記者会見

岩屋外務大臣会見記録

(令和7年10月14日(火曜日)11時30分 於:本省会見室)

(動画)岩屋外務大臣会見の様子

冒頭発言

(1)ガザ情勢(ガザ停戦合意の履行)

【岩屋外務大臣】冒頭、私(岩屋大臣)から三つ御報告がございます。
 まずは、ガザの停戦合意の履行についてです。
 ガザ情勢について、昨日13日、ハマスによって拘束されていた人質のうち、生存者20名が解放されました。日本政府として、人質の解放と停戦が実現したこと、そして、ガザ地区への人道支援物資の搬入が再開されたことを、心から歓迎したいと思います。
 また、今回の合意に関する署名式が、13日にエジプトで開催され、持続可能な停戦とガザの人道状況の速やかな改善、そして、「二国家解決」の実現に向けて、国際社会が一体となって取り組んでいく意思が示されたことは、極めて重要であると考えます。
 米国のトランプ大統領のリーダーシップ及び関係国のたゆまぬ外交努力に、改めて敬意を表したいと思います。
 我が国としても、石破総理から、トランプ大統領及びエルシーシ・エジプト大統領それぞれに対して書簡を発出し、我が国として、引き続き、状況の改善に寄与する用意がある旨を伝達しております。さらに、岩井駐エジプト大使が式典に出席し、関係者に対して、我が国の立場を説明をしたところです。
 我が国は、引き続き、関係国及び国際機関、関係機関と緊密に連携して、包括的計画の着実な実施を、全ての関係者に強く求めてまいります。それとともに、ガザの人道状況の改善や早期復旧・復興に関する国際的な取組に、積極的に寄与していく考えであります。同時に、「二国家解決」の実現に、一歩でも着実に近づくような現実的かつ積極的な役割を、今後とも果たしてまいりたいと思います。

(2)日・スウェーデン外相会談

【岩屋外務大臣】次に、日・スウェーデン外相会談についてです。
 10月12日から15日まで訪日中の、スウェーデンのステーネルガード外相との間で、本日、本年4月以来となります外相会談を行う予定です。
 二国間関係を更に強化しつつ、地域情勢についても議論を行って、価値や原則を共有する戦略的パートナーとして、スウェーデンとの連携を一層深めてまいりたいと思います。

(3)福島の復興再生土の利用開始

【岩屋外務大臣】三番目に、福島の復興再生土の利用についてです。
 外務省は、8月に策定された「福島県内除去土壌等の県外最終処分の実現に向けた復興再生利用等の推進に関するロードマップ」を踏まえまして、10月11日から13日まで、外務省の南口のロータリーで、福島の復興再生土の利用のための工事を行いました。
 今後も、外務省は、関係省庁やIAEAと連携して、復興再生利用の推進にしっかり対応してまいりたいと思います。
 冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。

米中関係(米国による対中関税措置、中国によるレアアース輸出規制)

【読売新聞 植村記者】米中の関係について伺います。米国は、中国に100%の関税を課すと表明して、中国もこれに対抗措置をとる構えを示すなど、緊張が高まっています。トランプ大統領は、中国のレアアースの輸出規制を問題視しております。米中の、今回の対立の強まりを、日本として、どう受け止めているか、また、米国が問題視している中国のレアアースの輸出規制の状況を、日本としては、どう評価しているのか伺います。よろしくお願いします。

【岩屋外務大臣】御指摘の米中間の現在の動向については、承知しております。
 我が国としては、こういう動向を高い関心を持って注視していかなければいけないと思っておりまして、また、その影響を十分に精査して、適切に対応していかなければいけないと思っております。
 また、9日に、中国の商務部が公表した新たな措置については、現在、その内容及び影響を、関係省庁において精査しているところです。
 その上で、中国に対しては従来から、輸出管理によって、我が国を含む世界中のサプライチェーンに更に影響を及ぼすことがないように、私(岩屋大臣)から王毅(おう・き)外交部長を含め、あらゆるレベルを通じて申入れを行ってきているところです。
 したがいまして、今回公表された措置によって、その影響が更に拡大することを強く懸念しています。引き続き、関係国とも連携して、必要な対応を行っていきたいと考えております。

【共同通信 鮎川記者】今のお答えに関連して、補足で伺いたいんですが、おっしゃったような懸念を、既に中国側に伝えているという理解でよろしいでしょうか。

【岩屋外務大臣】特には、日中の間で経済レベルの会合を行ったことがございましたけれども、その折にもしっかりと、関係省庁からも、その話が出されましたし、私(岩屋大臣)からも、王毅外交部長との会談の際には、この話は、強く申し入れております。それは、「言ってくだされば、しっかり対応します」という返答があったのですけれども、完全に、まだ影響は払拭されていないということですので、そういった影響が更に拡大することがないように、動向をよく注視するとともに、対応をしっかりとっていかなければいけない。必要があれば、またしっかり申入れを行っていかなければいけないと考えております。

公明党の連立離脱による外交への影響

【NHK 川村記者】日本国内の政治が外交へ与える影響についてお伺いします。公明党が自民党との連立政権から離脱することになったことを受けて、日中関係を含め、今後の外交に与える影響について、どのようにお考えかお伺いできますでしょうか。

