世界の医療事情
カメルーン
1 国名・都市名(国際電話番号)
カメルーン共和国(国際電話番号237)
2 公館の住所・電話番号
- 在カメルーン日本国大使館(毎週土曜日、日曜日休館)
- 住所:Ambassade du Japon au Cameroun, 1513, Rue 1828, Bastos-Ekoudou, Yaoundé, Cameroun B.P. 6868
- 電話:222-20-62-02
- ホームページ:在カメルーン日本国大使館
(注)土曜日、日曜日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので、ご覧ください。
4 衛生・医療事情
- 首都ヤウンデは標高850mの丘陵地帯に位置しており、平均気温は年間を通じて24から25℃と過ごしやすい気候です。ただし朝夕は20℃以下に冷え込むこともあるため、体調を崩さないよう服装・寝具は日本の初秋の感覚で準備することが必要です。年間降水量は約1,500mm、湿度80%台の日々が続きます。商業都市ドゥアラは港湾都市で雨量も多く(年間降水量約4,000mm)、高温多湿です。
- 首都ヤウンデを含む全土に悪性の熱帯熱マラリアが蔓延しており、防蚊対策や予防薬の服用について検討が必要です。その他風土病として腸チフス、アメーバ赤痢、コレラ、髄膜炎菌性髄膜炎、狂犬病及び住血吸虫症などが存在します。
- 国内の医療水準は劣悪で、国民の平均寿命は62歳と短命です。日本人が安心して利用可能な医療機関はほとんどなく、虫垂炎等の簡単な手術ですら死亡例が散見されます。重症例はフランスのパリ等国外への緊急医療輸送をおこなうことになりますが、この場合2,000万円以上の費用が想定されるため、あらかじめこの費用をカバーできる十分な額の海外旅行傷害保険に加入しておくことを強くお勧めします。
- 都市部では薬局が数多く存在し、ヨーロッパ製の薬剤が比較的容易に入手可能です。休祭日も輪番制で開店しています。
- 各種予防接種はヤウンデのパスツールセンター等で受けることもできますが、ワクチンの在庫が限られていて在庫がないこともあるため、できるだけ当地を訪問する前に接種しておくことをお勧めします。黄熱の予防接種については入国時に有効なイエローカードの提示が必要なため、入国の10日前までに済ませておくことが必要です。
5 かかり易い病気・怪我
(1)マラリア
当地での健康管理上、特に注意したいのがマラリアです。当地では95%が悪性の熱帯熱マラリアであり、発症後5日目までに治療が開始されないと50%の確率で死亡するといわれています。40℃前後の持続性高熱、頭痛、関節痛、消化器症状、貧血を特徴とします。予防は、蚊に刺されないようにすることが重要です。マラリア原虫は雌のハマダラカ(蚊)の吸血によって媒介されますが、この蚊が活動するのは日没から夜明けまでなので、夜間の外出時には長袖の服を着る、昆虫忌避剤(DEET、30%前後含有のもの)をスプレーする、寝る時は蚊帳や蚊取り線香を使用するなどに心がけましょう。予防内服に関しては滞在地、滞在期間を考慮して検討することが必要です。特に西部の沿岸地域、森林地帯に滞在予定の場合は服用をお勧めします。最近マラリア原虫はクロロキン薬剤抵抗性を示しています。当地ではマラロン、コアルテムが入手可能です。
(2)経口感染症
外食時にはできるだけ清潔なところを選んでください。購入した食材はきれいな水で洗い流して調理してください。果物類はしっかり皮をむき、生野菜はできるだけ避け、加熱されたものを食べるようにしてください。特に生魚、十分加熱されていない肉、生卵などは生命に係わる疾患に罹患する恐れもありますので、口にしないようにしてください。
(3)腸チフス・パラチフス
症状は人によって様々ですが、1から2週間の潜伏期間ののち熱が階段状に上昇し高熱が続きます。全身倦怠から意欲のない顔貌になるのと熱の割に脈が速くならないのが特徴です。腸チフスのみワクチンがあります。当地のパスツールセンターでワクチンが接種可能です。
(4)A型肝炎
水や食物から感染し、感染後2から4週間ほどで嘔吐や全身倦怠を伴う38度をこえる急激な発熱を生じ、その2から3日後には黄疸が明らかになり尿は濃い琥珀色になります。普通は1から2か月の休養で回復し、肝機能も正常化します。子供の頃に罹ればごく軽くてすむこともありますが、成人では症状は重くなることもあります(劇症肝炎)。予防接種をお勧めしますが、日本製のワクチンと欧米で標準的に使われているワクチンとでは接種方法と有効な期間が異なるため、接種時には注意が必要です。
(5)アメーバ赤痢
