3)医療制度

 公的医療機関では、基本的に国民の治療費は無料です。適切な検査機器が不足し、治療施設が不十分であり、ごく簡単な診療以外は近くの先進国に早めに出られた方が賢明です。先進国の医療費は高額で、支払いの保証がない限り診療が受けられない可能性があります。トンガを訪問する時は、万一の場合に備えて十分な額の海外旅行傷害保険等に事前に加入することをお勧めします。

(4)水質・食品

 住民は雨水を貯め飲料水として使用していますが、雨量が少ないため十分な量の確保は難しい状況です。また、雨水を貯水して供給する間に細菌等に汚染されている可能性があります。水道水は、地下水を汲み上げて供給しています。塩分の含有量が多く、細菌等に汚染されている可能性がありますので、飲料水にはミネラルウォーターを使用されるのが賢明です。生鮮食品も流通の過程で汚染されている可能性が高いので、生のままで食することは気をつけてください。野菜などをサラダで食べる場合は、清潔な流水で十分に洗浄してから食べてください。

5 かかり易い病気・怪我

(1)感染性胃腸炎(細菌性赤痢、アメーバ赤痢、コレラ、サルモネラ他)

 原因となる病原体は、細菌、ウイルス、寄生虫など様々です。食料品購入時によく吟味する、不衛生なレストランを避ける、などの注意が必要になります。また、不衛生な水や食器、生もの、加熱不十分な食物から感染する以外に、排便後の手洗いが不十分であることなどにより、手に付着した病原体が口から侵入して感染する場合もあります。

 下痢、腹痛、嘔吐、腹部膨満、便秘などが主な症状で、発熱などの感冒様症状を伴うこともあります。特に重症化の可能性のある症状として、高熱、血便、強い腹痛、頻繁な下痢、長期に続く下痢、立ちくらみ、関節痛や全身のだるさなどの全身症状が挙げられ、そのような症状を有する場合は直ちに病院で検査、治療を受ける必要があります。多くの場合、水分摂取を心がけるだけで軽快しますが、症状や原因に合わせて整腸剤や抗菌薬などが処方されます。嘔吐・下痢による脱水が重度の場合は点滴が必要となります。なお、感染性胃腸炎の場合、下痢止めは病原体の排泄を遅らせ結果として症状が長引く場合がありますので、自己判断での下痢止め服用は一般的にはお勧めできません。

(2)A型肝炎、腸チフス

 A型肝炎ウイルスや腸チフスウイルスによって汚染された飲食物(主に水、生野菜、魚貝類など)を食べることによって感染するウイルス感染症です。

 A型肝炎は、発症すると発熱、全身倦怠感、黄疸などを認め、時に重篤な肝障害となり入院治療が必要になることがあります。腸チフスは、発熱が主な症状で38℃以上の高熱が続く他、頭痛、関節痛、全身のだるさ、食欲不振などの症状を伴います。その回復期においても、腸のリンパ節に潰瘍ができるため、腸出血や腸穿孔(孔があく)の危険があります。

 両ウイルスとも予防接種をお勧めします。

(3)デング熱

 デングウイルスを保有する蚊(ネッタイシマカやヒトスジシマカ)に刺されることによって感染します。潜伏期間は2日から1週間程で、頭痛、高熱、関節・筋肉痛に加えて赤い発疹が出現します。重症化する(デング出血熱:全身から出血し易くなります)ことがありますので、疑わしい時は必ず医療機関を受診して下さい。治療は対症療法のみです。

(4)ジカウイルス感染症

 ジカウイルスを保有する蚊(ネッタイシマカやヒトスジシマカ)によって伝搬されるウイルス感染症で、症状はデング熱に似ています。頻度は多くありませんが、後遺症として神経麻痺を引き起こしたり、妊婦の感染により胎児の小頭症の原因となったりすることが問題となっています。

(5)シガテラ中毒

 珊瑚に共生している海藻に付くプランクトンの一種が作るシガトキシンなどの毒が食物連鎖で魚の肉や内臓に蓄積し、それを食べた人に起こる中毒です。このプランクトンは、珊瑚が死滅した後に大量に発生することが知られていますので、海が荒れて珊瑚礁が破壊される雨季(特にサイクロンの後など)に多く発生します。症状は神経症状、胃腸症状、関節・筋肉痛や痒みなどです。死亡率は低いのですが、「ドライアイス・センセーション」と呼ばれる神経症状(冷たいものに触ったり、冷たいものを飲んだりすると感電したような痛みを感じます)に数か月に渡り苦しめられることがあります。この毒素は加熱処理でも分解されません。治療も対症療法しかありません。

