世界の医療事情

エチオピア

平成30年10月

1 国名・都市名(国際電話番号)

 エチオピア連邦民主共和国(アディスアベバ)(国際電話国番号251)

2 公館の住所・電話番号

在エチオピア日本国大使館 (毎週土日休館)
住所:Bole Sub-city Woreda 6.House No.431 P.O.Box:5650 Addis Ababa, Ethiopia
電話:251-11-667-1166
ホームページ:https://www.et.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html別ウィンドウで開く

(注)土日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので,ご覧ください。

4 衛生・医療事情一般

 エチオピアは北緯3度から15度,東経33度から48度に位置し,北はエリトリア,東はジブチ,ソマリア,南はケニア,西はスーダン,南スーダンに囲まれた内陸国で,総面積は日本の国土面積の約3倍です。

 気候は小雨季(2月~5月),大雨季(6月~9月),乾季(10 月~1月)に分かれます。気温は,標高約2,400メートルの首都アディスアベバでは,年間を通し最高気温25℃前後,最低気温15℃前後であり,冷涼な気候です。。また,標高1500メートルまでは平均気温27℃から50℃と極めて暑くなる地域があります。エチオピアの平均余命は男性62歳/女性65歳であり,日本と比較し短く,母子健康政策を展開していますが,乳幼児死亡率は今のところ公開されていません。また,死因も下部呼吸器感染症(15%),HIV/AIDS(7.3%),下痢疾患(6%),新生児敗血症(2.3%),結核(2.3%),髄膜炎(2.2%)と感染症が占めていることから,衛生管理状況が非常に厳しいことが推察できます。また,この状況下にありながら,感染症コントロールを行ったり,健康に関する市民啓発を行ったりする保健所機能がアディスアベバ市内においてもあまり発達していません。課題は安全な水の確保と衛生的なトイレの設立ですが,市内の小学校のトイレのほとんどが不衛生であり,手洗いをできる水道設備が完備されていないため,トイレ後の手洗いの習慣確立が困難です。以上の状況から,消化管感染症の暴露の危険性が市内においても高く,感染症コントロールの教育が高級ホテル及び高級レストランでも不徹底である可能性もあり,高級ホテル・レストランでも食中毒の報告が絶えません。また市内大学医学部においても,細菌検査診断能力に限界があり,細菌検出確定は難しい状況です。

 また,エチオピアでは下水道が完備はされていないため,雨期には下水が道に溢れ,悪臭がすることがあります。また汚水が上水道管に浸透している可能性があるため,保健省より市民に上水道使用時は煮沸あるいは塩素系のタブレットを使用するように周知されることがありますが,外国人に対しては行われておりません。したがって,水道水の直接飲料は不適であり,浄水器の利用,調理・飲用には,市販のミネラル・ウオーター使用を推奨しています。

 エチオピアでは,マラリア,住血吸虫,結核,HIV/AIDS,髄膜炎菌髄膜炎,A型肝炎,B型肝炎,破傷風,狂犬病,コレラ,腸チフス等のの感染症発生が報告されており,また死因の約60%を感染症が占めています。首都アディスアベバは富士山6合目と同等の標高約2,400メートルに位置しています。邦人の高山病症状が頻繁に認めらています。また,アディスアベバ市は盆地であり,人口の集中化とともに車両の増加が顕著であり,車齢20年を超える車両が多いこともあり,排気ガス等による大気汚染が進行しています。昨年度の保健省の報告によれば,市内で80万人以上の大気汚染による患者が発生しています。一方,排気ガスの規制は行われていないため,PM2.5も発生しており,アラート値85マイクログラム毎立方メートルを超過している日が乾期では観察されます。また,低湿度でもあり,眼,咽頭,上気道,気管支,副鼻腔などの障害を起こしやすくなっています。さらに,強い紫外線のため日焼けしやすく,ステロイド治療を要する重症の日焼けが時に認められます。

