世界の医療事情
ギニアビサウ
1 国名、都市名(国際電話番号)
ギニアビサウ共和国(国際電話番号245)
2 公館の住所・電話番号
- 在ギニアビサウ日本国大使館(毎週土曜日、日曜日休館)
- 住所:Ambassade du Japon au Sénégal, Boulevard Martin Luther King, Dakar, Sénégal(B.P. 3140)
- 電話:33 849 55 00
- FAX:33 849 55 55
- ギニアビサウ共和国は、在セネガル大使館が兼轄しています。
- ウェブサイト:在セネガル日本国大使館
、在ギニアビサウ日本国大使館
(注)土曜日、日曜日以外の休館日は上記ウェブサイト「大使館案内」をご覧ください。
3 医務官駐在公館ではありません
在セネガル日本国大使館医務官が担当
4 衛生・医療事情一般
(1)地誌、気候など
ギニアビサウは、北にセネガル、南から南東はギニアと国境を接し、西は大西洋に面しており、青森、岩手、秋田3県とほぼ同じ面積です。国土は比較的平坦で、標高277mが最高地点です。沿岸部には潮位により水没する沼沢地やマングローブ林が広がり、内陸部は熱帯雨林とサバンナ地帯が存在します。気候は、熱帯サバナ気候に分類され、高温多湿で雨季と乾季があります。乾季にはハルマッタンと呼ばれるサハラ砂漠の砂塵を含む乾燥した季節風が吹き、大気汚染が進みますが、夜はやや過ごしやすくなります。
人口は約215万です。首都ビサウの人口は約60万人ですが、周辺都市も含めると人口のほぼ半数が都市部に集中しています。公用語はポルトガル語、共通語としてギニアビサウ・クレオール語が用いられ、仏語も通じますが、英語はあまり通じません。宗教はイスラム教46%、土着宗教31%、キリスト教19%と混在しています。経済は農業・漁業が中心で、輸出品の7から8割を占めるカシューナッツに依存し、経済発展の基盤は弱く、世界最貧国の一つとされています。また森林伐採や土壌侵食が問題となっています。
政治的には、ポルトガルから独立後、クーデター等の政治的混乱が続き不安定でが、国際関係では、ポルトガル語圏の国家としてポルトガル語諸国共同体やポルトガル語公用語アフリカ諸国に加盟しており、とくに近隣のカーボベルデとは歴史的結びつきがあります。
(2)衛生、水質
川や沼地に接する地域が多いこともあり、雨季の始まりとともに蚊の発生が急増し、主に熱帯熱マラリアやデング熱など蚊媒介感染症が7月から12月に多発します。また、雨季の高温多湿の環境から、消化器感染症も増える傾向にあります。市中であっても、野良犬、野良猫、サルなどの野生動物との接触による、狂犬病、破傷風、猫ひっかき病などの感染症の危険があります。南隣のギニア同様、顧みられない熱帯病(NTDs)の殆どが常時発生しています。
ギニアビサウ | 日本 | 日本との比較 | 統計年 | |
---|---|---|---|---|
平均寿命 | 58.6 | 84.52 | 25.92 | 2021 |
男 | 56.1 | 81.47 | 25.37 | 2021 |
女 | 61.1 | 87.57 | 26.47 | 2021 |
新生児死亡率 | 33.6 | 0.8 | 42倍 | 2022 |
5歳児未満死亡率 | 71.9 | 2.2 | 32.7倍 | 2022 |
妊産婦死亡率 | 725 | 2.7 | 269倍 | 2020 |
医師数(/1万) | 2.1 | 27.47 | 7.6% | 2022 |
交通事故死亡率 | 30.5 | 2.7 | 11.3倍 | 2021 |
新生児、小児死亡率が日本の40倍ほど、妊産婦死亡率が170倍と高く、平均寿命も日本より25年短くなっています。
上下水道や電力等の社会基盤の整備が遅れています。水道水は飲料には適していないと考えてください。
(3)医療水準
医療事情は非常に悪く、特に公立病院で医療資源の不足が目立っています。交通事故等による重症外傷への対応、入院治療や手術は不可能とお考えください。また、輸血用血液も信用できません。医師は、ポルトガル、セネガル、コートジボワールあるいはキューバや東欧などで教育を受けたギニアビサウ人と、キューバ、中国、そして、NGOや国際機関の医療援助で入るイタリア、ポルトガル、スペインなど。
治療費は前払いが原則です。中程度以上の緊急を要する疾患及び外傷においては、速やかに国外へ搬送する必要があり、十分な額の海外旅行傷害保険(特に治療救援費用)に加入しておくことを強くお勧めします。集中治療が必要な重症患者の専用機での日本までの搬送をカバーするには、治療救援費用5000万円以上のものが必要です。
中等度以上の急病・外傷時は現状8(1)や(2)などの私立病院に行き、診断と応急的処置を行いながら、欧州や日本への緊急搬送を考慮すべきです。