(6)犬咬傷

 犬が放し飼いにされており、しばしば犬に噛まれることがあります。不用意に犬には近寄らないようにしてください。万一、犬に噛まれた場合は、破傷風や狂犬病などの治療を検討する必要がありますので、傷を石けんときれいな水でよく洗浄しできるだけ早く医療機関を受診してください。現在までのところ、トンガ内で狂犬病はないと言われております。このためトンガ内には狂犬病の予防接種はありません。渡航に際して破傷風の予防接種を受けておくことをお勧めします。

6 健康上心がけること

  1. 雨水を貯めた水も水道水も安心して飲用に供しうるものではありません。飲料水にはミネラルウォーターを飲用するようにしてください。
  2. 高温多湿の気候ですので、食べ物は腐りやすく細菌が繁殖しやすいので、食中毒に十分注意してください。
  3. 気温が高く発汗しやすい気候ですので、水分や電解質をスポーツドリンク等で意識して多めに補給して脱水症状に注意してください。また、南半球の冬に相当する7から8月は、朝晩比較的肌寒く感じることもあり、風邪をひく場合もありますので気温差には注意する必要があります。
  4. 蚊を媒介とするデング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症が発生しています。外出する際は長袖シャツ、長ズボンなどの着用により肌の露出を少なくする、昆虫忌避剤(虫除けスプレー等)を使用する等、蚊に刺されないための対策を行ってください。
  5. 紫外線が非常に強いため日焼け止めクリームを使用し、直射日光に素肌をさらさないようにしてください。また、目の保護のためにサングラスなどを着用するようにしてください。
  6. トンガでは、潜水病(減圧症)の治療は出来ません。ダイビングをされる場合には、無理をせず安全なダイビングを心がけて下さい。

7 予防接種(ワクチン接種機関含む)

(1)赴任者に必要な予防接種(任意)

  • 成人:A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、破傷風など。
  • 小児:就学に必要なワクチン(3)参照。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

ワクチン名 回数 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
BCG 1 出生直後          
ポリオ(経口) 3 6週 10週 14週      
DPT+B型肝炎+インフルエンザ菌b型 3 6週 10週 14週      
DPT         18か月 入学前(6歳)  
MR 2 12か月 18か月        
B型肝炎(単独) 1 出生直後          
TD 1           新卒
  1. (注1)ポリオは経口生ワクチンです(日本は2回のみです。)。
  2. (注2)トンガでは通常の3種混合(DPT:ジフテリア・百日咳・破傷風)に、B型肝炎とインフルエンザ菌b型の2種を加えて、5種混合ワクチン接種が行われます。
  3. (注3)MMR(麻疹・流行性耳下腺炎・風疹)は行われず、MR(麻疹・風疹)のワクチンが接種されます。
  4. (注4)義務教育終了時(16-20歳)に、TD(ジフテリア・破傷風)を接種しています。

(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明

 上記(2)の予防接種すべての接種証明が必要ですが、あまり厳密ではなく、未接種でも入学が許可されることがあります。しかしながら、麻疹は流行することがありますし、また、当地の医療事情を考慮しますと、予防接種を受けることをお勧めいたします。なお、当国には予防接種による副作用に対する補償制度はありませんので、本邦で全て済ませて来る方が賢明です。

8 病気になった場合(医療機関)

 トンガ(首都ヌクアロファ)には公立総合病院が1か所あり、緊急の場合は基本的には24時間診療をしてくれることになっています。また、薬局を併設した個人経営のクリニックもあります。救急車を呼ぶ電話番号は「933」です。呼んでから救急車が実際に患者を迎えに来るまでに時間が掛かる場合が多いため、直接病院に行かれた方が早い場合もあります。

(首都)ヌクアロファ

(1)Vaiola Hospital
所在地:Taufa’ahau Rd.
電話:740-0200
概要:国立の総合病院で、内科、外科、小児科、産科、歯科等があります。日本で研修を受けた日本語を解せる麻酔科医と歯科医が在籍しています。この病院では国民に対する医療費は無料のため、院内は患者で混雑しており、外来は数時間待つ必要があります。
(2)Universal Clinic & Pharmacy
所在地:Fanga’o Pilolevu
電話:28595、26994
概要:主に国立バイオラ病院の医師と薬剤師が運営しており、平日診療で予約が必要です。
(3)Village Mission Clinic & Pharmacy
所在地:Taufa’ahau Rd.(Tonga National Museum近傍)
電話:27522、772-2087、840-9553
概要:薬局メインでクリニックが併設されています。薬剤師が常駐し、ニュージーランドの医師が診療を行っています。

10 一口メモ

 トンガでは英語が公用語で、病院でも英語が通じます。「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)を参照願います。

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