記者会見

岩屋外務大臣会見記録

(令和7年10月7日(火曜日)14時31分 於:本省会見室)

(動画)岩屋外務大臣会見の様子

冒頭発言

ガザ情勢について

【岩屋外務大臣】ハマスによるイスラエルに対するテロ攻撃をきっかけとして、ガザ地区をめぐる情勢が悪化してから、本日で、丸2年が経過をいたしました。
 現在、米国とエジプト、カタール、トルコといった地域諸国の仲介努力によりまして、劇的な情勢に終止符を打つべく、様々な交渉が進められております。
 イスラエルによる一方的行為の停止、持続可能な停戦、全ての人質の即時解放、ガザの人々の苦難を一刻も早く終わらせるための人道支援といったことが、今まさに必要とされております。全ての関係者が、トランプ大統領が提案した計画に沿って行動することを期待します。
 先月の国連総会の機会には、石破総理も私(岩屋大臣)からも表明をしましたとおり、我が国としては、「二国家解決」というゴールに一歩でも着実に近づくように、引き続き、関係国、また機関とともに、積極的な役割を果たしていきたいと考えております。
 冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。

対パレスチナ無償資金協力の意義

【NHK 川村記者】ガザ地区の戦闘での関連でお伺いします。先月、パレスチナのガザ地区などで、人道危機が深刻化しているとして、政府は、現地の医療を支援するため、8億円余りの無償資金協力を行うことを決めました。ネットでは、「お金は困っている日本人のために使ってほしい」とか、「バラマキ、無駄遣い」という意見も目立ちます。無償資金協力の取組について、どのように国民の理解を得ていくか、お考えをお聞かせください。

【岩屋外務大臣】パレスチナでは、2023年10月のイスラエルとパレスチナ武装勢力間の衝突発生以降、特に、ガザ地区における人道状況が著しく悪化しています。子どもや女性といった、脆弱な立場にある人々の保健・栄養状況の改善は、喫緊の課題です。
 こうした中で、我が国は、9月22日に、世界保健機関(WHO)を通じて、ガザを含むパレスチナ住民の基礎的な保健医療サービス及び公衆衛生機能の強化を図るために、無償資金協力に関する書簡の署名・交換をしたところです。
  現在のガザの状況には、多くの国民の皆さんも心を痛めていらっしゃると思います。今、御紹介があったような考え方というのは、私(岩屋大臣)は、あまり理解ができません。
 中東地域には、歴史的に、様々な紛争や対立が存在しております。多くの不安定要因がありますけれども、この中東地域の平和と安定というのは、この地域に、エネルギー源、特に石油のほとんどを依拠している我が国の安全保障の観点からも、極めて重要です。その意味で、人道支援ということではありますけれども、また大きく我が国の国益に資している支援にもなっていると考えております。
 無償資金協力を含むODAは、公的資金を原資としておりまして、厳しい財政状況の中、国民の理解と協力に支えられていることは言うまでもありません。したがって、様々な広報を通じまして、御理解と御納得をいただけるように、そういう取組にも、今後一層力を入れていきたいと考えております。

次期ユネスコ事務局長

【日経新聞 馬場記者】ユネスコ事務局長選についてお伺いします。ユネスコ事務局長の後任に、エジプトのエルアナーニー元観光・考古大臣が選出されました。大臣は、5月にもお会いになられておりますけれども、今回の結果の受け止めをお伺いします。

【岩屋外務大臣】今、ご指摘があったように、現地時間の6日ですけれども、ユネスコ執行委員会における投票の結果、エルアナーニー元エジプト観光・考古大臣が、次期ユネスコ事務局長として指名されました。同元大臣とは、私(岩屋大臣)も、本年5月にお会いしたばかりでして、今般の指名を歓迎したいと思います。
 教育、科学、文化、コミュニケーションの分野における地球規模課題に対処するために、ユネスコの役割は、引き続き、大変重要です。
 ユネスコが、その役割をこれからもしっかり果たしていくために、新事務局長には、力強いリーダーシップを発揮してもらいたいと期待しておりまして、我が国としても、事務局長の活動をしっかり支えていきたいと考えております。

豪・PNG間の相互防衛条約

【読売新聞 栗山記者】オーストラリアが、6日、パプアニューギニアと相互防衛条約を締結しました。太平洋島嶼国で影響力を拡大する中国に対抗する狙いがあるとみられますけれども、今回の条約が、地域の安定に資するのか、日本政府としての受け止め、評価について伺いたいと思います、よろしくお願いします。

【岩屋外務大臣】昨日、豪州の首都キャンベラにおいて、御指摘が今ありましたように、オーストラリア・パプアニューギニア相互防衛条約が、両国首脳によって署名されたと承知しております。
 両国ともに、我が国にとっては、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた重要なパートナーです。そういう意味では、同志国間の重層的なこの連携が強化されるということは、地域の安定にとって重要であり、意義深いと思っておりまして、我が国としても、今般のこのオーストラリア・パプアニューギニア間の安全保障関係の強化を歓迎したいと思っております。
 今後、我が国としても、この両国とも緊密に連携しながら、「自由で開かれたインド太平洋」の確立、また、地域の平和安定の維持に、しっかり貢献していきたいと考えております。

