世界の医療事情

イラン

平成28年10月

1 国名・都市名(国際電話番号)

 イラン・イスラム共和国(テヘラン,イスファハン,マシュハド)(国際電話国番号98)

2 公館の住所・電話番号

在イラン日本国大使館 (毎週金土休館)
住所:Embassy of Japan, No. 162 Moghadas Ardebili Street, Tehran
電話:(021) 22660710
ホームページ:http://www.ir.emb-japan.go.jp/jp/別ウィンドウで開く

(注)金土以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので,ご覧ください。

4 衛生・医療事情一般

 首都テヘランは,標高1,000~1,800メートルの高地に位置し,年間を通じて乾燥し寒暖差が大きい内陸性気候です。夏季には気温が40℃を超える一方,冬季には市街でも降雪があります。年間降水量は約200ミリと少なく,そのほとんどが12月から3月にかけての冬季に集中します。

 テヘランの水道水は,硬度がやや高い(硬水である)こと以外,特に問題はありませんでしたが,近年の暖冬や急速な人口増加のため,夏場を中心に渇水が起こり,水質が徐々に悪化しています。特に妊婦や乳幼児には,市販のミネラルウォーターの利用をお勧めします。

 車両から出る排気ガスの影響で,テヘランなどの大都市では大気汚染が深刻な問題となっており,特に冬場に悪化します。またここ数年は,イラク周辺から発生する砂塵による健康被害も報告されています。

 テヘランなどの大都市の医療水準は比較的高く,CTやMRI等の高度医用機器を備えた病院も多くあります。しかし,各診療科の連携が不十分で適切な治療が行われない例もあり,プライバシー等に関する習慣の違いや言葉の問題等もあることから,詳しい検査・手術・入院等が必要な場合は,先進国の医療機関を受診されることをお勧めします。出産についても,およそ半数が帝王切開で行われていることや,赤ちゃんに異常があった場合のケアに不安があることから,本邦等の先進国での出産が安全です。

5 かかり易い病気・怪我

 テヘラン周辺に特別な風土病はありません。

(1)大気汚染の影響、持病、常用薬

 大気汚染が常態化しており,気管支喘息などの呼吸器疾患,アレルギー性疾患,高血圧症や心臓病などの循環器疾患が悪化したり,新たに発症したりする可能性があります。持病がある方は,渡航に際し主治医によくご相談ください。また,日本と同じ医薬品を購入することは困難ですので,常用薬は予め十分な量を日本からお持ちください。

(2)交通事故

 世界保健機関(WHO)等の統計によると,イラン国内の交通事故の発生件数は世界平均の20倍以上で,2013年の交通事故による死者は約2万5,000人(日本6,000人弱),人口10万人あたりでは32.1人(日本4.7人)でした。5歳以下の子どもの主な死亡原因の一つとなっています。

(3)マラリア

 発生地域は,イランの南東地域のシスターン・バルチスタン州および隣接するホルモズガン州とケルマン州の農村部に限られています。WHOによれば感染のリスクがあるのは3~11月で,隣国からの輸入症例が多く,2011年の統計によると,「三日熱マラリア」が約80~90%,「熱帯熱マラリア」が約10~20%でした。2008年の全国の患者数は5,594人でしたが,2014年には366人と大きく減少し,特にケルマン州は10人以下で根絶の最終段階にあると保健省が報告しています。テヘラン,イスファハン,シーラーズなどの主な観光地では,マラリア予防薬は必要ありません。

(4)HIV/エイズ

 宗教戒律の厳格なイランにおいても,従来の麻薬中毒患者の注射器等の再使用による感染に加え,性行為によるHIV / AIDS(エイズ)感染が増える傾向にあり,感染全体に占める割合が,以前の15%から最近では30%に増加しています。2012年の推定の成人HIV感染率は0.2%で,2014年までに28,663人が確認されていた患者数は,2016年には31,950人(男性89.3%,女性10.7%)と発表されています。

(5)コレラ

 夏季を中心に発生があり,2005年にイラン国内で約1,100人が発症,11人が死亡し,テヘラン地域でも217人の患者が確認されました。2011年に1,000人超,2013年にも約250人の患者の発生がありましたが,それ以外の年は数十人程度で推移しています。

