世界の医療事情
ミクロネシア
1 国名・都市名(国際電話番号)
ミクロネシア連邦(国際電話番号691)
2 公館の住所・電話番号
- 在ミクロネシア日本国大使館
- 住所:Embassy of Japan, One World Plaza 2nd Floor, Kapwaresou Street, Kolonia, Pohnpei State, FSM
- 電話:3205465
- ホームページ:在ミクロネシア日本国大使館
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(注)毎週土曜日、日曜日休館(それ以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内しています。)
4 衛生・医療事情一般
ミクロネシア連邦は、オセアニアのカロリン諸島に属し、赤道の北側、東西3200kmに渡り広がる607の島々からなる国家です。西にパラオやフィリピン、南にニューギニア島、東にマーシャル諸島が位置します。西側からヤップ州、チューク州、ポンペイ州、コスラエ州の4州で構成されます。ポンペイ州に首都のパリキールがあります。人口は10万5千人で、国民の多くはミクロネシア系ですが、ポリネシア系住民もいます。また日系人がチューク州に多くヤップ州に少なく、2割程度と言われています。
熱帯雨林気候で、年平均気温は26から28℃、年間降水量は州によって差がありますが3000mmを超えます。
医療施設は各州に中核となる州立病院があります。またそれぞれの地域にはCommunity health centerやdispensaryという診療所が配置されています。他、ポンペイ州には私立の病院や診療所もあります。
医師養成施設は、ポンペイ州に以前はありましたが、現在はありません。そのため当国では、フィジーやパプアニューギニア、ハワイ、米国本土に留学して医師になっています。医療現場ではミクロネシア人だけでなく、フィジー人、パプアニューギニア人、フィリピン人、中国人といった医療従事者が一緒に働いています。
医療レベルは劣悪で、州立病院ではレントゲン撮影や超音波検査はできますが、CTが撮影できる医療施設はミクロネシアの中でポンペイ州にある民間の診療所1か所だけです。MRIや血管造影ができる施設はありません。薬の種類も限られており、日本で使っていた同じ薬があるとは限りません。また専門医も非常に少なく、重症例や専門的な治療が必要な場合は、現地の人々もフィリピン、ハワイや米国本土で治療を受けています。このような状況のため邦人が専門的治療を受ける場合は日本への移送が必要なため、治療救援費用が5000万円以上の海外旅行傷害保険への加入は必須です。
ポンペイ州における上水道は首都パリキールや人口の最も多いコロニアには敷設されていますが、その他の地区では未整備で井戸や雨水をためて使っています。上水道の水も透明でなく、飲料水には不適切です。
5 かかり易い病気・怪我
(1)消化器感染症
旅行者下痢症、腸管感染症、A型肝炎、腸チフス、細菌性赤痢、アメーバ赤痢などがあり、生水や加熱の不十分な食事が感染源となりますので注意が必要です。
(2)デング熱
デングウイルスを持つヤブカ属のネッタイシマカに刺されることによって発症します。2019年ヤップ州で流行しました。潜伏期間は約1週間で、インフルエンザ様の症状(頭痛、高熱、関節・筋肉痛)に加えて赤い皮疹が出ます。重症化(デング出血熱:全身から出血し易くなります)することがありますので、必ず病院等を受診してください。治療は対症療法のみです。
(3)チクングニア熱
デング熱と同様、ヤブカ属のネッタイシマカによって媒介される感染症です。2013年ヤップ州でチクングニア熱の集団発生がありました。感染して潜伏期2日から12日(通常3日から7日)の後、突然の発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹がみられます。ワクチンや治療薬はありませんが、致死率は低く蚊に刺されないことが最善の予防法です。
(4)ジカウイルス感染症
デング熱やチクングニア熱と同様、蚊によって媒介される感染症で、発熱、頭痛、眼球結膜充血、皮疹、筋肉痛、関節痛などを生じます。2007年ヤップ州、2016年コスラエ州で流行しました。治療は対症療法のみで、発症を防ぐワクチンや治療薬はありません。
(5)結膜炎
現地でピンクアイと呼ばれている結膜炎は、汚れた手で目を触ることにより罹りやすく、治療に抗生物質の点眼薬が用いられることがあります。
(6)皮膚感染症
不潔な水を使用することが多いせいか、湿疹や虫刺され部分を掻いて細菌感染を合併することがあります。現地ではボイル(Boil)と呼ばれ、多くの現地の方がかかっています。
(7)レプトスピラ症
病原性レプトスピラを保有しているネズミ、犬、牛、豚などの尿で汚染された河川や泥などから、経皮的または経口感染します。雨にて冠水した道路を歩く、河川や水たまりに入るなど感染の危険性がある場所は避けて下さい。
(8)シガテラ毒による食中毒
シガトキシンを産生する藻を食べた魚の体内に蓄積された毒素が、その魚を肉食魚が食べるてさらに蓄積し酸化されることにより強毒化し、その肉食魚を人間が食べて食中毒を発症します。毒素は熱処理にて不活化されません。早期には嘔気、下痢、腹痛や血圧低下、筋肉痛、麻痺が出現するほか、特徴的な症状としてドライアイスセンセーションという温度感覚異常がみられます。効果的な治療法は確立されておらず、症状が半年以上続くこともありますが、死亡することは稀です。大型魚は危険性が高いと言われています。
(9)犬咬傷・動物咬傷
犬を放し飼いにする習慣があり、近寄ると噛まれることがあります。破傷風等の感染リスクもありますので、破傷風の予防注射を受けておく必要があります。また、当国はコウモリが多く、コウモリ咬傷についても注意してください。当地では狂犬病の報告はありません。
(10)結核・ハンセン病
結核とハンセン病の有病率は太平洋地域の中でも高く、注意を要します。
(11)溺死
