記者会見
茂木外務大臣会見記録
(令和7年10月24日(金曜日)17時52分 於:本省会見室)
冒頭発言:茂木大臣のASEAN関連首脳会議出席
【茂木外務大臣】私の方から、まず、諸般の情勢許せば、今月26日から28日にかけてマレーシアを訪問し、総理の代理として、ASEAN関連首脳会議に出席をいたします。具体的に申し上げますと、27日のASEAN+3の首脳会議、RCEP首脳会議、東アジア首脳会議に出席する予定であります。
一連の会議を通じて、「自由で開かれたインド太平洋」を推進するとともに、「信頼のパートナー」であり、FOIP実現の要であるASEANとの協力を一層強化していく考えであります。
また、地域情勢・国際情勢に関する我が国の立場をしっかりと発信するともに、地域の平和と繁栄に資する取組を推進したいと思っております。この機会に、会議のマージンになると思いますが、各国のカウンターパートとも会談を行って、信頼関係の構築を進めたいと、こんなふうに思っております。
私からは、以上です。
ASEAN関連首脳会議
【時事通信 千葉記者】冒頭御紹介のあったASEANの関係なんですけれども、ASEAN諸国、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に重要な国とおっしゃっていたと思うんですけれども、今後の、その茂木大臣の下での、外交戦略上のASEANの位置づけというのは、どういったものになるか教えてください。
【茂木外務大臣】ASEANですね、地政学的要衝に位置しております。また世界の成長センターでもあるわけでありまして、こういったASEAN、「自由で開かれたインド太平洋」の実現の要である。冒頭申し上げたように、そのように考えております。
そして、政治・経済両面で存在感を増すASEANとの関係の強化、これは、日本外交の最優先事項の一つであります。「心と心」のつながる「信頼のパートナー」として、海洋安全保障やAIを含むデジタル、グリーンを始め、幅広い分野で、日・ASEANの関係を一層強化していきたいと、こんなふうに考えています。
FOIP
【毎日新聞 田所記者】関連しますが、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」についてお尋ねします。総理、外務大臣が、今般首脳会議に出席するASEANは、日本のFOIPと同じ「法の支配」やルールを重視する理念を持っておりますが、日本が、ASEANと、FOIPの重要性を確認した後に、その後、今度は、日本で、マレーシアから訪れるトランプ米国大統領と、改めてFOIPの重要性を再確認するということになりますが、その意義について、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。
【茂木外務大臣】日本が世界に呼びかけている「自由で開かれたインド太平洋」、これ、日本外交の柱であります。また、ASEANとして、AOIP、これを発表しておりましてこのFOIPとAOIPは、かなり共通する部分、これは多いと、こんなふうに考えております。これを推進して、時代の変化に合わせて進化させていくためにも、多面的な取組を通じて、同盟国・同志国やグローバル・サウスの国々と、きめ細やかに連携して、推進していく必要があると思っております。
特に、その中でASEANを重視する理由ということについては、先ほどお話をしたとおりであります。
そして、その直後に予定されているトランプ大統領の訪日、ここにおいては、まずは、高市総理とは、発足後、言ってみますと、最初の、非常に極めて早いタイミングでの、対面での会談ということになるということで、両首脳が、個人的な信頼関係を構築して、日米同盟の更なる強化、そして、今申し上げたFOIPの実現に向けて、共に協力していく関係を築いていく、この大変良い機会になると、こんなふうに考えております。
拉致問題
【テレビ東京 白石記者】北朝鮮による拉致被害者の問題について伺います。高市総理が、昨日、北朝鮮による拉致被害者家族との面会の中で、「突破口を開く」と述べて、早期の日朝首脳会談に、意欲を示されました。今後、日本政府として、どのような形で北朝鮮に働きかけを行う考えなのかということと、また、来週予定されているトランプ大統領との首脳会談の際にも、拉致問題を主要な議題として取り上げるお考えはありますでしょうか。お願いします。
