世界の医療事情
中華人民共和国(上海)
1 国名・都市名(国際電話番号)
中華人民共和国(上海市)(国際電話国番号86)
2 公館の住所・電話番号
- 在上海日本国総領事館(毎週土曜日、日曜日休館)
- 住所:上海市長寧区万山路8号(本館)、延安西路2299号上海世貿大厦13階(領事部)
- 電話:021-5257-4766(代表)、021-5257-4768(査証専用)
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在上海日本国総領事館
(注)祝日などの休館日は暦年ごとにウェブサイトで案内しています。
4 衛生・医療事情一般
上海市は日本と同じように四季がはっきりしています。6月中旬から7月上旬まで3週間ほど梅雨が続き、その後訪れる真夏は高温多湿で最高気温が40℃になる日もあります。緯度は鹿児島県とほぼ同じですが、冬は日本の東北地方ぐらいの寒さで、最低気温が氷点下となる日もあります。
咳エチケットが徹底されていない、街中で痰を吐くなど、衛生概念の普及はまだ十分とはいえませんが、都市部の住宅や商業施設の衛生状態はおおむね良好です。食への安全意識は高まり、添加物等有毒物質対策も強化され、有機栽培商品なども多く出回っています。水道水は一定の安全基準を満たしていますが、においが感じられることがあるほか、濁りが認められることもあります。これは水道管や貯水設備などが老朽化しているためだと思われます。食器・食材の洗浄や入浴・歯磨きなどには差し支えありませんが、飲用には市販の飲用水を使用してください。
救急車(電話番号:120番)は有料で、搬送距離や車内での処置内容によって料金が変わります。最寄りの病院の救急外来に搬送されますが、状態が許せば搬送先を指定することもできます。
中国の公立病院は、規模や役割によって1級から3級に分類されています。各居住地域に設置されている社区衛生服務中心は1級医院で、日常の診療のほか地域住民の健診や予防接種などを行う診療所です。2級医院は市内各区を対象に総合的に診療を行う中規模病院で、3級医院は市全体を対象として高度な診療を行う大規模病院です。どの病院にも、西洋医学による治療を行う医師のほかに中国の伝統的医学による治療を行う中医がいて、生薬や針灸による治療も行っています。2級や3級医院には、外国人や中国人富裕層を対象とした特別部門(特需問診・国際医療部・特診部・VIP問診)が設置されている場合があり、予約制で待ち時間が少なく、熟練医の診療が受けられますが、医療費は高額に設定されています。英語を話せる職員が配置されていることがありますが、日本語が話せる職員がいるとは限りません。
公立・私立にかかわらず3級医院の医療水準は高く、公立病院の一般外来を外国人が受診することも可能ですが、長時間の待ち時間が発生する、中国語が堪能であるか通訳が同伴しなければならないなど、中国の医療習慣がわかならいと不都合が生じます。
上海市や蘇州市には、日本人医師や日本語を話せる中国人医師が診療している医療施設があり、予約・受付から会計まで日本語でやり取りができる施設もあります。出産も医療設備が整っている外資系病院もあり、比較的安全な出産が可能です。診療は予約が優先される場合が多いので、連絡してから受診することを勧めます。
医療機関を受診する場合は、加入している海外旅行傷害保険や海外駐在員保険などの窓口に連絡することを勧めます。契約内容により、各保険会社提携の医療アシスタンス会社を通じて、医療機関の紹介、救急者の手配、受診・入院の手配、医療通訳の手配、日本への移送の手配などのサービスが受けられる場合があります。受診や入院の際には、医療費の前払いや保証金の支払いを求められますが、外国人向け診療の医療費は日本と比較して相当に高額になる場合が多いので、十分な医療補償のある保険に加入しておくことを強く勧めます。キャッシュレスサービスの保険に加入している場合、同サービスに対応している医療機関を利用すると医療費の支払いを保険会社に任せることができ、窓口での支払いが生じないので受診時の金銭的負担が軽減されます。上海市外では、外国人向けの医療機関が少なく外国人の受診に不慣れなことがあります。入院や手術などが必要となる場合は、救急疾患を除き上海市の医療機関を受診することや日本への帰国も考慮してください。
5 かかり易い病気・怪我
上海市内では特別に注意が必要な風土病はなく、邦人死亡の原因の多くは、心臓発作や脳卒中など生活習慣病に関連したものや事故・自殺などです。
