記者会見

岩屋外務大臣会見記録

(令和7年8月1日(金曜日)15時21分 於:本省会見室)

(動画)岩屋外務大臣会見の様子

冒頭発言

(1)ミャンマー情勢(緊急事態宣言の解除)

【岩屋外務大臣】冒頭二つ、申し上げます。
 一つは、ミャンマー情勢です。昨日ミャンマーで緊急事態宣言が解除され、本年12月から来年1月までの間に、総選挙を実施することが発表されたことを受けまして、私(岩屋大臣)から、大臣談話を発表したところです。
 ミャンマーでは、クーデターから4年半がたつ今もなお、状況改善の兆しが見られないことを深刻に懸念しています。
 我が国としては、今般発表された総選挙は、民主的な政治体制の回復に向けたプロセスとして位置づけられるべきだと考えています。したがって、政治的進展に向けた動きが見られないまま総選挙が実施されるような事態となれば、ミャンマー国民による更なる強い反発を招きかねない。したがって、平和的解決が、より困難になるということを、深刻に懸念しているところです。
 こうした考え方の下に、緊急事態宣言が解除された今こそ、ミャンマー国軍に対して、暴力の即時停止、アウン・サン・スー・チー氏を含む被拘束者の解放、民主的な政治体制の早期回復について、国軍が具体的な対応をとるように強く求めていきたいと思います。
 同時に、ミャンマー全土における停戦と、その確実な履行が達成されて、全ての当事者が平和的な問題解決に向けて、真摯に努力していくことを強く求めてまいります。

(2)CTBTO事務局長とNPT運用検討会議議長候補の訪日

【岩屋外務大臣】次に、被爆80年の節目に当たり、我が国は、「核兵器のない世界」に向けた国際社会の取組を主導していく決意です。
 その一環として、8月3日から、ロバート・フロイド包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)の事務局長、また、8月4日から、ドー・フン・ヴィエット2026年NPT運用検討会議議長候補を、我が国に招聘し、私(岩屋大臣)は、それぞれの方と面会をする予定です。また、フロイド事務局長は、広島及び長崎の平和祈念式典に参列する予定ですし、ヴィエット議長候補は、広島の式典に参列される予定です。
 今回の招聘を、「核兵器のない世界」に向けた両者との連携を深める機会にしたいと考えているところです。
 冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。

核兵器廃絶と拡大抑止の両立

【共同通信 鮎川記者】冒頭の御発言に関連して、日本の核政策について伺いたいと思います。先般、弊社の、共同通信の報道なんですけれども、日米両政府の外務・防衛当局が参加している、いわゆる核戦力を含めた拡大抑止の協議で、米国軍による核使用のシナリオというものを議論していたということが明らかになりました。先ほど、大臣が御紹介されたように、今年は、被ばくの節目の年でもありまして、日本政府は、「核なき世界」というものを追求している一方で、現実では、米国の核の傘に依存していると。更に、近年の厳しい安全保障環境を踏まえて、核戦力を含んだ拡大抑止というものへの依存というものも深めているかと思います。そうした中で、日本政府として、核廃絶を目指していくという動きと、その拡大抑止を強化していくという動きと、それをどのように両立する考えなのかをお伺いします。

【岩屋外務大臣】御指摘の報道については承知しておりますが、その内容の逐一についてコメントすることは、差し控えたいと思います。
 いずれにしても、我が国としては、米国政府と緊密に意思疎通を図って、核抑止力を含む米国の拡大抑止の信頼性を、これまで以上に、強化していく考えです。
 核兵器廃絶に向けた取組と、拡大抑止の信頼性の強化という取組は、私(岩屋大臣)は、必ずしも矛盾していないと考えております。なぜならば、世界で唯一の戦争被爆国である我が国、したがって、核兵器の廃絶を最終的に目指していかなければならないということと、残念ながら、核戦力の拡大が続いている、またその核戦力に取り囲まれているという状況の中で、二度と我が国に核兵器を使わせてはならないということも、これまた大切なことだと思っておりますので、そこは必ずしも矛盾するものではないと考えております。
 いずれにしても、現下の国際情勢の下で、「核兵器のない世界」に向けての道のりというのは、ある意味一層厳しいものとなっておりますけれども、そうであるからこそ、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国と非保有国の架け橋になるというか、双方としっかり連携しながら、「核兵器のない世界」に向けた唯一の普遍的な枠組みであるNPT体制の下で、現実的かつ実践的なアプローチをこれからもしっかり継続してまいりたいと思っております。
 なお、日米拡大抑止協議においては、議題の一つとして、机上演習が定期的に含まれております。直近の2025年6月の、日米拡大抑止協議においても机上演習を実施したと承知しておりますが、その内容に関する詳細については、事柄の性質上、お答えすることは差し控えさせていただきます。

