世界の医療事情

ハイチ

平成28年10月

1 国名・都市名(国際電話番号)

 ハイチ共和国 (国際電話国番号 509)

2 公館の住所・電話番号

在ハイチ日本国大使館(毎週土日休館)
住所:Ambassade du Japon en Haiti, Hexagone 2F, Angle Rues Clerveaux et Darguin, Pétion-Ville, Haiti
電話:(代表)2256-5885 / 2256-3333、FAX:2256-9444
ホームページ:http://www.ht.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html別ウィンドウで開く

(注)土日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので,ご覧ください。

3 医務官駐在公館ではありません

 在ドミニカ共和国日本国大使館 医務官が担当

4 衛生・医療事情一般

(1)気候・地誌

 ハイチはカリブ海で2番目に大きいイスパニョーラ島の西側3分の1と、ラ・トルチュ島など幾つかの島からなり、東側はドミニカ共和国と国境で接しています。面積は北海道のほぼ3分の1です。気候は熱帯海洋性気候に属し、蒸し暑い気候がほぼ1年を通じてみられ、気温が40℃近くまで上昇することもあります。雨期と乾期があり、雨期は概ね4月から10月で、短時間ながら雷を伴った激しい雨がよく降ります。雨期には、夜間や明け方等比較的涼しくなり、日中との気温差により体調を崩すこともあります。乾期は11月から3月で、しばしば水不足が問題になっています。なお、6月~11月はハリケーンシーズンで、毎年甚大な被害をもたらしています。

(2)医療水準

 世界で最も貧しい国の一つであるハイチの医療水準は劣悪と言わざるを得ません。従来から医師や看護師の絶対数が不足しており、医療機器、衛生材料も慢性的に不足していましたが、2010年1月の地震により更に厳しい状況となりました。当地の医療レベルは、首都ポルトープランスと地方都市、さらに農村地区とで大きく異なりますので、できる限り首都の外国人がよく利用する医療機関・クリニック等を受診するようにしてください。特に地方部においては、輸血を必要とする事故の治療、手術は困難です。

(3)受診

 通常は予約を入れてから受診します。時間外や救急の場合は、医師不在や電力供給等インフラ面が脆弱な多くの国立病院は避けた方が賢明であり、首都圏であれば日本人や外国人の受け入れ実績がある私立病院(クリニック)へ連絡することをお勧めします。(9.病気になった場合の欄を参照)

(4)緊急移送

 当地の医療環境は劣悪であり、軽症例を除き可能な限り速やかに医療先進地域(米国)で診断、治療を受けることを念頭に対応する必要があります。日本を出発する前に海外旅行傷害保険に加入し、緊急移送の特約も付加しておくようにしてください。緊急移送先としてしばしばマイアミが選ばれていますが、米国での医療費は高額であるため、海外旅行傷害保険加入の際には保険金額も十分な補償が受けられるように増額しておくことをお勧めします。

(5)救急車の依頼

 現在、当地で利用可能な救急サービスは存在するものの、その殆どが機能していないこ
とが多く、緊急の場合は自家用車等で病院へ向かうのが合理的です。

(6)水質

 当地では首都圏を含め、水道(上下)設備が殆ど整備されていません。蛇口から出てくる水は良くて処理水を貯水槽に貯めたものであり、飲用を想定していません。蛇口からの水は、シャワー・風呂・洗顔程度には特に問題ないと考えられますが、その保守は宿泊・滞在する施設によりけりなので注意が必要です。飲用水としては、水道水を煮沸したものか、ミネラルウォーター、ボトルウォーターを利用してください。

(7)食品衛生

 一般に食品の取り扱い、保存状態等にも問題が多いので、信用できる所以外で購入した生野菜、カットフルーツ、アイスクリーム等は食べない、コップや水差しで出された水、氷などを避ける、といった注意が必要です。首都圏や一定の都市圏等、外国人が出入りするような飲食店・ホテル等では、処理水をもちいた氷・水をコップ・水差しで提供しており、通常飲用に差し支えないですが、不安がある場合には、飲まないか、どのような水かを尋ねる等の慎重さが必要です。