 ダニ・ノミ・南京虫の咬症によって起こる痒疹の被害が多発しています。患者の中にはアレルギー反応を引き起こすこともあり注意が必要です。

 また,市内では首締め強盗によるけがも発生しているので,危険な地域での独歩には注意が必要です。

 エチオピアでは人口17,000人あたりに医師が一人であり,医師不足の状況です。411の公立医療機関には,5,540名の医師しか配置されていません。また,公立病院は医療設備も乏しく,標準予防策はとられていません。したがって,邦人の入院治療には適しません。また,私立病院は応急的な入院加療には適しますが,大手術を要する疾患あるいは重症疾患(脳卒中あるいは循環器系疾患等)の入院加療には不適です。歯科も国外でも治療をお勧めします。よって,当地に来られる場合は緊急搬送を含めた海外旅行傷害保険の加入は必須と言えます。

5 かかり易い病気・怪我

(1)感染性胃腸炎

原因

 細菌,ウイルス,寄生虫が本疾患の起因病原体となりうる。細菌性のものでは腸炎ビブリオ,病原性大腸菌,サルモネラ,カンピロバクター,ウイルス性のものでは小型球形ウイルス,ロタウイルス,腸管アデノウイルスが見られます。寄生虫では赤痢アメーバ,ランブル鞭毛虫である。感染経路は感染患者からの糞口感染,汚染された食べ物や水から経口的に感染します。

症状

 主に発熱,下痢,悪心,嘔吐,腹痛などが見られます。

診断

 病原体診断は治療,治療・感染拡大防止の行う上で重要であり,患者の糞便より細菌培養,ウイルス分離など各種検出検査は必要でありますが,エチオピアのほとんどの医療機関が検査設備を備えていないため病原体の検出は極めて困難です。当地の米国大使館では病原体診断が行われており,エチオピア国内での感染性胃腸炎の原因として,多くは病原性大腸菌,カンピロバクター,クリプトスポリジウム,ノロウイルス等が検出されています。また当地ではアメーバ赤痢(Amoebic Dysentery)とランブル鞭毛虫症(ジアルジア,Giardiasis)は,珍しくありません。

予防

 手洗いを励行し,特に調理者の手洗いが重要です。食品は必ず加熱し,調理後時間が経ったものは食べないでください。エチオピア人は生肉や内臓を食べる習慣がありますが,邦人は生肉あるいは生卵を食べないようしてください。

エチオピア人の肉食習慣

食習慣
○有り×無し
牛肉
Beef
山羊肉
Goat
羊肉
Sheep

Pork

Fish
鶏肉
Chicken
鶏卵
Egg
生のまま食べる × × × × ×
加熱して食べる

(注)Ktfoクトフォー:現地語で牛や山羊の生肉を指し,結婚式や接客の際は最高のご馳走となります。

 飲み水には,生水を避け,ミネラル・ウォーターや水道水をフィルターに通したものを使用してください。ミネラル・ウォーターを買ったとき,蓋の栓がしっかり閉まっていることを確認した上で使用してください。飲食店のコップや食器についた水や氷なども危険です。飲み物は氷抜きで注文してください。

 断水対策のための水タンクを備えている場合は,定期的にタンク内を清掃してください。

治療

 ウイルス性のものは軽症で,かつ,短期間で自然軽快がすることが多いです。通常,発熱・重症な脱水などの全身症状を伴わない場合は,整腸剤の内服とともに,スポーツ飲料などで脱水症状に対応することで軽い症状ですむこともあります。下痢は,悪いものを排出するという生体の防御反応でもありますから,むやみに下痢止めを使用することは勧められません。しかし,当地は上述したように病原体検出が困難地域でもあるので,頻回(10回以上)の下痢で,38℃以上の発熱,しぶり腹,血便を伴う場合は,抗菌剤の内服を検討する必要があります。また耐性菌もあり薬剤選択には慎重を要します。

