岸田外務大臣
岸田外務大臣のベトナム訪問(概要と評価)
平成26年8月2日



7月31日(木曜日)から8月2日(土曜日),岸田文雄外務大臣は,ベトナムを公式訪問したところ,概要と評価は以下のとおり。
1 日程の概要
7月31日(木曜日)
看護師・介護福祉士候補者受け入れ研修機関訪問・研修生との交流,在留邦人との懇談
8月1日(金曜日)
日・ベトナム外相会談,日越協力委員会第6回会合,無償資金協力交換公文署名式((1)中古船舶及び海上保安関連機材の供与のためのノン・プロジェクト無償資金協力,(2)無償資金協力「人材育成奨学計画」),共同記者発表,ミン副首相兼外相主催昼食会,ズン首相表敬,ルア越日友好議員連盟会長(党組織委員長)表敬,タンロン遺跡視察,サン国家主席表敬
8月2日(土曜日)
ホアラックハイテクパーク(日越大学建設予定地を含む)視察
2 全般的評価
- 昨年(日越外交関係樹立40周年)1月の安倍総理訪越(初外遊先),12月のズン首相訪日,本年3月のサン国家主席訪日(国賓)を経て,両国関係が飛躍的に強化される中,今次訪問は3月に格上げされた「広範な戦略的パートナーシップ」を具体化する上で有意義なものとなった。
- 特に,この地域の海洋安全が重要な課題となる中,越の海上法執行能力強化のため,日本側は総額5億円規模のノン・プロジェクト無償資金協力により,中古船舶(6隻を目処),関連機材の供与を表明したのに対し,越側より多大なる謝意が表明された。今後も人材育成面での協力,ASEAN関連会議等での連携を深めていくことで一致。
- また,日本が越にとり最大の援助・投資国である点を踏まえ,両国の経済関係深化を図っていく上での諸課題につき日越協力委員会の場を中心に議論。今後,特に農業,裾野産業育成,エネルギー,人材育成等で協力を強化していくことで一致。
- さらに,両国協力の基礎となる人的交流拡大に向け,ベトナム人看護師・介護福祉士候補者の受入れ,査証緩和についても協力の継続を確認。
3 主要な行事の概要
(1)日ベトナム外相会談
ア 総論
- 岸田大臣からは,日越友好議連幹事長として長年活動してきたことに触れつつ,本年3月に両国首脳間で格上げされた「広範な戦略的パートナーシップ」の下で幅広く協力を深めていくことの重要性につき一致。
イ 二国間関係
- 7月に行われた国際法局長協議や,本年秋に予定されている「日越戦略的パートナーシップ対話」(次官級)などを通じた,外交当局間の意思疎通の強化を確認。
- 岸田大臣から,我が国の「積極的平和主義」及びその一環としての,安保法制整備の基本方針に関する閣議決定について説明したのに対し,ミン副首相兼外相から,日本が「積極的平和主義」の下,地域・世界の平和と安定に向けて積極的に貢献することに対し,歓迎が表明された。また,防衛協力,地雷・不発弾処理分野の協力,サイバーセキュリティにおける協力等について意見交換。
- 岸田大臣から,ベトナムの海上法執行能力の向上のため,総額5億円のノン・プロジェクト無償資金協力により中古船舶及び関連機材を供与するための交換公文に署名することに触れ,ベトナムの海上法執行能力の向上に資することへの期待を表明したのに対し,越側より多大なる謝意を表明。新規の巡視船艇供与についても,専門家調査団を派遣するなど協議を継続しており,検討を加速化することで一致。人材育成分野の協力の重要性でも一致。
ウ 地域・国際場裡の協力
- 岸田大臣から,安倍総理が提唱する海洋の法の支配の「3原則」に言及し,両外相は,国際法に則った問題の平和的解決の重要性について一致。8月のASEAN関連外相会議等の場でも,他の関心国とともに「法の支配」の貫徹に向けて連携していくことを確認。
- このほか,北朝鮮を含むアジアの地域情勢についても意見交換。
(2)日越協力委員会第6回会合
ア 2007年以来6回目となる会合において,両外相を議長とし関係省庁が参加する形式で,投資環境整備,裾野産業育成,インフラ整備,資源・エネルギー,環境,科学技術,農業協力,食品安全,人材育成,文化・人的交流など,具体的協力案件を議論。岸田大臣からは,1300社以上の日本企業がベトナムで活動し,在留邦人も1万人を超える中,より良好な投資環境の創出に向け,投資環境改善の話合いの場である「日越共同イニシアティブ」を引き続き活用していくことの重要性を指摘。
イ 最近のODA不正事案については,岸田大臣から,ベトナム鉄道公社関連以外の新規ODA案件の供与再開に言及しつつ,ODA事業に対する信頼回復のため,事実関係の更なる解明や再発防止策の策定について引き続き真剣な対応を要請し,先方からは,日本の対応に謝意を述べつつ事実関係の解明や再発防止に真剣に取り組み,日本のODA資金が適切かつ効果的に活用されるよう約束する旨述べた。
ウ 人材育成について,岸田大臣から,人材育成支援無償資金協力約3.5億円を通じてベトナムの若手行政官30名の日本留学を支援することを表明。また,日越大学の設立に向け,日本政府としても協力を進めていく方針を表明した。
エ 経済連携に関連して,TPPの早期妥結や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉完了に向けてベトナムと緊密に連携していくことを確認した。また,日越経済連携協定(EPA)の下で開始したベトナム人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて,優秀な候補者の継続的送り出しに向けた協力を確認。
オ このほか,文化交流,日本語教育,査証緩和措置を含む人的交流,スポーツ交流等についても意見交換を行った。
(3)その他表敬
ア ルア越日友好議連会長:議会間・政党間交流について意見交換し,その更なる活発化に向けた協力につき一致。
イ ズン首相:岸田大臣から,日越協力委員会の成果を報告しつつ,中古船舶の供与等ベトナムの海上法執行能力の向上支援,ODA関連不正事案の再発防止の重要性等につき意見交換。
ウ サン国家主席:3月のサン国家主席訪日時に日越首脳間で合意した事項(農業分野の協力等)のフォローアップ状況について意見交換。