海に囲まれている環境であり、人口当たりの溺死数は世界第2位となっています。海水浴、シュノーケリング、スキューバダイビング等の際には十分注意して下さい。
(12)感染性リウマチ熱
当国は人口比にてリウマチ熱罹患率が世界で1、2位を争う多発国です。小児の溶連菌感染には注意を要します。
6 健康上心がけること
- 飲料水には、水道水を煮沸したものか、ボトルドウォーターを利用してください。
- 高温多湿の気候なので、食べ物の管理には十分注意してください。また発汗量が多くなりますので、脱水症状には十分気を付け、水分や電解質をスポーツドリンク等で補給してください。
- 蚊が媒介する感染症がいくつかあります。蚊などの虫に刺された部位が細菌感染を起こすことも少なくありません。虫に刺されないよう注意しましょう。
- 紫外線が非常に強いので帽子や日焼け止めによる日焼け対策をして下さい。また目の保護のために、サングラス着用も推奨します。
- ミクロネシアではスキューバダイビング中に減圧症に罹患した場合、高気圧酸素治療ができる施設が限られます。また溺死も多いため、海のレジャーに際しては十分に注意してください。
7 予防接種(ワクチン接種機関含む)
(1)赴任者に必要な予防接種
- 成人:A型肝炎、B型肝炎、破傷風、腸チフスの予防接種が推奨されます(任意)。
- 小児:定期予防接種
感染地域に入る前に接種しておく方が望ましいので、事前に日本で接種してくることを強く推奨します。
(2)現地の小児定期予防接種一覧
ワクチン名 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 |
---|---|---|---|---|
BCG | 出生時 | |||
Pediarix(注1) | 2か月 | 4か月 | 6か月 | |
DTaP(注2) | 12か月 | 4から6歳 | ||
不活化ポリオ | 18か月 | 4から6歳 | ||
MMR(注3) | 12か月 | 1回目の1か月後 | ||
インフルエンザ菌b型(Hib) | 2か月 | 4か月 | 12か月 | |
B型肝炎 | 出生時 | |||
ロタウイルス | 2か月 | 4か月 | 6か月 | |
肺炎球菌(PCV13) | 2か月 | 4か月 | 6か月 | 13か月 |
ヒトパピローマウイルス | 9歳 | 11歳 |
- (注1)Pediarix(DTaP+不活化ポリオワクチン+B型肝炎ワクチン)
- (注2)DTaP(ジフテリア・破傷風・無菌性百日咳の3種混合ワクチン)
- (注3)MMR(麻疹・おたふく風邪・風疹の混合ワクチン)
(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明
上記(2)について英文の予防接種証明書の提出が必要です。英文証明書が日本で作成できなかった場合は、当地保健施設で母子手帳等から転記して作成できます。
予防接種は必ず本邦で済ませてきてください。当国には予防接種の副作用に対する補償制度はありません。
現地国民の乳児健診は、Public Healthで施行されています。
8 病気になった場合(医療機関等)
4州全てに州立病院がありますが、慢性的に医師が不足しており、かつ診断・治療の為の諸施設・器具・薬などが不十分です。重症例については、グアムや日本で治療を受ける必要があります。歯科についても、抜歯や簡単な充填処置ぐらいしかできないため、当地での歯科治療はお勧めできません。
救急車を利用する場合、電話番号は下記の通りです。
- ヤップ州:911
- チューク州:330-2218
- ポンペイ州:911
- コスラエ州:370-3012
離島にいる場合も、必要性に応じてボート(有料)で病院まで移送してくれます。
ミクロネシア、特にチューク州はダイバーに人気があり、年間を通じて多くのダイバーが訪れます。しかし減圧症に対する再圧治療はチューク州やポンペイ州では稼働していません。
ポンペイ州
- (1)Pohnpei State Hospital(州立)
- 住所:Nett, Pohnpei State 96941
- 電話:320-2215
- 概要:ポンペイ州最大の総合病院。救急は24時間受け入れています。
- (2)Genesis Hospital and Pharmacy(私立)
- 住所:Nett, Pohnpei State 96941
- 電話:320-3381、8860
- 概要:唯一の私立病院。州立病院より施設は比較的新しいです。夜間(0時から午前7時30分まで)は救急対応していません。
- (3)Med Pharm(私立)
- 住所:Old US Embassy Bldg., Kaselehlie St., Kolonia, Pohnpei State 96941
- 電話:320-7556、3314
- 概要:私立の診療所兼薬局です。ミクロネシア唯一のCT検査(造影可)が可能な施設です。画像はフィリピンに送られ専門医が読影を行うため、所見結果は翌日以降となります。
チューク州
- (1)Chuuk State Hospital(州立)
- 住所:Weno, Chuuk State 96942
- 電話:330-2214(320-2216)
- 概要:チューク州唯一の病院。救急は24時間受け入れています。
ヤップ州
- (1)Yap State Memorial Hospital(州立)
- 住所:Colonia, Yap State 96943
- 電話:350-2115
- 概要:ヤップ州唯一の病院で、高気圧酸素治療が可能。救急は24時間受けて入れています。
コスラエ州
- (1)Kosrae State Hospital(州立)
- 住所:Tofol, Kosrae State 96944
- 電話:370-3012
- 概要:コスラエ州唯一の病院。救急車に医師が同乗し、24時間受けて入れています。
9 その他の情報入手先
10 一口メモ
当地では英語が通じます。「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)を参照ください。