(6)その他

皮膚リーシュマニア症

 パキスタン国境に近い地方やペルシャ湾岸を中心に,テヘランを含むイラン全土において発生があります。サシチョウバエが媒介し、感染のあるイヌとの接触や咬傷によってもヒトに感染します。

クリミア・コンゴ出血熱

 家畜に付くダニが媒介し,初夏から秋にかけて,イスファハン、ホーラーサーン・ラザヴィ、シスターン・バルチスタン各州を中心に26の州において散発的に報告されています。

レプトスピラ症

 ネズミの尿等から感染する病気で,カスピ海沿岸地域で発生が報告されています。

腸チフスやA型肝炎等の経口感染症

 夏季を中心に、イラン全土で報告されています。

6 健康上心がける事

(1)夏季

 高温環境下での野外活動やスポーツでは、多量の発汗により脱水に陥りやすいので,水分とミネラルの補給に気をつけてください。日本からの粉末のイオン飲料が便利です。紫外線が強いので,日焼け止めを使用し,炎天下での長時間の活動は控えましょう。

(2)冬季

 テヘラン市など各地で大気汚染が深刻化します。当局から呼吸器や心臓の弱い人は外出を控えるよう勧告が出されることもあり,学校も閉鎖されます。なるべく外出は控え,やむを得ず外出する時は,マスクを着用し,帰宅後にうがいを励行してください。空気清浄機の設置も効果的です。最低気温が氷点下となり,積雪や道路の凍結があるので,外出時は防寒対策とすべり止め等の転倒防止対策を準備してください。暖房により皮膚が乾燥して荒れたり痒くなったりしますので,保湿クリームなどを使用してスキンケアに気をつけてください。加湿器も有効です。

(3)ストレス

 宗教上の戒律(飲酒の禁止,女性の服装規定など)が外国人にも課せられ,大気汚染による外出の制限や娯楽施設が少ないこと等から,精神的ストレスを感じる方が多く見受けられます。ストレス解消法として,テニス,ゴルフ,登山,スキーなどのスポーツや,絨毯織り,ペルシャ書道,民族音楽,ペルシャ語などの習い事などがあります。

(4)交通事故

 ひっきりなしに猛スピードで車が往来する中で,歩道には段差や途絶があって,安心して歩くことができない(特にベビーカーの使用は極めて困難で危険)状況にあります。横断中の歩行者が見えても加速する,強引な割り込みや追い越し,車線を守らず逆走や歩道を通行するなど,イラン人の運転マナーの悪さをよく知って事故に遭わないよう注意する必要があります。また,乗車中は常にシートベルトを装着し,運転手が運転する場合でも居眠りしないことが大切です。

(5)不眠など

 テヘランは高地にあるため,到着後しばらく,軽い頭痛やめまい,疲労感,不眠を訴える方がいらっしゃいますが,多くは一時的で自然に改善します。ただし症状が強く、つらくて不安に感じる時や,数週間以上続く場合は医療機関を受診し相談してください。

(6)飲料水

 北部のアルボルズ山脈からの伏流水を水源とするテヘランの水質は比較的良好で,直接飲んでもよいとされていますが,最近,硝酸窒素化合物の濃度が高い地域があると報告されました。飲用水として,市販のミネラルウォーターか浄水器や煮沸後の水が安全です。また,日本の水と比較してマグネシウムやカルシウム等のミネラル分を多く含む硬水であるため,下痢や腹痛の原因となることがあります。おなかが弱い方や腎臓の機能が未熟な乳幼児は,ミネラル分の少ないミネラルウォーターを選ぶと良いでしょう。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

 現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

 有害事象発生時の医療機関の対応に不安があり,イラン政府の救済策は期待できない上,ワクチンの入荷状況が不安定である等の理由から,日本で接種を完了してから渡航されることを強くお勧めします。

(1)赴任・渡航者に必要な予防接種(成人,小児)

 日本から入国する場合には必要ありませんが,黄熱の感染リスクのある国を経由して入国する旅行者には,黄熱ワクチンの接種証明書が要求されます。

  • 成人: 破傷風,A型肝炎,B型肝炎,腸チフス,季節性インフルエンザ
  • 小児: 日本の定期接種,A型肝炎,B型肝炎,腸チフス,ロタウイルス,ムンプス(おたふく風邪),季節性インフルエンザ