病原体は、赤痢アメーバという原虫です。アメーバシストは人の糞便中に排出され、汚染された生の野菜や果物、人の手指や水から感染します。また性行為感染症として同性愛者に広がっていることが現在問題になっています。潜伏期間はだいたい7から21日ですが、数週間、時には数年のこともあります。初期の症状は下痢と腹部の不快感がある程度ですが、放っておくと便に血液が混ざり、テネスムスという排便しても便意が繰り返し残る症状を生じます。放置すると腸に潰瘍をつくり穴があいて腹膜炎をおこしたり、肝臓など他臓器に感染病巣を形成したりすることがあり、治療が難しくなります。治療にはメトロニダゾールを使います。
(6)細菌性赤痢
小腸と大腸の両方をおかす急性の細菌性の病気で、これも糞便で汚染された食物や水から感染します。感染力は強く、数十個から数百個のわずかな菌が体内に入っただけで発病するため集団発生の危険があります。潜伏期間は1から3日、下痢、発熱、吐き気とともに、典型的なものではアメーバ性赤痢と同様に、粘血便とテネスムスを生じます。治療は適切な抗生物質で行う必要があります。
(7)コレラ
潜伏期間は数時間から3日、激しい水様性下痢を生じ、急速にひどい脱水状態となって衰弱し、死に至ることもあります。罹患した場合は迅速に大量に水分補給をおこなわなくてはいけません。体重の1割、すなわち50kgの人なら5から6リットルを3から5時間で補う必要があります。軽症の場合は経口補水液(ORS)での治療が可能ですが、重症の場合は大量の点滴による治療が必要です。予防のためのワクチンがあり、当地ではパスツール研究所で接種可能です。
(8)上気道炎
当地の気候は予想外に涼しいものです。特に持病にアレルギー性鼻炎、喘息、慢性副鼻腔炎などの既往のある人、喫煙者は注意が必要です。気候にあった衣類・寝具にて体温調節を行い、手洗い・うがいも心がけてください。
(9)髄膜炎菌性髄膜炎
アフリカ中央部には髄膜炎ベルトとよばれる最大の流行地帯がありカメルーン北部がこれに含まれます。首都ヤウンデはこの地帯よりは南に位置しますが、近年小規模な流行が発生しています。髄膜炎菌性髄膜炎は髄膜炎菌による細菌性髄膜炎の一種ですが、感染しやすく重症化しやすい危険な疾患です。ワクチンにより予防できる疾患ですので、接種を強くお勧めします。予防接種は2歳から接種可能で日本でも接種できます。4種の型(A、C、Y、W-135)に対応できる4価ワクチンを接種して下さい。
(10)ロアロア(マンゴフライ)
マンゴフライとよばれるアブに刺されることで感染します。このアブが持つミクロフィラリアが皮下組織内を活発に移動し成長して4から6cmぐらいの成虫となり皮下や眼球結膜に痛み、かゆみ、むくみを生じます。治療は外科的に虫体を取り除き、ジエチルカルバマジンという駆虫剤を内服することが最も確実です。
(11)オンコセルカ症
ブユが刺入した皮膚の傷口からミクロフィラリアが体内に侵入して成長し、成虫が皮下に寄生してクルミ大のこぶをつくります。皮膚にかゆみや色素異常、異常な肥厚や萎縮を生じることもあります。眼球内部にミクロフィラリアが移動すると視力の低下から失明にいたることもあるため、河川盲(リバー・ブラインドネス)ともよばれています。治療には、イベルメクチンを用います。
(12)砂ノミ症
砂ノミは高温乾燥の環境を好みます。家畜の糞の散っているほこりっぽい道を歩いたときに、受精した雌が人に付き、皮膚の中に入り込みます。局所はひどくかゆく、かくと化膿しくずれて潰瘍になります。刺激がおこる前に切開しノミを取り出す必要があります。危険地では毎日足を注意して調べてください。砂ノミのいる地帯では靴をはき、昆虫忌避薬をつけてノミを防ぎます。
(13)黄熱
カメルーンへは黄熱予防接種証明書(イエローカード)がないと入国できません。ワクチンは1回接種で生涯有効です。予防効果はほぼ100%で、接種を受けた邦人が罹ることはまずありませんが、現地では時々患者が発生しています。ネッタイシマカ(蚊)によって媒介され、3から6日の潜伏期の後突然39度台の発熱や頭痛を生じます。
(14)ポリオ
ポリオウイルスに感染した人の便を介して感染し、手足の麻痺を起こすことがあります。乳幼児には忘れずに接種させるようにして下さい。
6 健康上心がけること
(1)飲料水
濾水器を通した水を煮沸滅菌するか市販のミネラルウォーターを使用しましょう。水道水は濁っており、細菌、寄生虫、ウイルスで汚染されている可能性があります。外食時にはボトル入りのミネラルウォーター、ガス入り飲料水を注文してください。必ず封が切られていないことを確認してください。また、レストランの氷は水道水から作られていることも多いため、氷の使用は避けてください。
(2)予防接種
可能な限り接種しておきましょう。
(3)下痢・食中毒