5 かかり易い病気・怪我
(1)交通事故
交通渋滞が頻繁で、整備不良車両、交通ルールの無視、飛び出しなど、諸事情の悪さにより交通事故は多く、救急外傷への対応は非常に困難です。当地では、信頼できる会社で運転手を雇うなどして、ご自身で運転することは極力避けましょう。
(2)下痢性疾患
旅行者下痢症と呼ばれる不特定の病原(ウィルス・細菌・寄生虫など)による消化器感染症が中心で、年間を通じてみられます。不衛生な場所での飲食は控えてください。水道水は飲用に適しません。別記しますが、特に生水・生ものは危険ですのでご注意ください。
(3)マラリアなど蚊媒介感染症
マラリアやデング熱、チクングニア熱など蚊が媒介する感染症は、全国的に年間を通して発生します。雨季の始まりから増加し、10月から11月頃がピークとなります。熱帯熱マラリアがほとんどであり、治療せずに放置すれば死に至るため、早期の診断と治療が必要です。市中の医療機関では発熱性疾患は必ずマラリアの検査をします。雨季に滞在する場合は、予防薬(メフロキン(Mefloquine)、ドキシサイクリン(Doxycycline)またはアトバコンとプログアニルの合剤(Malarone))の使用を考慮してください。
WHOによると2022年のマラリアによる推定感染者数は252,200から454,000、推定死亡数は1,023から1,390、罹患率は1000人口中107人、年々増加傾向で死亡例の大部分が小児です。
(4)狂犬病
動物(犬だけでなく、猫、山羊、羊、牛等)と接触する場合、噛まれなくても、唾液により狂犬病ウイルスに感染する危険があります。毎年発症例があり、発病すると致死率はほぼ100%のため発症予防が重要です。動物との接触が予想される場合は、予めワクチンを接種(暴露前接種)することをお勧めします。他のリッサウイルスも存在しているので、コウモリなどにも要注意です。
(5)黄熱
黄熱の汚染地域であり、ギニアビサウに入国する際、予防接種証明書(イエローカード)の提示を求められる場合があります。ギニアビサウから第3国へ渡航する際に予防接種証明書(イエローカード)が必須とされる場合があります。また、証明書は、接種10日後から有効となります。
(6)皮膚ハエウジ症
mango fly、tumbu flyなどと呼ばれるCordylobia anthropophagaというハエによって、主に犬・猫・家畜・野生動物の皮膚にウジが入り込んでしまうもので、人にも同じように蠅蛆症を起こします。洗濯物などに産卵され、ウジが皮膚内に入って成長しるため、切開してウジを摘出しなければなりません。当地では、洗濯物は必ずアイロンを掛けて処理するか、安全な室内干しにして充分に注意してください。
(7)その他
NTDs(顧みられない熱帯病)と言われるさまざまな熱帯感染症が流行しています。2022年医療機関を受診したNTDsの患者数は1,992,894人(人口の95%)でした。
6 健康上心がけること
(1)蚊・ダニ・ハエなどの予防対策
マラリア、デング熱、黄熱、チクングニア熱、フィラリア症、リフトバレー熱など、ギニアビサウでは蚊が媒介する熱帯感染症はたくさんあります。蚊だけでなく、ダニやサシチョウバエ、ツェツェバエなどの吸血昆虫媒介感染症の予防を徹底しましょう。
蚊に刺されないように、外出時はディート30%またはイカリジン15%含有の虫よけ剤(蚊忌避剤)を使いましょう。忌避剤等は薬局で購入できますが肌に合わないことも多く、日本からこれらの忌避剤(濃度が低いものは避ける)や殺虫剤(長時間型ワンプッシュタイプ、トランスフルトリンやメトフルトリンなどのピレスロイド系や、ブロフラニリド含有のもの)を持ちこむこともお考えください。
白など色の薄い色の服装(長袖、長ズボン)でできる限り肌を隠しましょう。就寝時は蚊帳の使用も有効です。
長期滞在の場合、蚊の発生場所をなくために、住居の周りを定期的にチェックしてください。蚊の幼虫(ボウフラ)が発生しそうな水たまりを除去・清掃。除去できない観賞用植物等の水たまりについては、メダカなどを入れることも一案です。
都市部でも草木の多い庭やレストランなどで猫などの動物が多いところでは、ダニ、ノミ咬傷となりやすいので、とくに夕方から夜、朝方は、足は肌を出さないよう長ズボンに靴をお勧めします。ダニなどで感染するボレリア症、重症熱性血小板減少症候群、クリミア・コンゴ出血熱など重症感染症も発生しており、注意してください。
(2)熱中症
高温多湿であり、気づかないうちに脱水状態になっていることがあります。セネガル人も水を持ち歩いています。とくに昼間外出時やスポーツ時は、熱中症予防のため十分な水分補給を欠かさないで下さい。頭痛、だるさ、発熱は熱中症の症状です。重症例では経口摂取が十分にできなくなるので、病院を受診し、点滴が必要となる場合があります。