【茂木外務大臣】昨日の、拉致被害者の御家族の皆さんとの高市総理の会談、これは私も同席をさせていただきましたが、本当に長い期間、家族の帰国を待ちわびている、その切実な思いというのを感じて、拉致問題の即時解決の重要性、これを改めて私も感じているところでありますが、この拉致問題の解決のためには、国際社会への働きかけももちろんでありますが、我が国が主体的に、行動することが何より重要だと、こんなふうに考えております。
全ての拉致被害者の、一日も早い御帰国を実現するため、北朝鮮との諸問題を、また、解決をするために、政府の責任において、あらゆる手段を尽くして取り組んでいきたいと思っております。
どういう形でこれを進めるかということは、まさに、この成否に関わってくる問題でありますから、詳細には、つまびらかにできないと、このことについては、御理解いただければと、そんなふうに思っているところであります。
また、来週のトランプ大統領との訪日の際にも、当然この拉致問題の解決へ向けた協力、これ、これまでもトランプ大統領は、非常に積極的に、この問題、北朝鮮にも働きかけしてくれたわけでありまして、当然再確認をする、改めてお願いをするということになると思います。
非核三原則
【中国新聞 宮野記者】国是の非核三原則について伺います。高市首相は、過去に、「持たず、つくらず、持ち込ませず」の「持ち込ませず」の見直しに言及されています。政府としては、米国の核抑止力を強化する最中ではありますが、見直しの検討を考えているか、大臣に伺います。
【茂木外務大臣】政府としては、非核三原則を政策上の方針として堅持をしております。 その上で、この三原則のうち、「持ち込ませず」については、2010年、当時の岡田外相によります答弁を引き継いでいく考えであります。
北朝鮮・ロシア・中東
【パン・オリエント・ニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
パン・オリエント・ニュースのアズハリ・カルドンです。二度目の外務大臣ご就任、おめでとうございます。新政権の下で、特に東アジアと中東に関連して、何が日本の外交目標の焦点となるのかお伺いします。北朝鮮やロシアに対して、対立や制裁ではなく、関与や外交を行う余地はあるのでしょうか。また、日本は、中東において、ガザやシリア、レバノンに対するイスラエルの戦争を止めるために、和平イニシアティブを進めることができるのでしょうか。
【茂木外務大臣】まず、現実でどういうことが起こっているか、このことをしっかり、確認をする必要があると思っております。
北朝鮮によります、核、ミサイル開発、これは、我が国及び国際社会の平和と安全を脅かすものでありまして、断じて、これを認められないものであります。また、拉致問題、これは国家主権の侵害でありまして、政権の最重要課題であります。
北朝鮮に対しては、様々な働きかけを行っておりますけれど、北朝鮮への対応については、拉致、核、ミサイルといった、諸懸案の包括的解決に向けて、何が最も効果的かという観点から、不断に検討を行っていきたいと思っております。
また、ロシアによりますウクライナ侵略、これは、国際秩序の根幹を揺るがす、極めて深刻な課題だと思っておりまして、我が国は、G7を始めとする国際社会と連携をしながら、対露制裁、これを講じてきたところであります。
同時に、日露両国の間には、隣国でありますから、隣国として解決しなくてはならない懸案事項が山積しておりまして、両国の外交当局間で、適切にロシア側と意思疎通、これを続けていきたいと思っております。
特に、北方墓参の問題、これについては、旧島民の皆さん、切実な思いだということで、粘り強く働きかけを行っていきたい。こんなふうに考えております。
また、中東情勢についてでありますが、ガザ地区を含みますパレスチナ情勢やイランの核問題、シリア、レバノン、イエメン等、依然として、不安定な状態が続いているところであります。
我が国、これまで中東各国と信頼関係を築いてきました。こういった信頼関係に基づいて、米国を始めとする関係国とも連携して、中東の平和と安定のために、様々な外交努力、我が国として積み重ねてきているところであります。
先般、当事者間で、停戦合意が成立したガザ情勢についても、人道状況の改善であったり、復旧・復興に関する国際的な取組に日本としても、積極的に貢献していきたいと思っております。
更に申し上げると、平和と繁栄の回廊であったりとか、パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合、CEAPAD(シーパッド)といった、我が国ならではの取組も活用しながら、引き続き、中東の平和と安定のために、積極的な役割を果たしていきたいと、こんなふうに思っております。
日中首脳会談