 下痢による脱水症状には,水分と電解質の補給が重要で,場合によっては点滴も必要となりますので,医療機関で必ず診察を受けてください。また,抗菌剤で軽快しない原因不明の下痢症の場合,寄生虫による胃腸炎である可能性があるので,抗寄生虫薬を検討する必要があります。アメーバ赤痢では,イチゴゼリー様の粘血便など激しい症状がみられることもあり,慢性に経過することもあります。赤痢アメーバもランブル鞭毛虫も糞便を顕微鏡下で診断することができます。しかし,当地ではこの検査ができる医療機関は限られています。経口補水液や粉末のスポーツ飲料などを日本などから持参することをお勧めします。

(注)急性水様性下痢症(Acute Watery Diarrhea (AWD)): エチオピアではコレラ菌による水様性下痢症状を示した患者を急性水様性下痢症状と称しています。原因は汚染された水を飲むことで感染しています。2018年26週目(7月中旬)までのWHOの報告によるとAWDの78%がアファール州で発生しています。

(2)腸管寄生虫症

 当地では回虫症,鉤虫症,鞭虫症などの腸管寄生虫症の発生が報告されています。感染能力を有する中卵や幼虫に汚染された不衛生な食べ物を食べることで感染します。また,当地では生肉を食べる習慣があるので無鈎条虫症,一般にサナダ虫と呼ばれている腸管寄生虫症の報告が多くあります。幼虫が感染している生肉を食べることで腸管に感染します。

 虫は腸管の中で徐々に成長し数メートル以上の長さになることもありますが,症状はあまり強くなりません。便の中に「ユラユラ動く」体節が排出されたら,間違いなく感染しています。病院を受診し,駆虫してもらうことが必要です。帰国後の検診などで,感染を指摘されることもあります。予防は生肉を食べないことです。

(3)高山病

 高い山に登ると頭痛などの症状が現れるのが「急性高山病」で,一般に高山病と呼ばれています。高度2,500メートルで25%の人に現れるといわれています。高度が上昇すると大気中の酸素が少なくなり,低酸素状態になります。低酸素状態による脳血流の増加におそらく関連する軽度のの脳浮腫が発生機序に関与されると思われています。首都アディスアベバは,標高2,400メートルの高地にあるため,高山病を発症する可能性があります。特に50歳以上,高血圧,糖尿病,冠動脈疾患および肺疾患などを有する方は十分注意をする必要があります。また,体力があることは高山病の予防にはなりません。

症状

 頭痛,食欲不振,吐き気,嘔吐などの消化器症状,疲労,脱力感,めまい,ふらついき,睡眠障害などが主な症状です。高度順化のために持続的な過換気が起こることも特徴的です。

予防

 睡眠・休養を十分とるようにしてください。数日間は過激な運動は避けて下ください。水分を十分に摂ることは重要ですが,アルコール避けてください。歩きづらい,意識障害,呼吸困難,咳・頻脈,頻呼吸などの症状がある場合には,早急に医師の診察を受けてください。

治療

 軽度なら安静にして休むのが対処の基本です。水分補給・頭痛に対しては鎮痛薬(アスピリン・アアセトアミノフェンなどの非ステロイド系)及び場合によってはアセタゾラミドで治療します。

(4)マラリア(Malaria

 エチオピアの首都であるアジスアベバは標高約2,400メートルの高地に位置することから,マラリアに感染する危険性がほとんどない地域ですが,標高2,000メートル以下の地域はマラリアの感染流行地域であり,それは国土の75%に及んでいます。また人口の60%がマラリア感染の危険に面しています。2016年の国内のマラリア患者発生数は1,718,504人であり,510人の死亡者数が報告されています。また,当地のマラリアの66%が重症化する熱帯熱マラリアであり,34%が三日熱マラリアです。季節性があり雨季が終わる9月~12月が蚊が多く発生し流行します。

原因

 マラリアは,ヒトがメスのハマダラカに刺される際にマラリア原虫がヒトの血中にはいることで感染します。

症状

 主な症状は発熱や頭痛,筋肉痛,嘔吐,下痢などの症状です。重症マラリアに移行すると意識障害やけいれん,腎不全,血尿,呼吸不全,黄疸,ショックなどを呈し,死亡する場合があります。マラリアの潜伏期間は11~21日間です。