食事前の手洗いを行い、生水・生ものは避けましょう。
(4)防虫対策
忌避剤、殺虫剤などを各種揃えましょう。
(5)大気汚染対策
車の増加に伴い、特に都市部で大気汚染が悪化傾向にあります。また、12月から3月ごろの乾期にはハルマッタンと呼ばれる砂塵で大気の状態が悪くなることもあり、呼吸器系に持病がある人はマスク着用や空気清浄機使用等が必要になることもあります。
7 予防接種(ワクチン接種機関含む)
(1)赴任者に必要な予防接種
ア A型肝炎
2歳以上の子供と抗体をもっていないすべての大人にお勧めします。日本のワクチンの場合、2から4週間間隔で2回接種し、初回接種の6か月後に追加接種することで3から5年有効です。欧米で主に使用されているワクチンの場合は初回と6から12か月後の2回接種で、有効期間は10年以上といわれています。
イ B型肝炎
2016年10月から日本の定期接種となっています。B型肝炎の罹患歴がなく、予防接種歴もない方が安定した免疫を得るためにはA型肝炎ワクチンと同じく3回の接種が必要です。
ウ 髄膜炎菌性髄膜炎
アフリカ中央部には髄膜炎ベルトとよばれる最大の流行地帯がありカメルーン北部がこれに含まれます。予防接種は2歳から接種可能で、1回の接種で3から5年間有効です。当国を訪問される方は必ずA、C、Y、W-135の4つの型を含む4価ワクチンを接種して下さい。
エ 狂犬病
噛まれたらすぐに接種すればよいという考えもあります。しかし、発病したらほぼ100%死亡すること、事前に接種していた方が効果が高いことなどから、予防的に接種することを勧めます。
オ 腸チフス
当地では、注射によるワクチンが使用されています。1回の注射で約3年間有効です。予防接種は2歳から接種可能です。
カ 破傷風
3種または4種混合(DPTまたはDPT-IPV)として乳児期に定期接種を受けていると思いますが、本来10年ごとの追加接種が必要です。農業などに従事する場合は免疫をつけておくことをお勧めします。
キ 黄熱
入国に際し必要です。黄熱予防接種証明書(イエローカード)は接種後10日目から有効となるので入国の10日前までには接種する必要がありますが、これまでに一度でも接種を受け、その証明書を所持していれば生涯有効です。生後9か月から接種可能です。妊娠中の女性や免疫機能の低下している方には勧められませんので、接種に関しては医師にご相談下さい。
ク 麻疹、風疹、おたふく風邪(ムンプス)
これらのワクチンが当国では小児の定期接種として接種されていないか不十分なため、これらの患者が当国内に発生していると推定されます。当地で感染して発症するだけでなく、帰国後に発症して日本で感染を広げるおそれもありますので、自分の予防接種歴を確認し、必要ならば追加のワクチンを接種しておくことをお勧めします。
(2)現地の小児定期予防接種一覧
1回目 | 2回目 | 3回目 | |
---|---|---|---|
BCG | 出生時 | ||
DPTP+HepB、Hib、肺炎球菌 | 6週 | 10週 | 14週 |
黄熱 | 9か月 | ||
麻疹(はしか) | 9か月のみ | ||
おたふく風邪 | 実施されていません | ||
風疹 | 実施されていません | ||
ロタウイルス | 6週 | 10週 |
- DPTP+HepB=ジフテリア+百日咳+破傷風+ポリオ+B型肝炎の5種混合です。MR(麻疹+風疹)やMMR(麻疹+風疹+おたふく風邪)の2種または3種混合は実施されていません。日本とはかなり違うので注意してください。
- 公的な乳児健診は当地では行われていません。
8 病気になった場合(医療機関等)
(注)当国ではヤウンデおよびドゥアラ以外の都市には、邦人が安心して医療を受けられる施設はありませんので、緊急時にはこれらの都市での受診をお勧めします。
(首都)Yaoundé(ヤウンデ)
- (1)フランス大使館付属クリニック:Centre Medico-Social de la Cooperation Français
- 電話:222-23-01-39、時間外699-93-41-69
- 概要:フランス人医師2名常駐。乳幼児から大人まで対応。また救急疾患、切傷の縫合にも対応。入院設備無し。支払いは現金。24時間救急対応可能。
- (2)ヨルダン病院:Jordan Medical Services
- 電話:242-00-88-10、696-00-46-56、救急697-70-00-00
- 概要:近代的な私立病院。24時間対応、救急外来受診前にデポジットを支払う必要がない。設備は充実しておりCT可能。病室も衛生的。
- (3)国立総合病院:Hôpital General de Yaoundé
- 電話:222-20-28-02、222-20-11-22