日韓外相会談

【読売新聞 植村記者】先日の韓国外相との外相会談に関して伺います。先方の大臣の方は、初めての外遊先で、日本を訪問されましたけど、そのことに関しての受け止めを改めて伺いたいのと、実際その会談の中で、日韓関係を今後発展させて行くために、どういった取組であったり、方策が必要だというふうな話し合いが行われたでしょうか、よろしくお願いします。

【岩屋外務大臣】まず、趙顕(チョ・ヒョン)新長官ですが、就任間もなく、最初の訪問国として日本を選んでいただいた、我が国を訪問していただいたということは、歓迎をしたいと思っております。
 これまで、もう首脳会談は一度できておりますけれども、韓国の新政権発足以降、そういったハイレベルを含めて、日韓間の意思疎通が緊密に行われていることも、評価をしたいと思っております。
 そして、先日の外相会談では、日韓のハイレベルの交流、「シャトル外交」という言い方もしていますけれども、そういうものをどんどんと進めていこうということで一致を見たということと、日米韓の連携をしっかりやっていきましょうということでも一致を見ました。また、この地域のことを考えると、日中韓の枠組みも大切なので、それにもしっかり取り組んでいきましょうということも、話をさせていただきました。
 いずれにしても、今、良好なその状況にある日韓関係を、更に維持し、発展させていきましょうということで、一致を見たところです。今後とも、趙顕長官との間で、緊密に意思疎通を図っていきたいと考えております。

パレスチナ国家承認

【朝日新聞 加藤記者】パレスチナの国家承認をめぐる各国の動きについて伺います。29日の会見で見解を伺いましたが、フランスに続いて、G7では、英国やカナダも一定の条件付きでパレスチナを国家承認する意向を表明しています。この動きの受け止めと、国家承認に関する日本の立場を、改めてお聞かせください。また、G7の3か国が承認の意向を示す一方で、米国のルビオ国務長官は、批判的な姿勢も示しています。G7として一定の結束を保つために、日本としてどのような役割を果たしたいかも併せて伺います。

【岩屋外務大臣】今、このパレスチナの国家承認の問題について、G7各国、様々な発信がされております。我が国としては、重大な関心を持って、その動向を注視しているところです。
 一方、我が国の考え方は、累次の機会に申し上げておりますが、「二国家解決」を一貫して支持していく、そして、独立国家樹立に向けたパレスチナの方々の希望を理解し、これに向けたパレスチナ人の努力を支援していく、という考え方に全く変わりはありません。
 この観点から、パレスチナをめぐる情勢や、今の国際的な議論について、引き続き、高い関心を持って注視していきたいと思っております。
 先日、ニューヨークで行われた国際会議においては、我が国も政府代表を派遣し、ノルウェーとともに、パレスチナの経済的自立性についての分科会の共同議長を務めたところです。
 我が国としては、和平の進展を後押しするという観点から、パレスチナの国家承認について、その適切な時期や在り方も含めて、引き続き、総合的な検討を行っていきたいと考えております。
 G7の結束は、やはり極めて重要だと思っております。したがって、米国を含むG7諸国と、この問題についても緊密に意思疎通を行っていきたいと考えております。
 問題は、何が効果的かというか、実現に結びついていくかということを、真剣に考えなければいけないと思っており、「二国家解決」ということを実現するために、何が本当に効果的で、また実際的なのかということを、我が国としては、真剣に考慮して判断していきたいと思っています。
 非常に悪化しているガザ地区の人道状況、また、ヨルダン川西岸地区の人道状況を改善することが、これはもう何より先決だと思っております。そのことのためにも、我が国として、最大限の外交努力を行ってまいりたいと考えております。

日米関税協議(相互関税、自動車関税)

【日経新聞 馬場記者】日米関税交渉についてお伺いします。トランプ大統領が相互関税の大統領令に署名をしまして7日後から発動されます。赤澤大臣を中心に交渉を進めてきた成果となりますが、改めて受け止めをお伺いします。また、政府のご説明では、品目税率が15%未満のものは一律15%、15%以上のものには追加関税を課されないというご説明でしたが、日本はEUと違ってホワイトハウスの発表にその旨が記載されていませんでした。政府の説明とおりで間違いがないのか、重ねてお伺いします。そして、自動車関税については、まだ時期が示されていません。このことへの御認識も併せてお伺いします。よろしくお願いします。

【岩屋外務大臣】今般の日米関税交渉ですけれども、現下の状況の中においては、粘り強い交渉によって、最善の結果を得られたのではないかと考えております。改めて交渉担当の赤澤大臣を始め、スタッフ諸君に敬意を表したいと思っております。
 米国時間の7月31日、トランプ大統領は、相互関税に関する大統領令に署名をし、日本の関税率は15%とされたと承知しております。発表がなされたばかりですので、その詳細については、これからしっかり精査をする必要があると考えております。
 政府としては、引き続き、米側に対して自動車、自動車部品関税の引き下げを含め、今般の合意を実施するための措置、つまり15%というその合意を実現するための措置を速やかに取るように求めてまいります。
 今般の日米間の合意では、相互関税については、25%まで引き上げるとされていた日本の関税率を15%にとどめることができております。また、その意味は、この税率は、既存の関税率が15%以上の品目には課されず、15%未満の品目についても既存の関税率を含め15%となるとの認識です。したがいまして、米側に対して、今般の合意を実施するための措置を速やかにとるように求めてまいります。