予防

 予防ワクチンはありません。長袖・長ズボン,虫除け・殺虫剤・蚊取り線香,蚊帳の使用,蚊が活動する夕方以降は出歩かないなどの防蚊対策が最も重要です。

診断と治療

 マラリアの診断の基本は血液塗抹標本の検鏡ですが,熟練を要します。当地のマラリア流行地域の医療機関のレベルは高くなく,マラリア診断にはMalaria RDT(Rapid Diagnositc Test)が使用されています。当地は重症マラリアを引き起こす熱帯熱マラリアの流行地ですので,診断後の迅速な治療開始は重要です。当地の熱帯熱マラリアに対する治療はアーテミシニン誘導体を含むアーテメター・ルメファントリン配合剤が主に使用されています。流行地から戻って発熱した場合には,必ず医療機関で検査してもらいましょう。標高2,000メートル以下の高度流行地域であるにもかかわらず,適切な医療機関の無い地域に7日間以上滞在する方は,抗マラリア薬の予防内服,又は,治療薬を持参しておき,マラリアを疑う症状があれば服用する待機治療などの対策が必要です。全ての抗マラリア薬には,多少の副作用があります。エチオピアに来られる前に,日本又はヨーロッパ等で専門医に相談した上で,薬を処方してもらい,用法・用量について十分に説明を受け,注意をして服用することが重要です。日本に帰国後に発病した場合は,必ず医師にマラリアの流行地に行ったことを伝えてください。

(5)住血吸虫症

 エチオピアでは標高1,300メートル~2,000メートルの地域に腸管住血吸虫症に属するマンソン住血吸虫症,標高800メートル以下の地域に尿路住血吸虫症に属するビルハルツ住血吸虫の流行が報告されています。住血吸虫の有病率が11%と高く,当地は住血吸虫の流行地です。エチオピアの多くの湖沼や川は,淡水生息の貝に寄生する住血吸虫に汚染されています。

原因

 水辺などで,汚染された水に接触することにより,貝から出てきた感染型幼虫が,ヒトの皮膚を貫通して血液へ侵入し感染します。

症状

 マンソン住血吸虫症の場合,淡水暴露後2~8週間経過してから,発熱,悪寒,筋痛,関節痛,咳嗽,下痢,頭痛,肝脾腫などが生じます。慢性期になると腸管で繊維化やポリープ形成により腹痛,下痢,粘血便が見られます。ビルハルツ住血吸虫症の急性期は頻尿や血尿が見られます。慢性期になると膀胱壁の繊維化が進行し,尿管閉塞,腎不全等に進行します。予防:流行地では,湖沼や川に手足を入れず,汚染された淡水との接触を避けましょう。

診断と治療

 マンソン住血吸虫は便より,ビルハルツ住血吸虫の場合は尿より虫卵を検出して診断します。治療はプラジカンテルの単回投与によってほとんどが治癒します。

(6)結核

 エジプトのミイラから典型的な結核の痕跡が見つかるなど,結核は人類の歴史とともにある最も古い病気の一つです。エチオピアは結核高負担国22カ国の一つであり,耐性結核の高罹患率27カ国の一つです。2017年のエチオピアの結核罹患率は164人(人口10万対)であり,日本の罹患率13.3人(人口10万対)の約12倍です。また,国民の85%以上が潜在性結核(結核菌が体内にあっても発病していない感染状態)として推定されていて,潜在性結核の予防内服を行っている日本・欧米が行っている結核対策を行っておりません。当地では結核は誰でもかかる可能性がありますが,治療により治る病気です。

原因

 病原体は結核菌です。結核を発症している人が咳やくしゃみをした時に,結核菌を含んだ飛沫が周囲に飛び散り,その周りの水分が蒸発した状態(飛沫核)で空気中に漂い,それを吸い込むことによって感染します。