- 概要:総合病院。24時間対応。支払いは現金。
- (4)国立中央病院:Hôpital Central de Yaoundé
- 電話:222-23-40-20、248-68-03-05、248-68-03-34
- 概要:総合病院。24時間対応。支払いは現金。
- (5)社会保険基金病院:Caisse Nationale de Prévoyance Sociale
- 電話:222-23-60-35
- 概要:総合病院。24時間対応。設備は比較的充実。病室も衛生的。
- (6)国立病院:Hôpital Gyneco-Obstetrique et Pediatrique de Yaoundé
- 電話:222-21-24-31
- 概要:産婦人科と小児科専門病院。救急対応可能。
- (7)産婦人科クリニック:Cabinet de Gynecologie Obstetrique
- 電話:222-20-83-38
- 概要:産婦人科。救急対応可能。オンライン予約可。
- (8)私立総合病院:Groupe Medical St-Hilaire
- 電話:679-05-04-04
- 概要:総合病院。入院施設あり。救急対応可能。
- (9)パスツールセンター:Centre Pasteur de Cameroun
- 電話:222-23-10-15、222-23-18-03
- 概要:各種検査、予防接種・抗毒素血清の接種が可能。予防接種は通常7時30分から15時30分。支払いは現金のみ。
- (10)カテドラル病院:Centre Medical la Cathedrale
- 電話:242-65-69-72、698-49-18-71、698-49-20-20
- 概要:私立総合病院。月から金は8時から12時30分および15時から18時、土曜は午前のみの診療。設備は充実しCT/MRIも可能。入院設備はないので入院が必要な場合は他院へ紹介。
- (11)歯科医院:Cabinet Dentaire DENT STAR
- 電話:222-2-077-99、690-08-48-40、670-69-52-53
- 概要:衛生管理の整っている歯科医院。ロシアとアメリカで勉強した歯科医師がオープンした。医師は英語が堪能。
- (12)救急搬送(救急車):SAMU(Service d’Aide Medicale Urgente)
- 電話:(ヤウンデ)固定電話より19、携帯より119。(ドゥアラ)固定電話より18、携帯より118。
- 概要:24時間利用可能な救急車(有料)。医療機器はほとんど搭載されていない。患者をストレッチャーに寝かせたまま搬送できる車輌。
Douala(ドゥアラ)
- (1)国立病院:Hopital General de Douala
- 電話:233-50-01-01、662-96-28-68
- 概要:総合病院。脳外科手術も可能。乳幼児も対応可能。24時間救急対応可能。
- (2)国立病院:Hôpital Gyneco-Obstetrique et Pediatrique de Douala
- 電話:233-50-43-02
- 概要:ドゥアラ郊外にある総合病院。名前は産婦人科と小児科だが、他科の患者も受け入れており救急も対応可能。
- (3)国立病院:Hôpital Laquintinie de Douala
- 電話:233-42-15-40
- 概要:カメルーン最大の病院。全科そろっている。Pavillon Samuel Eto’o Filsという建物はVIP専用で、支払能力があればここに直接行って受診を申し込むことができる。入院が必要であればVIP病棟に入院できる。
- (4)診療所:Daniel Muna Memorial Clinic
- 電話:693-17-24-52
- 概要:IBISホテルの近くにあり、外国人患者が多い。国連スタッフの指定クリニック。乳幼児も対応可能。24時間救急対応可能。
- (5)Clinique Medicale Odyssee
- 電話:233-42-82-20/233-42-81-44
- 概要:産婦人科がメインのクリニック。手術室あり。通常分娩、帝王切開、子宮外妊娠の腹腔鏡手術が可能。
9 その他の詳細情報入手先
10 一口メモ
カメルーンでは仏語が主要言語ですが、ヤウンデ、ドゥアラなどの大都市では一般人も多くが英仏2か国語を解します。薬局・病院でも英語が通じますし、ほとんどの医師は英語でのコミュニケーションが可能です。ただし、医薬品については薬品名や添付文書がフランス語のみのことも多いので、世界の医療事情の冒頭ページの一口メモにて、もしもの時の医療英語並びに医療フランス語をご参照ください。