 狂犬病ワクチンについては,(イラン国内での)渡航先や勤務先,滞在期間等により必要性が異なりますので,旅行医学に詳しい医師にご相談ください。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

イランの小児の定期予防接種
予防接種の種類 出生時 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 12ヶ月 18ヶ月 4~6歳
BCG(結核) 1回目            
ポリオ(OPV経口) 1回目 2回目 3回目 4回目   5回目 6回目
5種混合(注)(DTwP + Hib + HepB)   1回目 2回目 3回目      
DTwP(注)     4回目 5回目
B型肝炎(HepB) 1回目        
MMR         1回目 2回目  

△:5種混合ワクチンがない場合

(注)D:ジフテリア,T:破傷風,wP:百日咳,Hib:インフルエンザ菌b型,HepB:B型肝炎

(注)イランの百日咳ワクチンwPは,日本で使用される百日咳ワクチンaPと比べ高頻度に発熱が起きます。また,5種混合ワクチンは接種機関に在庫がないことがあります。

その他:Td(破傷風+ジフテリア)=14~16歳および成人(10年毎),妊婦,軍人
髄膜炎菌=軍人,ハッジ巡礼者

注意:上記の小児定期予防接種のワクチンは,ほとんどがイラン国内あるいはアジアなどの近隣国で製造されたもので,欧米製ワクチンはほぼ入手不可能です。また,1)ポリオワクチンは不活化ワクチンではなく経口生ワクチンである,2)5種混合(日本では4種混合)にはポリオワクチンではなくB型肝炎ワクチンとHibワクチンが入っている,3)3種および5種混合に含まれる百日咳ワクチンの種類が違う,4)はしか・風疹・おたふくかぜの3種類が入ったMMRワクチンが使用される,などの点が日本の定期接種と異なっています。

(3)

 現地校に入学・入園する際は上記のワクチン接種証明の提出を求められることがあります(公立校は必須)。渡航前に確認し,必要であれば医師に依頼して母子手帳などを基に英文(可能であればペルシャ語)の接種証明書をご準備ください。

8 病気になった場合(医療機関等)

  • 緊急時には,イラン各地の24時間対応の診療所や,すべての州にある総合病院の24時間対応の救急室を利用することができます。救急車:115番(ペルシャ語での対応)。
  • 病院勤務医の多くは,午前中は病院で勤務し,午後は各自のクリニックで診療するため不在となるので注意が必要です。
  • 医師の多くは英語を解しますが,看護師や受付職員は全く英語が話せないことが多いので,ペルシャ語が分かる人に同行してもらうことを勧めます。
  • 医薬分業が徹底しており,注射や点滴の薬であっても,患者や家族が薬局まで行って購入し病院の処置室に持参しなければなりません。血液やレントゲンの検査も,別の施設で受け,検査結果をもらってクリニックを再度受診しなければならないこともあります。
  • 支払いは基本的に前払いで,現在イラン国内ではクレジットカードは使用できません。