【産経新聞 永原記者】日中首脳会談の調整状況についてお伺いします。トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が、韓国で行われるAPECの際に、首脳会談を行うことが発表されました。高市総理もAPECへの出席を予定しておられますが、習主席との会談の調整状況を教えてください。また、様々な懸案がある中、早期の日中首脳会談の必要性について、大臣はどのようにお考えになるかをお伺いいたします。
【茂木外務大臣】日中首脳会談について、今の時点で決まっていることはありません。
そして、先日の記者会見でも申し上げましたが、日中間には、懸案や課題もあることは確かであります。だからこそ、話し合いをしっかりしていかなければならないと思っております。そして、そういった話し合いを通じて、日本として、主張すべきは主張し、また、中国に責任ある対応を求めていきたいと思っております。
一方で、協力できる分野については、協力を進めていくという形でありまして、話し合い等を通じて、懸案や課題を少しでも減らして、理解や協力、これを増やしていきたいと、こんなふうに考えています。
日韓関係
【共同通信 鮎川記者】日韓関係、日本と韓国の関係について伺います。1978年に発効した日韓の大陸棚南部の共同開発協定というものが、今年の6月以降、「書面で一方が終了を予告すれば、終了できる」という期間に入りました。この協定終了するかどうかの扱いについて、石破前政権は、良好な二国間関係を踏まえて、韓国側と丁寧に意思疎通し、円満に解決、乗り越えなければならない課題だという認識を国会で示していました。高市新政権の姿勢に変更があるかどうか伺います。
【茂木外務大臣】日韓の政府間では、日韓大陸棚南部共同開発協定の今後の在り方について、これまでも意見交換を重ねてきたところであります。
今後については、協定の有効期間であったりとか、終了に関する規定も踏まえながら、この協定や両国間の大陸棚の南部海域の将来の在り方について、引き続き、韓国政府との間で、議論を行っていくことが重要だと、こんなふうに考えております。
その上で、日本として、日韓関係の状況等の推移を踏まえながら、総合的に、この問題についても判断していきたいと思っております。
高市総理の所信表明、内閣支持率
【NHK 山本記者】今日国会で、高市総理の所信表明演説が行われたのですけれども、率直に聞かれた感想といいますか、受け止めを伺いたいのと、あと、関連して、今、高市政権、支持率が、各社の世論調査を見ますと、読売さん始め、非常に高い支持率になっているんですけれども、国民が政権に何を期待しているのか、そして、その期待に応えられる所信表明になっていたというふうにお考えでしょうか。
【茂木外務大臣】今日の高市総理の所信表明演説、非常に力強い、また、具体的な内容を含んだ所信表明であったと、こんなふうに考えております。
外交面でいいますと、日米同盟の更なる強化であったり、「自由で開かれたインド太平洋」、引き続き、力強く推進し、時代に合わせて進化させる方針、これを打ち出されたところでありまして、まさに、世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す。そういう強い決意を感じたところでありまして、日本を取り巻きます安全保障環境が戦後最も厳しく複雑になる中で、国際社会から期待をされる日本の役割と責任を果たしていくことで、国益を守り、国際社会で、より存在感を高める、日本ならではの外交を展開していきたいと、改めて感じたところであります。
高市内閣、各社の世論調査で、非常に高い支持をいただいていると。このことについては、大変ありがたいと思っております。これ、今、内外に、物価高の問題もありますし、また、国際情勢も大きく揺れる、こういった中で、山積する課題があるということで、スピード感を持って、日本が主体的に、様々な問題の解決に取り組む、こういうことが期待されているのではないかなと思っておりまして、その高い期待が支持につながっている。これを維持していくためにも、課題解決にスピード感を持って、また勇気を持って取り組むということが重要だと思っております。
非核三原則
【中国新聞 宮野記者】先ほどの非核三原則の質問について、ちょっと確認でお伺いします。これまでの政府の立ち位置を維持していると理解しましたが、念のため、岡田外相の答弁というところで、これは、有事の際の核持ち込みについて、国民の安全のために政権が国の命運をかけて判断するとした、そういった一連の発言のことでよろしいでしょうか。
【茂木外務大臣】それで結構です。