症状

 潜伏期は半年から2年。咳・痰・微熱などの症状が出現します。

予防

 当地ではマスクをする習慣がありませんので,人混みに行くときはマスクをして他の人から直接飛沫がかからないようにしましょう。

診断と治療

 診断は胸部X線写真と喀痰の細菌培養による結核菌の検出です。当地では培養技術の熟練度が低い医療機関が多いため,迅速検査Xpertが使用されています。しかし,そのXpertを有する医療機関も多くはありません。X線による診断技術の格差も問題になっています。治療は抗結核薬の内服です。

(7)HIV/AIDS

 エチオピアのHIV感染者数は2017年に718,550人であり,日本が28,832人であることからその数は日本の25倍い及ぶ。有病率は1%を超えています。農村部に比較し,都市部の感染率が高く,首都アディスアベバの感染率は3.4%です。また,女性のセックスワーカーの感染率は23%と報告されています。感染者との性的接触,胎盤,産道を介しての母子感染,輸血,汚染された静脈注射などで感染します。感染初期の症状は,無自覚から発熱,咽頭痛,頭痛など様々です。当地では医療機関での2次感染の可能性もあるので注意をしてください。

(8)髄膜炎菌性髄膜炎

 髄膜炎菌性髄膜炎はセネガルから東はエチオピアにいたる髄膜炎ベルトと呼ばれる地域で流行しています。1996年に記録的な大流行がアフリカで起こり,250,000万人の感染者と25,000人の死亡者を出しています。エチオピアの大規模な大流行は1981年と1989年に起こっています。流行が起きた地域の罹患率は約1000人(人口10万)が最近の動向です。南部諸民族州,アムハラ州,オロミア州での報告がよくみられます。また,感染は乾期に起こりやすいと言われいます。原因:感染者のくしゃみなどによる飛沫感染により本菌が伝播し,気道を介して血中にはいり,さらには髄液まで浸入することにようい髄膜炎を起こします。

症状

 高熱や皮膚の出血斑,関節炎様症状が現れ,引き続き吐き気などの髄膜炎症状が起こり,重症の場合は頭痛,高熱,けいれん,意識障害を呈し,ショックに陥り死に至ります。

予防

 髄膜炎菌ワクチンを接種してきてください。また,手洗い,咳エチケット又は病気をしている人とは接触しないなどの通常の感染予防対策が重要です。

(注)咳エチケット 他人に感染させないために,個人が咳・くしゃみをする際に,マスクやテイッシュ・ハンカチ・袖を使って口や鼻をおさえることです。

治療

 抗生物質投与が治療の基本です。

(9)狂犬病

 米国疾患管理予防センターの報告によると,毎年何千人もの人が狂犬病に感染し,毎年約2700人の死亡者数を出していると推定されており,それは世界で最も高い数値を示しています。また,感染暴露後にワクチン接種による治療を受けることができた人が6,900人と報告されています。また,人用のワクチンが不足しており,その質にも課題があります。アディスアベバ市内にも多数の野良犬を目にします。市内を歩行するときは野良犬に気をつけてください。また,当地ではペットの狂犬病ワクチン接種の管理も不徹底であることから,飼い犬に咬まれた場合でも,飼い犬の狂犬病ワクチンの接種の可否の確認は必須です。2006年に36年ぶりに発生した邦人の狂犬病死亡例ですが,友人の飼い犬に咬まれたことが原因で感染しています。

治療

 犬のみならず当地で動物に咬まれたら,傷を流水で15分以上洗ってください。洗浄する場合もミネラルウオーターなどの清潔な水を利用することが肝心です。事前に予防接種を受けていない場合は,狂犬病ワクチン接種の他に,24時間以内にヒト抗狂犬病免疫グロブリン(HRIG)の咬傷部位への局所注射をすべてきです。ただし,HRIGはエチオピア国内にはなく,隣国ケニアの病院でHRIGを確保した上で,接種しなければなりません。また,事前に予防接種を受けている人も24時間以内に狂犬病ワクチン接種が必要です。日頃から外国製の狂犬病を確保している市内の病院の確認が必要です。