テヘラン

 邦人が利用する事の多い総合病院と歯科クリニックを紹介します。いずれの総合病院も24時間救急患者に対応しています。

(1)Day General Hospital (デイ ホスピタル)
所在地:Vali-asr Ave., Abbaspoor St.
電話:(021) 8879 - 7111 to 20
ファックス:(021) 8879 - 7353
概要:私立総合病院。救急患者は24時間各科(内科,小児科,外科,循環器科)の専門医が診察し,予約は必要ありません。一般外来を受診する際も,初診・再診とも予約は受け付けていないため,受付順で診察を待つことになります。邦人の入院・手術例があります。
(2)Tehran Clinic (テヘラン クリニック)
所在地:Ghaem Magham Farahani St.
電話:(021) 8871 - 2931 to 40
ファックス:(021) 8872-4543
概要:古くからある私立総合病院で,邦人で通院や出産された例があります。
(3)Pars General Hospital(パールス ホスピタル)
所在地:Vali-asr Sq. Keshavarz Ave. (エスピナスホテル向側)
電話:(021) 8896 - 0051 to 59
ファックス:(021) 8896-6052
概要:私立総合病院。CCU(心筋梗塞などの集中治療室)があり,心臓血管カテーテル検査を行っているほか,人工透析や腎移植の施設もあります。小児科や産婦人科,耳鼻咽喉科,整形外科などに多くの医師を揃え,現院長は産婦人科医で,過去に邦人の出産例があります。
(4)Kasra Hospital(キャスラ ホスピタル)
所在地:Arjentine Square Alvand St. No.23
電話:(021) 8877 - 4444 / (021) 8211 - 1000
ファックス:(021) 8878-1515
概要:日系企業等が多いArjentine Square地域にある私立総合病院です。
(5)Atieh Hospital(アティエ ホスピタル)
所在地:Shahrake gharbFarahzadi Blv. & Shahid dadman Cross
電話:(021) 82721
概要:市北部の私立総合病院。24時間,心筋梗塞等の患者受け入れ体制をとっています。
(6)Bahman Hospital(バフマン ホスピタル)
所在地:Shahrake gharbNorth Iran Zamin St.
電話:(021)8857 - 5901 to 10
概要:市北部の開業9年目の私立総合病院。心臓部門に特化し,また保健省から外国人患者受け入れ許可を受けています。邦人の婦人科手術例があります。
(7)Mofid Children’s Hospital(モフィド小児病院)
所在地:Shariati Ave.Chaleharz area
電話:(021) 2222 - 7021 to 9
概要:公立小児総合病院。外国との学術交流があり,海外からの患者も受け入れています。
(8)Dr. Amin Jalal Jalali(歯科)(ドクトル アミン ジャラル ジャラリ)
所在地:Tavanir Medical Bl. Unit 15, 3rd fl. No 34 Vali-asr Ave.
電話:(021) 8888 - 4411
概要:夫婦で開業。夫は歯周病とインプラントが専門。妻は小児歯科の専門医。原則予約が必要。
(9)Dr. V. Aboyans(歯科)(ドクトル アブヤンズ)
所在地:No.9 Sam St. East 14 St. Beihaghi St. Arjentine Square
電話:(021) 8874 - 7609
概要:英国で学んだ歯科医。原則予約が必要。

イスファハン

(1)Alzahra Hospital(アルザハラ ホスピタル)
所在地:Sofeh Street Isfahan
電話:(031) 3668 - 5555
ファックス:(031) 3668-4510
概要:イスファハン医科大学の教育病院で,24時間の救急外来があります。外国人用VIP病棟があり,一般のイラン人とは分けられた形で診療を受けることができます。

マシュハド

(1)Razavi Ultra Specialized Hospital(ラーザーヴィ ホスピタル)
所在地:Shahid Kalantari (Asiaei) Highway after Gha'em Bridge Mashhad
電話:(051) 3666 - 8888
概要:ほぼ全科(内科,外科,耳鼻咽喉科,眼科,整形外科,救急科等)を備え,約700人の医師が勤務するマシュハドで一番大きな総合病院です。特に心臓外科,脳神経外科に力を入れています。宗教都市マシュハドで1,200年前から続くイスラム教財団のアスタン・コッズ・ラーザーヴィ財団の厚い資金的サポートのもとで,2007年から診療を開始し,人種・宗教を問わず広く国内外から患者を受け入れています。

9 その他の詳細情報入手先

(1)在イラン日本国大使館 ホームページ:http://www.ir.emb-japan.go.jp別ウィンドウで開く
 大使館領事部に「テヘランの医療機関案内」を用意しておりますのでご利用ください。

10 現地語・一口メモ

  • 医師: ドクトル,ペゼシュク
  • 飲み薬: ダールー
  • 注射: アンプール,タズリーク
  • 頭痛: サルダルド
  • 胸痛: スィネダルド
  • 腹痛: デルダルド
  • 下痢: エスハール
  • 発熱: タブ
  • 吐気: タハッヴォ
  • 傷: ザフム
  • 具合が悪い。: ハーレ マン フーブ ニースト
  • 病院へ連れて行って欲しい。: ロトファン マン ラ ベ ビーマーレスターン ベレスニッド
  • 救急車: アンボランス

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