(3)紫外線・日焼け
赤道に近く紫外線が強いため、日焼けに十分注意をして下さい。日焼けは、火傷の一種です。甘く見てはいけません。十数分直射日光を浴ただけで、水ぶくれ(2度熱傷)ができることもあります。屋外に出かけるときには日焼け止めを塗り、日傘の利用や長袖・長ズボンやサングラスを着用し、直射日光を避けましょう。ビーチでも、耐水性の日焼け止めやラッシュガードの着用をお勧めします。
(4)大気汚染
毎年乾季にあたる11月から5月にかけハルマッタンが運ぶ砂塵と排気ガスやゴミ焼却などのため大気質が悪化します。2019年のPM2.5の年平均値は40.1。この時期は各自で大気質指標の情報を入手し、汚染が深刻なときは、マスク着用、うがいなどの健康対策、屋内待機、窓を締め必要に応じ目張りするなどの対策、空気清浄機などの使用を行ってください。ただ、この場合も、外気の大気質が良好になった場合には、窓の開放、換気扇の使用等により積極的に換気を行い室内のウイルス感染リスクを下げ、体調不良の原因となる二酸化炭素の濃度も下げることも忘れず、大気汚染が続いている場合も時間を区切った短時間の換気は考慮してください。
(5)有害動植物
毒蛇が多く、蛇咬傷にお気をつけください。また虫刺されによるアレルギー症状が報告されています。
(6)現地の人と生活すること
現地の人と衣食住を同じにすることは、先方に過剰な迷惑がかからなければ、文化や生活習慣を知り相互理解を深める目的として、素晴らしいことです。しかし、育った環境も違えば、肉体的にも宗教的にも違うなかで、とくに公衆衛生や医療分野においては我々日本人には考えの及ばない部分、容認できない部分が必ずあります。例えば、免疫力の差や環境への適性、モラルの違い、病気や医療に対する考え方の違いなど。情報をしっかり頭に入れ自分の限界とリスクを見極め、日本とは異なる当地の医療や交通、犯罪事情を理解し、個々に自信や体力の差はあっても無理をせず、充分な安全域を取って旅行・居住してください。
7 予防接種(ワクチン接種機関含む)
現地のワクチン接種医療機関等は、現在、保健省の地域住民向けの保健施設のみ確認されており、全くおすすめできません。次項の私立病院・クリニックでは、ワクチンの入手(購入)ができれば接種は可能ですが、外国人が購入できるワクチンの在庫は不安定であり、当地での予防接種は原則避けて入国前に接種してください。
(1)赴任者に必要な予防接種
- 成人:黄熱、A型肝炎、腸チフス、狂犬病、破傷風、髄膜炎菌性髄膜炎、B型肝炎
- 小児:上記に加え、日本で実施されている定期、任意の予防接種
(2)現地の小児定期予防接種の一覧
ワクチン | 初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 | 6回目 |
---|---|---|---|---|---|---|
BCG | 出生時 | |||||
ポリオ(経口生)OPV | 出生時 | 6週 | 10週 | 14週 | ||
ポリオ(注射)IPV | 14週 | |||||
5種混合(注1) | 6週 | 10週 | 14週 | |||
Td(注2) | 6か月 | 12か月 | ||||
ロタウイルス(1価) | 6週 | 10週 | ||||
肺炎球菌(13価) | 2か月 | 3か月 | 4か月 | |||
麻疹 | 9か月 | 15か月 | ||||
黄熱 | 9か月 | |||||
髄膜炎菌性髄膜炎 | 9か月 |
- (注1)ジフテリア、破傷風、百日咳(全細胞性)、インフルエンザ桿菌b型、B型肝炎
- (注2)破傷風、ジフテリア、接種時期、回数が日本と異なり、接種計画を立てる際、注意が必要です。
(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明
予防接種証明が要求される場合には、大使館で接種歴を翻訳し、証明します(有料)。
8 病気になった場合(医療機関等)
(首都)ビサウ
- (1)Clinica Madrugada
- 住所:Antula_Bono, Bissau
Google マップで確認する - 電話:955-120-537
- E-mail:clinicamadrugada@gmail.com
- 診療時間:月曜日から金曜8時から16時、土曜日・日曜日8時から13時、救急24時間対応。
- 概要:当地での傷病時の第一選択。イタリアのキリスト教系NGO「マドゥルガーダ生協」運営の私立病院。2004年設立。外傷、救急、内科、心臓内科、外科、産婦人科、整形外科、眼科など最大80床。通常20から50床。X線、超音波、人工透析可能。国内唯一稼働のCT(GE brightspeed16、2005年)。2016年竣工の手術室では、イタリアなどから短期応援の外科系医師が集中して手術を行うことがあるため、混雑している。医師は8人(キューバ、イタリア、スペイン、ポルトガル)。一部のスタッフと医師に英語が通じるも、ポルトガル語、スペイン語での意思疎通が必要。