(1)生活習慣病
生活環境の変化に伴うストレスや食生活の乱れにより、高血圧症・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病が急速に悪化したり顕在化したりすることがあります。生活習慣病は、それ自体がはっきりとした自覚症状を示すことはあまりありませんが、本人が気付かないうちに進行して心臓発作や脳卒中などの致命的な状態を突然引き起こします。
(2)交通事故
歩行者優先という意識は乏しく、車の右折が常に可能な交差点が多いため、青信号で横断歩道を渡っていても注意が必要です。電動バイクが歩道を走行し、音もなく近づいてくるので歩行者にとって非常に危険です。
(3)飲酒による病気・事故
中国では会食時にアルコール度数の高いお酒を何度も飲み干す習慣があるため、雰囲気に流されて飲酒量が増えがちです。酩酊・泥酔状態で意識を失い大けがをしたり、嘔吐して窒息したりするなど死亡事故も発生しています。
(4)結核
患者の咳やくしゃみで飛び散った菌を吸い込むことにより感染します。適切な治療により治癒しますが、診断が遅れたり、薬剤の効きにくい結核菌では治療に難渋したりすることがあります。中国の結核罹患率は年々減少しているものの、依然としてWHOの指定する結核「高負荷国」に指定されており、結核の罹患率は日本より高くなっています。胸部レントゲン写真を含んだ健康診断を定期的に受け、咳や微熱が2週間以上続く場合には医療機関で医師の診察を受けてください。
(参考)厚生労働省「結核」
(5)ウイルス性肝炎、HIV/AIDS、梅毒・淋病・その他性感染症
これらの疾患の中国の有病率は日本より高くなっており、慢性的に経過し重大な結果を引き起こすこともあります。A型肝炎や日本ではまれなE型肝炎は経口感染で、主に不衛生な環境において食べ物や水を介して感染します。A型肝炎とB型肝炎には予防接種が有効です。その他の疾患は主に血液、体液、性的接触を介して感染します。無防備で安易な性交渉は絶対に避けてください。
(参考)肝炎情報センター「急性肝炎」、エイズ予防情報ネット(API-NET)「エイズQ&A」
、厚生労働省「性感染症」
(6)狂犬病
狂犬病ウイルスに感染した犬や野生動物との接触により感染します。発症するとほぼ死亡しますが、動物に噛まれた後にワクチンを接種するなどの対応を速やかに開始すれば発症を防ぐことができます。万が一犬などの哺乳動物に咬まれた場合には、早急に医療機関を受診してください。
(参考)在上海日本総領事館「イヌ、ネコおよび野生動物に咬まれるなどしたとき(狂犬病の予防)」、厚生労働省「狂犬病に関するQ&Aについて」
(7)蚊やダニなどの昆虫に媒介される病気(デング熱、日本脳炎、ダニ媒介感染症等)
これらの疾患は上海市での発生は少ないものの、中国国内で発生しています。重症化することがあり、早期に適切な治療が行われなければ死に至ることがあります。夏から秋にかけて蚊が多く発生する時期や屋外活動をする時には、できるだけ肌を露出せず、虫よけ剤を使用するなど、虫に刺されないように注意してください。日本脳炎には予防接種が有効です。
(参考)厚生労働省「蚊媒介感染症」、「ダニ媒介感染症」
(8)高山病
中国で標高が2000mを超える地域に行く時には高山病を発症する危険があります。雲南省北部のシャングリラ(約3400m)や、四川省北部の九寨溝
や黄龍(約3000m)、チベットのラサ(3749m)などへ旅行される方は特に注意が必要です。高所で頭痛、吐き気、息切れ、倦怠感、めまい、食欲不振などの症状が現れるのが高山病です。ひどい場合には死に至ることもあります。症状が出た場合にはそれ以上高い地点に上がらず、症状が悪くなったらすぐに低い地点まで下りるようにしてください。余裕のない日程で行動したり、周りの人と歩調を合わせようとして無理な行動をすることは危険です。予防薬(アセタゾラミド)も有効ですので、高所に行く場合には事前に医師に相談するとよいでしょう。
(参考)日本旅行医学会「高山病で死なないために」
(9)花粉症
上海市ではスギの花粉はほとんど飛散していないものの、春先に花粉症症状を訴える方がいます。街路樹として多く植えられているプラタナス(スズカケノキ)の花粉が原因と考えられています。
(10)大気汚染
日本でもしばしば報道される中国の大気汚染は、政府の対策もあって近年は大幅に改善していますが、秋から冬期に悪化する傾向があります。スマートフォンのアプリやウェブサイトなどで大気質指数(AQI値)をチェックし外出することを勧めます。大気汚染が疑われる時期には、窓を開けない、空気清浄機を使用するなどの対策をしてください。