(10)ダニ・ノミ・南京虫などによる虫刺され

 ダニは比較的肌の柔らかいところを刺します。近い場所に数カ所にまとめて刺すことが多く,かゆみはひどく,1週間以上かゆみが続きます。ノミの場合,足のひざから下を複数刺されることが特徴的でかゆみも強く,水疱を形成することがあります。南京虫はベッドや家具の隙間に隠れていて,夜間に眠っているときに肌の露出した部分を刺し,移動しながら刺すため刺し傷が広範囲に及ぶことが特徴的です。また,赤く腫れて強いかゆみを伴います。上記,虫刺されが小児の起こった場合,かゆみのために搔破し,とびひを発症する例が多いです。

予防

 こまめな室内の掃除と噴霧式や燻煙式の殺虫剤による除虫です。忌避剤を使用してください。南京虫の場合は,専門の業者による除虫を勧めています。

治療

 初期の段階で比較的強いレベルのステロイド外用薬を使用します。

(11)腸チフス・発疹チフスなど

 発疹チフスはシラミによって媒介されるリケッチア症です。当地ではその診断にワイル・フェリックス反応が主に使用されていますが,感度・特異度が低い検査のため確定診断に至っているとは判断しかねます。通常,ドキシサイクリンが処方されています。また,腸チフスの診断は血液,糞便,胆汁,尿などの細菌培養が重要ですが,ほとんど医療機関で培養検査が行われないまま,腸チフスとし診断されるケースや,臨床症状も腸チフスと合わないまま腸チフスと診断されているケースが散見されており,当地での医療機関の診断能力の限界が認められます。

(12)交通事故

 信号のない交差点及び環状交差点が多く,道路の整備不良, 一般に交通マナーを守れない運転手が多いことから,交通事故が多発しています。交通事故による死亡者数増加と救急医療体制の不備がエチオピア保健省の喫緊の課題になっています。さらに,人や動物の飛び出しに注意が必要です。地方ではスピードを出す車も多く,馬車やロバ車,家畜(牛,山羊,ロバ)等も自動車専用道路を横断するため,特に注意が必要です。自分で運転することを自粛することをお勧めします。あえて自身で運転する際は,道路上の陥没している穴や運転技術の低い車両からのもらい事故,夜間には,飲酒運転やチャット(覚醒作用がある植物)影響下での運転する車両からのもらい事故にに注意しましょう。

 前座席のシートベルト着用は義務付けられていますが(未着用者には罰金が科されます),後部座席でも必ずシートベルトを装着してください。また,運転中の携帯電話の使用は禁止されています。

(13)その他

 デング熱はソマリ州での発生が報告されており,フィラリア症,リーシュマニア症などもあります。

6 健康上心がける事

(1)急変する気候

 2月~5月の小雨季,6月~9月の大雨季には,雨や雹,落雷などもあり,気温の寒暖差が大きくなります。咽頭炎,気管支炎なども出やすくなります。

 年間を通して,とても乾燥しているので,十分な水分の補給や,紫外線対策も必要です。

(2)健康管理

 当地では,成人病や癌などの検査が困難です。年一回は,日本での総合健康診断や人間ドックを受けることをお勧めします。バランスのとれたな食生活や,適度な運動を継続するよう,心がけましょう。

(3)医薬品の入手

 入手できる医薬品は限られています。インド製,中国製,アラブ首長国連邦製が多く,ほとんどがジェネリック薬品です。薬の品質及び輸送・保管状態も良いとはいえません。私立病院の薬局では欧米系の医薬品を手に入れることができます。

 マラリア汚染地域に行かれる方には,抗マラリア薬が必要です。当地薬局で購入できます。

 首都に滞在される方も,抗生物質(セフェム系,ニューキノロン系など),風邪薬,うがい薬,点眼薬,小児の熱発時の坐薬,整腸剤,ステロイド軟膏などを,日本の医療機関で相談の上,持参された方が良いでしょう。抗生物質などは自己判断での使用は危険ですから,医師から十分な説明を受ける必要があります。