5 かかり易い病気・怪我

(1)腸管感染症

 下痢、嘔吐、腹痛を症状とする疾患です。ほぼ全ての食中毒、寄生虫症がみられます。ジアルジア症、アメーバ赤痢、腸チフス等もまれな病気ではありません。高温多湿の環境、上下水道の不備、不十分な生鮮食料品の管理(頻繁にみられる停電)等の問題があり、外食する場合には信頼できるレストランを選び、生ものは避けて、よく火の通った料理を選んでください。

(2)コレラ

 2010年10月よりアルティボニット県から流行の始まったコレラは全国に広がり、累計患者70万人以上、死者9,000人に及び、対策により一時的には改善に転じていました。しかし、その後、流行状況の再悪化が見られ、さらに2016年10月のハリケーン・マシューの通過により更に感染が拡大したため、大規模な対策キャンペーンが実施されている状況です。当地では、首都であっても特に衛生環境の悪い地域、或いは地方において衛生管理が行き届いていない地域に立ち入る場合は、水や食べ物に注意すると共に、手洗いの徹底に留意してください。

(3)デング熱

 特に5月~11月の雨期に感染のリスクが高くなります。症状は4~6日の潜伏期の後、発熱、頭痛、筋肉痛等が続きます。約10%の例が重症のデング出血熱を呈します。予防はデング熱の媒介蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ)に刺されないことなので、長袖・長ズボンの衣類を着用する、虫よけクリームやスプレーを適切に使用するといったことが大切です。また、蚊の発生源となる水たまりを作らない、窓や戸を開けたままにしない、網戸を使用するといったことも併せて行ってください。なお、デング熱媒介蚊の吸血活動は日中に活発となるため、デング熱感染予防のためには,昼間の防蚊対策が重要です。

(4)マラリア

 年間を通じ全国で、主に平野部の稲作地帯で発生が見られ、また,都市部における感染リスクは地方と同じレベルです。公式の発表では年間2万人余りですが、実際には更に多数の患者が発生している可能性があります。ハイチのマラリアは全例熱帯熱マラリア(Plasmodium falciparum)ですが、現在のところ治療薬クロロキンに感受性があります。潜伏期は12日前後、発症すると38度以上の高熱が続きます。発症後5日以内に治療を開始しないと脳性マラリアとなり、死亡率が50%にも及ぶため、可及的速やかに診断・治療を受けてください。感染リスクが高い地域に出かける場合にはマラリア予防薬内服が必要となる場合もあるので、事前に現地の感染状況や医療事情を確認し,予防内服の要否を検討してください。

 マラリア媒介蚊(ハマダラカ)は夜間に活発な吸血活動を示すので、マラリア感染予防のためには,防蚊対策は特に夜間の時間帯に力を入れてください。なお、マラリア発症が疑われる場合には、治療を開始する前にできれば診断(マラリア血液検査)を行うことを優先してください、或いはそれなりの確信を持って治療を開始した場合には、途中で治療薬内服を止めず最後まで治療しきるよう留意が必要です。

(5)チクングニア熱

 症状は3-7日の潜伏期の後、発熱と関節痛で発症します。予防は媒介蚊に刺されないことなので、デング熱と同じです。

(6)ジカ熱

 2015年10月から症例が報告されました。2016年8月には、ジカ熱との関連が指摘された小頭症の新生児2名が確認されました。ジカ熱の症状は3-12日の潜伏期の後、発熱、斑状丘疹性発疹、関節痛、結膜充血、頭痛等を認めます。ただし、感染者の80%が無症状といわれています。予防は媒介蚊に刺されないことなので、デング熱と同じです。

(7)フィラリア症

 年間を通じ全国で発生がみられます。特に北県ミロ、西県レオガンは高度汚染地域で、レオガン住民の60%がフィラリアに感染していると報告されています。媒介蚊(ネッタイイエカ)に吸血される際に感染し、象皮病、陰嚢水腫を発症します。

