ネパール

平成27年6月26日

コイララ首相,
パンディ外相,
マハト財相,
各国政府及び国際機関の代表者の皆様,

 本日でネパール大地震の発生から2ヶ月が経ちました。改めて震災で亡くなられた方々に心から哀悼の意を表するとともに,被災された方々にお見舞いを申し上げます。犠牲者の3割がネパールの将来を担うべき子供達であったと聞いており,子を持つ父親として心が痛みます。一日も早く残された子供達が元気に学校へ通えるようになり,人々の暮らしが元に戻ることを願っております。

議長,
 日本も4年前,未曽有の大災害に見舞われ,約2万人もの尊い命が奪われました。その際,ネパールの方々から5千枚の毛布を頂くとともに,日本在住のネパールの方々は,被災地でカレーの炊き出しを行ってくださいました。だからこそ,日本は,今回の震災には特別な同情と連帯の意識を持っています。今やネパール支援の運動は日本全国に広がっています。実は世界中のネパール大使館の中で最も多くの義援金を集めたのは東京なのだそうです。私の地元浜松からも,ネパールの人々の力になりたいとの声が毎日私に寄せられています。本日,私は,そのような日本全国の熱い思いをお届けしたいと思っています。
 日本は,アジアの友邦として,ネパールに寄り添い,ネパールが復興を成し遂げるその日まで,できる限りの支援を行っていく考えです。

議長,
 今回,国際会議をカトマンズで主催されるコイララ首相はじめ,ネパール政府のイニシアティブを,日本は評価します。
 昨日,私は,被災地を視察し,震災による痛みや復興への強い願いを共有しました。そして,ネパール政府と共に復興に取り組みたいとの気持ちを新たにしました。
 日本は,震災発生直後に,国土交通省の専門家を派遣し,中長期的な復興マスタープランや耐震基準の策定のための協力を行ってきました。また,第3回国連防災世界会議の成果である「より良い復興(Build Back Better:BBB)」の概念を基に,現地の資材を活用し,少しの補強で強度を増す耐震化や,災害時に避難場所としても役立つ学校や公共施設の設計・建設等に関する助言・アドバイスを行ってきました。
 日本は,こうした概念を現場での実践に移し,また幅広く展開していくために,先日発表された災害後ニーズ評価(PDNA)を踏まえつつ,次の3分野を中心に,260Mドル(注:約320億円)規模の支援を実施します。
 第一に,「学校」です。今回の震災では,全国で7000棟もの学校が全半壊しました。ネパールの子供達が学校に戻り,その笑顔を取り戻すため,また,今後起こりうる震災から子供達を守るため,耐震性を備えた学校の再建を,ADBと連携して取り組んで行きます。
 第二に,「住宅」です。PDNAで,今回の被害総額の半分を占めるとされる住宅被害に関し,耐震基準を満たしながらも大きなコストを要しない住宅の建設を,世界銀行と連携して取り組んで行きます。ホテル敷地内にJICAによる住宅強化デモンストレーションが行われていますので,是非お立ち寄り下さい。
 第三に,「公共インフラ」です。郡庁舎や病院等の公共施設,道路や橋等のインフラを耐震補強により強靱化することによって,ひとつでも多くの命を救うことが出来るよう協力を進めていきます。

議長,
 「BBB」の概念においては,単に震災前の状態に戻すのではなく,震災前に比してより強靱な復興を実現することが重要です。これからも「BBB」を基調とし,強靱な都市防災計画策定,災害に強いインフラ支援,地域防災能力強化等を実施していきます。
 更に,文化遺産の修復も重要な課題です。ネパールには,カトマンズ盆地の世界遺産を始めとする多くの文化遺産があり,これらはネパール人の誇りであるとともに,重要な観光資源でもあります。日本は,ユネスコと連携して,文化遺産の復興においても可能な限りの協力を進めていきます。

議長,
 緊急・人道支援から復旧・復興まで切れ目のない支援とともに,中長期的な視点から「BBB」は重要であり,日本として,できうる限りの支援を行っていきます。この観点から,より強靱なネパールの復興を実現するための第2回会合の開催を支持します。日本は,第2回会合についても共催する考えです。

議長,
 現在,ネパールにおいては,新憲法制定を始めとする民主主義定着に向けた努力が続けられており,震災によってこの努力が妨げられてはなりません。主要4政党間における新憲法制定に向けた合意を歓迎し,早期に新憲法が制定されることを強く期待します。ネパールは,震災からの復興と新憲法制定という2つの国づくりに同時に取り組んでいます。日本は,真の友人として,この険しい山道に挑むネパールを力強く後押しします。日本は,ネパールが背負う重い荷物を山頂まで一緒に担ぐ覚悟です。将来,ネパールは,より美しく,より活力ある,より強靱な国に生まれ変わるでしょう。その日まで,これからも最大限の支援を行っていきます。

 有り難うございました。


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