チャレンジ41カ国語 ~外務省の外国語専門家インタビュー~

チャレンジ41カ国語~外務省の外国語専門家インタビュー~

フィンランド語の専門家 石川さん

Hyvää päivää !(ヒュヴァー パイヴァー)=こんにちは!

(写真)古都トゥルクの大聖堂

古都トゥルクの大聖堂

 石川さんは、この2月に3年間の育児休暇から勤務に復帰したママさん外交官。平成6年に外務省に入省したフィンランド語の専門家です。石川さんは出身が青森なので、寒い国がなじみやすいだろうと考え、北欧を選んだそうです。

ページの少ないフィンランド?

 「受験の時には北欧のどこというはっきりした希望はまだなかったので、恥ずかしながらガイドブックのページ数の多い国順に希望を出しました。たまたま入省年度の研修語学は北欧ではデンマーク語とフィンランド語だけで、結局フィンランド語になりました。フィンランドは一番ページ数が少なかったんですけど(笑)。」

フィンランド語って、どんな言葉?

 「入省して初めて習ったのですが、日本語同様子音のあとに母音がくることが多いので、日本人にとっては比較的発音のしやすい言語だし、意味が違っても発音が同じという言葉がいくつもあって、面白く感じました。」(例:Kissa(キッサ/猫)、osa(オサ/部分)等)

 石川さんは、1年間の本省勤務(外務省では、東京での勤務を本省勤務、海外での勤務を在外勤務と呼び慣わしています)をしながら、フィンランド語の予備研修を受け、平成7年からいよいよ、フィンランド中部の都市ユヴァスキュラの大学で現地研修を開始します。

研修地はフィンランドの真ん中

-どうしてユヴァスキュラを選んだのですか?

 「そこは、フィンランドの初等教育の発祥の地で、フィンランド語の発音もとてもきれいな場所だと聞いていました。が、実を言うと、留学生が多い首都のヘルシンキ大学では必要な英語のレベルがとても高いと聞いていたので、怖じ気づいていたということもありました・・・。」

 初めて海外の学生寮でひとり迎えた冬には、寒さよりその暗さに気が滅入り、うつ状態になりかけたこともあったそうです。それでも「今日こそ最低気温更新?」と毎朝窓の外の寒暖計をチェックしたり、ダイヤモンドダストに感激したり、時には数少ない日本人留学生仲間の励ましを受けつつ、勉強を続けていたそうです。

私の勉強方法

―フィンランド語の勉強方法で工夫した点はありますか?

 「聞き取れなければ話にならない、と、毎朝ラジオニュースを録音し、繰り返し聞いて書き取り、次に訳していました。続けることで聞き取り能力がついたと思っています。」

ドキドキの実践会話!

―現地の人との会話で思い出深いことや失敗談はありますか?

 「最初の年に銀行口座を開設した時のことです。外国人とみて銀行の担当者は私に英語で説明し、私は「練習だ~」とフィンランド語で返答し・・・とずっとその調子でした。ようやく最後になって、彼女に「あら、あなたフィンランド語話してたの?」と言われた時にはあきれました。研修当初は、つい、話の途中で、日本語で「ええ」と答えてしまい、慌てて訂正したりしていました。フィンランド語でei(エイ)はNOを意味するので・・・。」

 やはり、語学の上達には“実践の試行錯誤”が欠かせないようですね。

(写真)首都ヘルシンキの東にあるポルヴォーの旧市街。手前にある川が凍っています。

首都ヘルシンキの東にあるポルヴォーの旧市街。
手前にある川が凍っています。

大使館勤務

 2年間の語学研修の後、石川さんはヘルシンキの大使館勤務となります。大使館での石川さんは・・・

 「儀典兼広報を担当していました。外交官・語学専門官として未熟だったと思いますが、同僚や現地スタッフの支えで楽しくがんばれました。日本文化に対するフィンランド人の関心は高くて、文化や武道関係の愛好団体がいくつもありました。当時は日本人にさえまだなじみの薄かった狂言や和太鼓グループの公演も、ヘルシンキでは大盛況でした。天皇皇后両陛下がフィンランドにいらしたときも、フィンランドの人々はとても温かく迎えてくれて・・・うれしかったですね。」

忘れられないお肉屋さん

 最後に、フィンランドでの印象深い出会い、忘れられない人について聞いてみました。

 「アパートの近くにあった市場のマルッティおじさん。とても親切で、好奇心旺盛で、知的な肉屋さんでした。会話教室に通うように、殆ど毎日立ち寄ってお話していました。肉を切る大きなカッターの横には辞書やら世界地図やらが置かれていて、私のフィンランド語を正しい言い回しになおしてくれたり、私のためになりそうな友人を紹介してくれたり、自宅で伝統料理をふるまってくれたり。『実践会話』だけでなく、『フィンランド』についての先生のような存在だったんですよ。」

 奥さんやイルタおばあちゃんにも娘のようにかわいがってもらったそうです。

私の大きな財産!

 森と湖、サウナ、ムーミン、福祉、IT等々「フィンランド」というと思い浮かぶものには勿論親しんだと言う石川さんですが、「言葉を遣って、生活し、仕事をし、現地の人と親しくなったことで、観光ではなかなか得られないフィンランドという国と人の実際の姿に触れることができたのは、大きな財産だと思っています。」


石川さんのフィンランド語

思い出の言葉

 「ALE」(アレ)~到着初日、シーズンだったのかやたら目についた赤や黄の「値下げ」ポスター

便利なフレーズ、その他

 Kiitos(キートス)~ありがとう
 Näkemiin(ナケミーン)~さようなら

 Sisu(シス)~粘り強さ、妥協しない精神力 等々。フィンランド人の国民性を表すとよく言われている言葉。個人的に、津軽人の「じょっぱり精神」に通じているように感じられ親近感を持ちました。

 Olkoon Voima kanssasi !(オルコーン ヴォイマ カンッサシ!)~“May the Force be with you !” (←お好きな人は、よくご存知のフレーズですよね…)

フィンランドを主要言語とする国: フィンランド共和国

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