(4)メンタルヘルス

 他のアフリカ諸国と比べると,一見,治安や気候は良いのですが,モノが手に入りにくい,食べ物が口に合わない,停電・断水などが多い,娯楽が少ないなど,決して生活しやすい環境とは言えません。エチオピア人は,信仰心が厚く,勤勉で真面目な人が多いのですが,時に頑固で衝突することもあります。狭い日本人社会の中での人間関係も,精神的な負担となる場合があります。

 ストレスを溜めないためには,家族や友人などと何でも話し合える良好な関係を築くことが大切です。長期間滞在される方は,定期的に休暇を取り,精神的にリフレッシュできるよう,意識的に心掛けてください。

(5)妊娠出産

 異常分娩への対応が十分とは言えませんので,日本での出産をお勧めします。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

(1)赴任者等に必要な予防接種

 赴任や旅行に当たっては,以下の予防接種が必要です。

  • 黄熱:必須,WHOイエロ-カード要 エチオピアでも黄熱病予防接種の証明書は生涯有効となりました。
  • A型肝炎:強くお勧め,3回接種必要
  • 破傷風:強くお勧め
  • 流行性髄膜炎(髄膜炎菌):お勧め
  • 狂犬病:強くお勧め
  • 腸チフス:お勧め
  • B型肝炎:強くお勧め,3回接種必要

 当地では,停電が頻回にあり,ワクチンの低温輸送路や保管に問題があるように思われます。ヨーロッパ製の品質の良いものは高額です。また,アフリカの周辺諸国のように,薬局でワクチンを購入する事はできないため,日本で予防接種を済ませてからエチオピアに来られることを勧奨します。

黄熱

 WHOの「International travel and health」では,感染地域からエチオピアに入国する1歳以上の旅行者に,黄熱予防接種証明書(イエローカード)が必要となっています。通常は,Bole空港でイエローカードの提示を求められることはありませんが,エチオピアから出国後,他国への入国時や,日本へ帰る場合の経由地で,求められることがあります。当地でも接種可能ですが,他の予防接種と同様,日本で受けて来られることをお勧めいたします。

乳幼児

 ヒブワクチン,小児用肺炎球菌ワクチン,4種混合ワクチン,BCG,MR(麻疹,風疹)B型肝炎ワクチン,水痘ワクチン,日本脳炎ワクチン等の定期予防接種はもちろんのこと,流行性耳下腺炎,狂犬病,A型肝炎・髄膜炎菌ワクチン等の,予防接種を,日本で接種を終えてからお子様を連れて来られる方が安全です。

(2)小児定期予防接種

当国の小児定期予防接種スケジュール

    初回 2回目 3回目 4回目~
BCG   出生時      
DTwP・Hib・HepB ジフテリア
破傷風トキソイド
インフルエンザ菌b型
B型肝炎
6週 10週 14週  
Measles 麻疹 9ヶ月      
OPV 経口ポリオ 出生時 6週 10週 14週
TT 破傷風トキソイド 妊娠中 1ヶ月 6ヶ月 1,2年後

(3)

 現地公立校に入学・入園する際に,予防接種証明の提出は求められていませんが,当地のインターナショナル校に入学する際には求められます。渡航前に,入学するにあたり接種が必要なワクチンを確認してください。

8 乳児検診

 当国には,同制度はありません。

9 病気になった場合(医療機関等)

 日本人が安心して利用できる医療機関や先進国と同様の医療は,当地では期待できません。以下に示す医療機関(全て私立)は,外国人医師や一部の専門医もいて,邦人も入院可能です。 重症の場合は,国外への緊急移送を常に考慮する必要があります。その場合,高額の移送費用が必要ですので,海外旅行傷害保険の加入は必須です。 アディスアベバ以外の地方都市では,さらに医療事情は悪く,体調を崩した時には,早急に首都に戻ることをお勧めします。