(8)狂犬病

 全土で感染のリスクがあります。イヌ以外にネコ、コウモリ等からも感染しますので、これらの動物に咬まれたら直ちに傷口をよく洗い、速やかに医師に相談する必要があります。潜伏期は1~3か月、発症すると100%の死亡率なので、疑いのある場合は咬傷後出来るだけ早く狂犬病ワクチン接種(暴露後免疫)を受ける必要があります。長期滞在や動物との接触が多い場合は可能な限り渡航前にワクチン接種(暴露前免疫)を受けておくことをお勧めします。

6 健康上心がける事

(1)メンタルヘルス

 生活必需品の入手もままならず、停電や断水の問題があり、治安も良好とは言い難いなど、多くのストレスから抑うつ状態になりやすい生活環境といえます。定期的に十分な休養を取る、積極的に気分転換の工夫をする、家族や友人との団らんの機会を持つといったことなどを取り入れて、心のリフレッシュを心がけてください。

(2)熱中症

 高温多湿のため、屋外で身体を動かすと汗をかきやすく、熱中症が起こりやすい環境です。通気性・吸水性の良い服装にする、涼しい場所での休憩をはさむ、こまめに水分補給をするといった点に心がけてください。頭痛、だるさ、発熱は熱中症の症状ですので、そのような症状を認めた場合は早めに病院を受診し、場合によっては点滴治療を受けるなどの対応を受けてください。

(3)交通事故

 整備不良車両、未熟な運転技術、交通ルールの無視、無謀な運転、道路事情の悪さ等により交通事故は多いですが、一方で,交通外傷への対応(手術、輸血など)は、ポルトープランス以外では非常に困難です。シートベルトの着用は事故に際して有意義ですので着用につとめてください。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

 現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

(1)赴任者に必要な予防接種

 日本から入国する際に求められる予防接種はありませんが、以下の予防接種は可能な限り受けておくのが良いと思われます。

  • 成人:A型肝炎、B型肝炎、破傷風、腸チフス、麻疹、風疹、ポリオ、生活環境によっては狂犬病。
  • 小児:わが国の定期接種(勧奨接種)である3種混合(DTP)、BCG、ポリオ、麻疹、風疹、B型肝炎、水痘、インフルエンザ菌b型(Hib)、肺炎球菌、及び任意接種であるおたふく風邪。生活環境によっては狂犬病。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

ハイチ共和国における小児の定期予防接種
  初回 2回目 3回目 4回目 5回目
BCG 出生時        
ポリオ(OPV) 出生時 1.5ヵ月 2.5ヵ月 3.5ヵ月 1歳3ヵ月
3種混合(DTP) 1.5ヵ月 2.5ヵ月 3.5ヵ月 1歳3ヵ月  
麻疹 9ヵ月        
風疹 9ヵ月        
二種混合(dT) 15歳        

(注)ポリオ定期接種は生ワクチン、私立クリニックでは不活化ワクチン接種可能

(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明

 小児が入園・入学する際には予防接種証明の提出が必要です。主に小児科クリニックで発行されるもので、麻疹、ポリオ、BCG(年齢等により内容が異なること有り)の接種用量について記載されています。

8 乳児検診

 公的に生後1ヵ月から5歳の誕生日まで毎月無料で健康診断を受けることができます。しかし、実際にはほとんど機能しておらず、乳児健診を希望する場合には産科医や小児科医のクリニックで個別に受けることになります(有料)。

9 病気になった場合(医療機関等)