- (2)ConsulMed HFW
- 住所:Antula,(通りをClinic Madrugadaに入る角)
Google マップで確認する - 電話:956-601-916、95-584-96-14(WhatsApp)
- Email:hfw.consultorio@gmail.com
- Web:ConsulMed HFW(Facebook)(ポルトガル語)
- 診療時間:月曜日から金曜日8時から19時30分、土曜日・日曜日8時30分から14時
- 概要:2022年Hospital Nacional Simão Mendesのシニア心臓内科医が開設。内科、小児科が中心。血液生化学一般検査、マラリア、デング熱等の検査、マラリア治療薬(静注、経口)等。必要に応じてHospital Nacional Simão Mendesで検査、治療。スタッフの対応がよく、比較的清潔で、重症時以外の利用を推奨。
- (3)São José Pediatric HospitalL in Bôr
- 住所:Biombo Region, Prabis Sector, Bôr Neighborhood, CP: apartado 20, 1001 Bissau
Google マップで確認する - 電話:966-321-958、956-800-003
- Web:São José Pediatric HospitalL in Bôr(ポルトガル語)
- 診療時間:月曜日から金曜日8時から14時、救急24時間対応。
- 概要:イタリア系カトリック教会神父が設立した財団の運営で2010年設立。小児科、小児外科、小児歯科、産科、内科。54床(小児46、大人8)、手術室1、往診可能。医師12人(イタリア、スペイン、キューバなど)別途開業。マラリア、下痢、感染症(寄生虫含む)、水頭症。外傷は難しい。受診料2000F(他の病院は10000F)、0から5歳は無料。イタリア、スペイン、ポルトガル、ブラジル、WHO、UNICEFなどからサポートを受けているため。英語は医師のみで最低限の会話。外国人の利用は少ないが、マラリアなど小児急病時は利用可能。
- (4)Clínica Associacao Céu e Terra
- 住所:Hala Hotel & Aqua Parkから北北東に150m(Igreja Pentecostal Unida De Africaの向側)
Google マップで確認する - 電話:955-80-4320、955-80-4321
- E-mail:pslsgb@gmail.com
- 診療時間:月曜日から金曜日8時から16時、救急対応なし
- 概要:2001年設立の内科系私立無床診療所。内科、小児科、産婦人科(産科健診のみ)。医師5(専任は2)名。HIV、MalariaはGlobal fundsの援助があり無料で診療しているため患者は多い。受診料20,000FCFA。軽症の受診に。Bissauの貧困地域にあるため犯罪被害に注意。
- (5)Hospital Militar Principal
- 住所:Avenida dos Combatentes da Liberdade da Pátria
Google マップで確認する - 電話:955-30-2330、966-50-0000
- 診療時間:月曜日から金曜日8時から18時、土曜日8時30分から12時30分、救急24時間対応。
- 概要:軍中央病院。200床。救急、内科、産科、小児科、感染症学、整形外科など。医師は出身別にキューバ10、中国12、コートジボワール6、ギニアビサウ6名。超音波検査など一部でポルトガルとの遠隔医療を実施。現在の施設は2011年中国の支援で建設され、専門医も中国人医師が多い。
- (6)Hospital Nacional Simão Mendes
- 住所:AvenidaPansau Na Isna
Google マップで確認する - 電話:955-34-8876
- 診療時間:月曜日から金曜日8時から18時、土曜日8時30分から12時30分、救急24時間対応。
- 概要:300年以上の歴史のあるギニアビサウ最大の国立中央病院。500床以上。内科、外科、産婦人科、小児科、救急を始め20を超える科。手術室、ICU、人工透析など。施設は老朽化しているものの周囲の病院から重症患者が搬送される。
9 その他の詳細情報入手先
10 一口メモ
「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時のポルトガル語)を御覧ください。