【岩屋外務大臣】国内の政治情勢が外交に与える影響について、御指摘の日中関係を含めて、それだけに焦点を当ててコメントすることは控えたいと思います。
 公明党離脱云々ということではなくて、やはり、近隣諸国との関係は、時に難しい問題に直面することもありますけれども、丁寧に粘り強い対話を重ねて、未来志向で建設的で安定的な関係を引き続き築いていくことが重要だと思っておりますので、ぜひ新しい政権においても、そういう努力を続けていただきたいと思っております。
 外交も含めて、難題が内外に山積しております。特に、外交には一刻の停滞も許されないわけです。既に重要な外交日程が、どんどんはまってきている、というところですので、ぜひ、できるだけ早く、次の政権の概要が固まって、こういう外交に、しっかり対応していただきたい。
 そして、いずれにしても分断と対立を深める世界を、日本外交が役割を果たすことによって、融和と強調に導いていくと。そういう外交をしっかり進めていただきたいと思っているところです。
 日中については、御案内のとおり、首脳会談で約束された、「戦略的互恵関係」を包括的に推進して「建設的かつ安定的な関係」を構築すると、これが日中双方の合意ですので、ぜひ、この「戦略的互恵関係」が、更に前進するような外交努力をしていくことが重要だと、大切だと思っております。

北朝鮮情勢(朝鮮労働党創建80年軍事パレード)

【読売新聞 植村記者】北朝鮮情勢に関して伺います。北朝鮮は10日に、朝鮮労働党創建80年を記念する軍事パレードでICBM「火星20」などの最新兵器を公開しました。今回公開された最新兵器などを、どのように、分析評価し、受け止めますでしょうか。また、パレードには、中国の李強(り・きょう)首相やロシアのメドベージェフ前大統領も出席し、中露朝の結びつきの強さも示されましたが、今回の動きをどのように評価しますでしょうか。

【岩屋外務大臣】北朝鮮をめぐる情勢につきましては、御指摘の軍事パレードも含めまして、平素から重大な関心を持って情報の収集分析に努めてきておりますが、その一つ一つについてコメントすることはお控えたいと思います。
 その上で申し上げれば、北朝鮮の核、ミサイルの開発というのは、我が国及び国際社会の平和と安全を脅かすものでありまして、断じて認められないと考えております。
 政府としては、北朝鮮をめぐる情勢について、ロシアや中国との協力関係が、我が国を含む地域の安全保障環境にどういう影響を与えるかということを、引き続き、重大な関心を持って情報収集し、分析していきたいと考えております。
 もう一つ大事なことは、米国、韓国を始めとする国際社会と協力して、国連の安保理決議の完全な履行を求めていくということだと思います。意味するところは、北朝鮮の核弾道ミサイル計画の完全な廃棄を求めていくということです。
 御指摘のあったICBM「火星20」というのは、一説によれば、全米を射程に収める飛距離があるのだと、射程があるのだと言われておりますけれども、その真偽のほどは別にして、ますます、そういう地域・国際社会に対する脅威は高まってきていると認識しております。

ガザ情勢(ガザ停戦合意署名式、ガザ復興に向けた日本の役割)

【共同通信 鮎川記者】冒頭、御紹介があったガザの和平について、2点お伺いします。1点は、13日にトランプ大統領がエジプトで開いた和平に関する首脳級の会合に、日本は大使の出席にとどまりましたが、これは日本の首脳やあるいは政務が派遣されなかった理由を教えてください。あと、2点目は、これから支援や復興が本格化すると思いますが、日本が果たしていく役割を改めて伺います。

【岩屋外務大臣】今般、日本時間11日深夜から12日の午前中にかけて、米国政府及びエジプト政府から、関係国首脳の参加を得て、13日に、エジプトのシャルム・エル・シェイクで、合意に関する署名式を開催するという、直前になって御案内がありました。首脳会議ですから、基本的に、石破総理への参加招請があったところです。
 我が国としては、当然、これまでもガザ情勢をめぐってコミットしてきておりますし、米国、エジプト、パレスチナあるいはイスラエルとの間で緊密にやり取りを行ってきておりますので、石破総理の出席についても真剣に検討いたしました。しかし、一方で、石破総理は、13日には、大阪・関西万博閉会式に、主催国の首脳として対応する必要があったため、残念ながら、今回の出席は見送らざるを得なかったということです。その旨も開催国にしっかりと伝えております。それが冒頭紹介した、署名式に先立って石破総理からトランプ大統領、エルシーシ大統領、それぞれに対して出した書簡です。したがって、岩井駐エジプト大使が式典に出席して関係者に対して、我が国の立場を説明しました。岩井大使は、トランプ大統領とも話をしております。
 いずれにしても、我が国は、引き続き、関係国及び国際機関としっかり連携して、包括的計画の着実な実施を全ての関係者に求めるとともに、人道状況の改善に向けて、我が国で成し得る貢献を、しっかりと行っていきたいと考えております。

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