首都

(1)Hôpital de Canape Vert (オピタル・ド・カナペベール)
所在地:83 Route de Canape Vert, Port au Prince
電話:2812-0505/28170505
概要:56年前に創設された私立病院(病床数31床)です。2010年の地震により、産婦人科、新生児室のある棟は崩壊してしまいました。現在の診療科は内科、外科、小児科、救急外来です。病室は扇風機付きの一番安い部屋が1,900グルド~、クーラー付きの個室が8,000グルドで、クレジットカードで支払い可能で、部屋は清潔です。
手術室は3室あります。輸血はHôpital General内の赤十字から安全な血液を取り寄せるそうです。一般レントゲン撮影機器が1台ありますが,CTは有りません。検査は同じ敷地の別棟にあるMEDLAB(電話:2813-7495、WEB:http://www.medlabhaiti.com別ウィンドウで開く)という検査施設で24時間、血液検査(末血、生化)、一般検査が行え、更に内分泌、抗体、細菌検査も行えます。この病院には夜間を含め医師は常駐しておらず、入院を決めた医師が主治医となり治療に責任を持ちます。
(2)Clinique Lambert (クリニック・ランベール)
住所:75,Rue Lambert,Petion-Ville
電話:3702-3646/3470-3646/3706-8306
概要:Unite Chirurgicale(ユニテ・シルルジカル)とも呼ばれている鉄筋コンクリート5階建の私立病院です。病室は個室と二人部屋で計12床あります。外科、形成外科、産婦人科、整形外科、心臓病科、泌尿器科の診察室、Unilabという検査施設、薬局、放射線科(一般撮影)、超音波診断室があります。夜間は当直医1名が常駐しています。手術室は3室有り、設備は新しく整っています。フランス・トゥルーズ大学の心臓外科チームが短期滞在し開心術をまとめて行うこともあります。1階には同じくフランスのNGO「ALIMA(The Alliance for International Medical Action)」の事務局があり、ALIMAによる無料外来診察室があります。
(3)Docteur Eddy Jean-Baptiste (ドクトゥール・エディ・ジャンバプティスト)
Clinique des Cèdres(午後)(クリニック・デ・セードゥル)
所在地:Angle Rues Faubert et Lambert No.9,Petion-Ville
電話:3701-4243
概要:大使館から3分の距離にある建物の2階にオフィスを持つ内科医。検査はここではできません。同じフロアーに内科医1名、外科医2名、整形外科医1名が秘書を共有して開業しています。入院が必要な場合、Canape vert病院(レントゲン撮影可、検査は24時間対応、ただし救急は不可)もしくはClinique Lambert(電話:3706-8306、当直がおり救急患者受け入れ可能)に依頼しています。

10 その他の詳細情報入手先

(1)在ハイチ日本国大使館:
http://www.ht.emb-japan.go.jp/j/info_consulaire/iryojijochousa/iryojijochousa.html別ウィンドウで開く
医療事情調査報告があります。

(2)在ハイチ米国大使館:
https://haiti.usembassy.gov/別ウィンドウで開く
「英語が話せる現地医師のリスト」があります。

(3)ハイチ保健省:http://www.mspp.gouv.ht/別ウィンドウで開く
感染症情報・医療統計があります。

(4)世界保健機構(WHO)国別情報:http://www.who.int/countries/hti/en/別ウィンドウで開く
感染症情報、医療統計があります。

11 現地語・一口メモ

 フランス語に関しては,下記以外に,「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療フランス語)を参照願います。

クレオール語とフランス語
日本語 クレオール語 フランス語
医者 doctè(ドクテ) docteur(ドクトゥ-ル)
飲み薬 konprime(コンプリメ) medicament(メディカマン)
注射 piki(ピキ) piqûre(ピキュール)
頭痛 tèt fè mal(テット フェ マル) mal à la tête(マラ ラ テット)
腹痛 vant fè mal(ヴァント フェ マル) mal au ventre(マル オウ バントゥル)
下痢 dyare(ディアレ) diarrhée(ディアレ)
発熱 la fièv(ラ フィエヴ) fièvre(フィエーブル)
吐き気 anvi vomi / kè plen(アンヴィ ヴォミ/ケ プラン) nausea(ノゼ)
blesse(ブレッセ) blessure(ブレシュール)
具合が悪い。 Mwen santi’m mal.(ムウェン サンティム マル) Je me sens mal.(ジュ ム サン マル)
病院へ連れて行って欲しい。 Mennen mwen lopital.(メンネン ムウェン ロピタル) Amenez-moi à l’hôpital.(アムネ モワ ア ロピタル)

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