アディスアベバ市内

(1)Nordic Medical Centre(ノルデイック・メデイカルセンター)
所在地:TBole Sub City, Kebele 01,H.No-1244
電話:8901/0929 105653 携帯電話:0939 810618
概要:Norwayの慈善団体により開院。24時間コールセンター配備(8901)。施設は欧米レベル。ICU, 手術室を配備し2017年7月に新設オープン。外国人医師による血管外科,一般外科,総合診療科。CT撮影可。標準予防策も完備。邦人の入院施設として可。ドイツ製の高機能救急車2台配備。応急処置と入院可能。初診料も1850ブル(1ブル 約4円)高く,入院は4,300~5,800ブルと当地では高額ですが,2次感染予防の点においても安心して入院できる施設です。
ホームページ:http://www.nordicmedicalcentre.com別ウィンドウで開く
(2)Myungsung Christian Medical Center(MCM又はコリアン ホスピタル)
所在地:Bole Sub City Woreda 14
電話:011-629-5420-28 救急室:011-629-4602
概要:韓国のミッション系の総合病院。検査室,CT,MRIは配備されている。救急は24時間対応だが,午後5時以降から早朝まではBlack Lion Hospitalのレジデントが担当していることが多い。整形外科は韓国人の医師。外国人医師の滞在は短期間で,長く滞在する医師は少ない。
ホームページ:http://www.mcmet.org/別ウィンドウで開く
(3)Suisse Clinic
所在地:Kirkos Sub City Woreda 04 H.No-841
電話:0 11-416-1649, 携帯電話 0921787120
概要:小児科・一般内科
ホームページ:http://www.suisseclinic.com別ウィンドウで開く
(4)Kadisco General Hospital(カディスコ ホスピタル)
所在地:Bole Sub City Woreda 11
電話:(011)629-8902,3,4
概要:総合病院。救急は24時間対応。皮膚科の診断と治療は米国レベル。

10 その他の詳細情報入手先

(1)在エチオピア日本国大使館:https://www.et.emb-japan.go.jp別ウィンドウで開く

(2)世界保健機構(WHO):http://www.who.int/countries/eth/en/別ウィンドウで開く

(3)厚生労働省検疫所 感染症情報:http://www.forth.go.jp/destinations/別ウィンドウで開く

(4)国立感染症研究所 感染症疫学センター:http://www.nind.go.jp/niid/ja/from-idsc.html/別ウィンドウで開く

(5)エチオピア保健省:http://www.moh.gov.et/別ウィンドウで開く

11 現地語・一口メモ

アムハラ語

 エチオピアの公用語はアムハラ語です。独特の文字があります。地方ではオロモ語,ティグリニア語など,独自の民族語を話す部族がいます。医療機関では,ほとんどの医師は英語を話しますが,一般の人には英語が通じないことが多く,緊急の場合に備え,簡単なアムハラ語は知っておいた方が良いでしょう。

  • 「医師」 ハキム
  • 「薬」 メダハニトゥ
  • 「注射」 マルフェ
  • 「病院へ連れて行って欲しい。」 ハキム ベートゥ メヘドゥ イファリガロゥ
  • 「救急車を呼んでください。」 ウバックォ アムビュランスヌン タラ
  • 「気分が悪いです。」 トゥル スメット アイサッマンニム
  • 「・・・が痛い。」 ・・・アンモンニャル
  • 「頭が痛い。」 ラセ アンモンニャル
  • 「胸が痛い。」 ダラテ アンモンニャル
  • 「腹が痛い。」 ホゥデ アンモンニャル
  • 「熱があります。」 トゥックサート アッレニ
  • 「風邪をひきました。」 グンファン イゾンニャル
  • 「咳がでます。」サアル アッレニ
  • 「下痢をしています。」 タカマトゥ イゾンニャル
  • 「吐気があります。」 ヤコレ シャッレ シャル
  • 「けがをしました。」 コスル アッレニ
  • 「新しい針ですか?」 アッディス マルフェ ノウ?
  • 「輸血はしないでください。」リガサ アロファリグム
  • 「英語を話せる人はいますか?」イングリゼンニャ ミチル ソウ アッレ?

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