(参考)在中国日本国大使館「中国における大気汚染について」、上海市生態環境局(中国語)
(11)その他
感染性胃腸炎(下痢症・食中毒)、インフルエンザや新型コロナ、百日咳などの呼吸器感染症の罹患率が高いです。鳥インフルエンザやSARSなどの感染症が起こる可能性があるので、野生動物や家禽類との不用意な接触は避けてください。
6 健康上心がけること
(1)手指衛生・食品衛生
手指を介して感染する疾患は数多くあります。外出後、調理前、食事前などにこまめに石鹸を使って手を洗ってください。食材は清潔で信頼できる店舗から購入し、肉・魚介類・卵は十分に加熱調理し、調理後はなるべく早く食べるようにしてください。飲用には市販の飲用水を使用し、野菜や果物は生食する場合に限らず十分に洗浄してください。
(2)健康管理
治療中の病気がある場合には、治療を中断しないようにしてください。定期的に健康診断を受け、生活習慣を見直すきっかけにしましょう。
(3)虫対策
蚊やダニに刺されないようにしてください。昆虫忌避剤や蚊取り器などは有効です。
(4)薬の持参
市販薬は薬局で入手できますが、言葉の問題などで不便な場合がありますので、かぜ薬や解熱鎮痛剤などの市販薬等を携行することを勧めます。
7 予防接種(ワクチン接種機関含む)
(1)赴任者に必要な予防接種
日本から入国の際に検疫上必要となる予防接種はありませんが、接種しておいた方がよいと考えられるワクチンは以下のとおりです。黄熱に感染する危険のある国からの入国では、黄熱の国際予防接種証明書が必要です。
成人:A型肝炎・B型肝炎・破傷風・狂犬病(動物に接触する機会がある場合、医療機関にすぐかかれない場所に住む場合)・日本脳炎(非都市部の屋外での活動が多い場合)・腸チフス(現地では接種できません)・季節性インフルエンザ(冬期)、新型コロナ その他、麻疹(はしか)、風疹、水痘(みずぼうそう)、流行性耳下腺炎(ムンプス・おたふくかぜ)、ポリオ(昭和50年から52年生まれの方)、帯状疱疹(50歳以上)も、これまで罹患したことがない、予防接種歴や接種回数が不明の場合には医師に相談した上で接種を検討してください。
小児:日本国内での定期予防接種、その他は上記の成人と同様
(2)現地の小児定期予防接種一覧
当館のウェブサイトに情報を掲載しています。「小児の定期予防接種について」
予防接種に関する規則が予告なしに変更になることがあります。掲載内容は最新状況と異なる場合がありますので、医療機関に直接確認してください。
初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 | |
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BCG | 出生直後 | ||||
B型肝炎 | 出生直後 | 1か月 | 6か月 | ||
ポリオ | 2か月(IPV) | 3か月(IPV) | 4か月(OPV) | 4歳(OPV) | |
DPT | 3か月(DTaP) | 4か月(DTaP) | 5か月(DTaP) | 18か月(DTaP) | 6歳(DT) |
日本脳炎(不活化) | 8か月 | 8か月+7日 | 2歳 | 6歳 | |
日本脳炎(生) | 8か月 | 2歳 | |||
MMR | 8か月 | 18か月 | 6歳 | ||
髄膜炎菌 | 6か月(A) | 9か月(A) | 3歳(AC) | 6歳(AC) | |
A型肝炎(不活化) | 18か月 | 2歳 | |||
A型肝炎(生) | 18か月 |
(2024年10月時点)
(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明
日本人学校の入学に予防接種の記録は不要ですが、母子手帳あるいは各種予防接種記録を持参してくることを勧めます。現地校に入学・入園する際には予防接種記録の提示を求められます。詳細は各校に直接問い合わせてください。
8 病気になった場合(医療機関等)
在上海日本国総領事館ウェブサイト->領事情報->医療関連に掲載しています。
9 一口メモ(もしもの時の中国語)
「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の中国語)を参照してください。