自民党新総裁選出(外交への影響)

【共同通信 鰍澤記者】自民党新総裁についてお伺いします。自民党新総裁に高市早苗さんが選出されました。新総裁就任についての受け止めをお願いします。また、高市新総裁は、先日の就任会見で、日米、日米韓などの同盟関係強化について触れられていました。一方で、外交分野で、政府等の主要な役職は経験しておらず、外交手腕は未知数な上、保守色が強く、対中強硬な「タカ派」としても知られています。大臣から見て、今後、中国・韓国との関係に影響が出るか、外交へ期待することは何かを伺います。また、今月下旬には、米国のトランプ大統領の来日も予定されておりますが、石破政権として、どんな準備をして、新政権に引き継ぎたいかを教えてください。

【岩屋外務大臣】まずは、高市新総裁の就任に、心よりお祝いを申し上げたいと思います。
 まだ、予断は許しませんけれども、来たる臨時国会での首班指名の選挙が、首尾よく進めば高市新総裁は、我が国、本邦では、初の女性総理となられるわけであります。その意味では、時代を画する総理になられると思いますので、今後の御活躍に期待したいと思っております。
 一方で、国の内外には、まさに難題が山積しておりまして、外交も然りです。国政、そして外交には、一刻の停滞も許されないと思います。次々と、次期総理の外交日程も入ってきているところですので、ぜひ適切に対応していただいて、分断と対立を深める世界を、我が国が結び目となって、この融和と協調に導いていく、そういう外交を、これからもしっかり進めていただきたいと思っております。
 もちろん、私(岩屋大臣)も、任にある限り、最後の一瞬まで「対話と協調の外交」に全力を尽くしてまいりたいと思います。
 それから、日本外交というのは、今後とも、日米関係というのが基軸になっていくのだと思いますが、それだけではなくて、同志国・友好国との、網の目のようなネットワークを作り上げていくことも、同時に必要だと思っております。そういう取組にも、しっかり汗をかいていただきたいと思っております。
 そして、やはり近隣外交を、これをきちんとマネージできないと、外のことも、うまく対応できないと考えておりますので、中国や韓国、近隣諸国というか、隣組であるだけに、難しい問題も抱えているわけですけれども、ぜひ、丁寧に粘り強い対話を重ねて、未来志向で建設的で安定的な関係を築いていってもらいたいと思いますし、そのように対応していただけるだろうと、私(岩屋大臣)は、考えております。
 それから、トランプ大統領の来日、確たるものが決まっているわけではありませんけれども、そういうことも含めて、様々な外交日程が、新総理には、矢継ぎ早に待ち受けていることになりますので、ASEANとの関係、また基軸となる日米関係、そういったものをしっかり、これまでの政府の取組を引き継いで、発展させていけるように、対応していただきたいと。したがって、私(岩屋大臣)どもは、そのための準備を最後の瞬間まで、しっかりと行っていきたいと考えております。

中東情勢

【パン・オリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 自民党が協力を図ろうとしている一部の政党は、現時点でパレスチナ国家承認に反対している自民党および公明党とは、外交政策の原則において異なる立場を取っているように見受けられます。岩屋大臣と石破総理は、イスラエルに対してとり得る措置について言及されたと思いますが、それはどのような措置なのでしょうか。また、パレスチナの国家承認を求める他の政党の懸念には、どう対処していくお考えですか。

【岩屋外務大臣】自民党が国家承認に反対しているというのは、事実誤認だと思います。何度も、ここでも申し上げてまいりましたように、我が国は、一貫して「二国家解決」を支持してきておりますので、国家承認の問題は、「するかしないか」という問題ではなくて、「いつするか」という問題だ、ということを申し上げてまいりました。その姿勢に何ら変わりはございません。
 重要なことは、パレスチナが、持続可能な形で存在して、イスラエルと共存するということですので、今、トランプ大統領の提案に基づいて、協議も進んでいる、行われていると承知しておりますが、そういう将来の「二国家解決」、真の意味の「二国家解決」に向かって、着実に歩を進めることが大事で、我が国もそのための取組、努力支援というものをしっかりやっていきたいと思っております。
 それから、自民党が、これからどういう政党と協力していくかというのは、外務大臣の立場から申し上げることは控えたいと思います。多くの政党が、この問題についても、高い関心をもっておられると思いますので、そういう協議の中から、あるべき姿というものが求められていくのだろうと考えておりますけれども、どの政党と、どういう枠組みを作るのか作らないのか。これは、党のレベルで、今、取り組んでいることだと思いますので、私(岩屋大臣)の立場から申し述べることは控えたいと思います。
 我が国は、冒頭に申し上げたように、あくまでも「二国家解決」ということに向かって、着実に努力を続けていきたいと思っております。イスラエルに対しては、「二国家解決」の土台が、完全に崩されるような事態に発展した場合には、新たな対応を我々が取るということを明言しておりますので、その場合は、制裁や、あるいはパレスチナ国家承認を含めた、あらゆる選択肢を排除せずに、検討するということになります。

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