日米関税協議(対米投資)

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】お疲れ様です。イスラエル・パレスチナ、ガザ、そして日米関係について質問いたします。
 米国共和党のリンジー・グラハム上院議員が、ABCのインタビューで、「イスラエルは、ガザにおいて、米国が、東京やベルリンでやったことをやる。武力でその場所を奪う」などと述べました。この発言は、罪なき先住民のパレスチナ人にとって、とんでもない犯罪的な暴言だと思います。第二次大戦時、米国は、日独を武力で降伏させ、政治的主権を奪い、その占領軍は、今も両国に居座っています。日本が、今なおガザ同様、米国の暴力的支配と収奪の対象であることは、先の、今お話がありましたけれども、関税交渉での80兆円の投資を日本に強制し、その利益の9割を米国がぶんどるという、搾取そのものの屈辱的な不平等合意のゴリ押しでも明らかです。この屈辱をはねのける気概が、日本政府、及び外務省にはないのか、岩屋大臣の考えをお聞かせください。よろしくお願いします。

【岩屋外務大臣】今般の日米間の合意は、総理が当初から一貫して述べておられたように、「関税より投資」だという一貫した考え方に基づいて、守るべきものは守った上で、そして、日米両国の国益に資する形になっていると考えております。
 米国は、すべからく、関税で、解決しようということで、当初、世界各国に呼びかけをしていたということだと思いますが、既に我が方は、日米貿易協定というものを持っておりましたし、下げるべき関税は、一番世界の中でも、米国に対しては下げているという国でしたので、そこで関税ではなくて、投資ということを通じて、米側にも日本側にも大きな利益を生むことができる、いわゆるウィン・ウィンの関係を作っていきましょうということを交渉の基本方針として、これまで交渉してきて、合意に至ったということですので、その意味では、収奪されたとか簒奪されたという御指摘は当たらないのではないかと考えております。
 今回の合意は、これから双方が誠意を持って実行していかなければなりませんが、日米間の経済安全保障上の結びつきを強化し、日米関係の、より強化を図っていくという点で、大きな異議がある合意だったと考えており、また、そのようにしていかなければいけないと思っておりますので、冒頭おっしゃったようなご指摘は当たらないと考えているところです。

日韓外相会談

【共同通信 鮎川記者】先ほど、読売新聞社さんの質問にあった韓国の外相との会談の関係で追加でお伺いします。先ほど大臣ご紹介いただいて、日中韓という枠組みも大事だという話をしたということだったのですけれども、今年は、日本が日中韓の枠組みの首脳会議の議長国を務めています。今、8月に入りましたけれども、3月に3か国の外相会談を日本でやりまして、次は首脳会談になるかと思うんですが、この辺り、韓国との2か国でしか今回は話してませんけれども、どういった目途とか、どういう時期にやりたいとか、その辺りのことを見通し等、伺えればと思います。

【岩屋外務大臣】日中韓の枠組みというのは、先般、外相会合もやらせていただきましたが、今般、韓国の外相が交代になりましたので、それも、ぜひ早期に、外相の集まりもやりたいなあと話はしましたが、首脳会議についても日程調整していかなければなりません。今、いつ開催することになるかということが、決まっているわけではありませんけれども、それぞれの内政上の都合もあるでしょうから、しっかりと調整して、しかるべき時期に、首脳会談というものも、ぜひ、実現していきたいと考えております。

日米関税協議(発動発表のタイミング)

【毎日新聞 田所記者】関税の米国側の発表の仕方についてなんですけれども、日本の新税率の15%が適用されるのが7日と明らかになったのが、日本時間の今日午前ということで、日本企業が10%適用を受けたくて7月末までに駆け込み輸出をするなんて動きもおそらくあったと思われるんですけれども、実は1週間後だったと。今日になって分かったりして、ちょっと日本企業は混乱したりもしたと思うんですけれども、そういう米国側の発信についてどう評価されますでしょうか。

【岩屋外務大臣】米側には合意内容を誠実に、できるだけ速やかに発動してもらいたいと、一貫して申し上げてきたところです。これは、その中で憶測ですけれども、我が国のみならず、あらゆる国との関税交渉を取りまとめて、それを大統領令にして発動させていくという作業が、必ずしも円滑に進んでいないところがあるのかなと、これは私(岩屋大臣)の推測ではありますが、しかし、事業者の皆さんにとっては、予見可能性ということが非常に大事ですので、引き続き、今般の妥結内容、合意内容を速やかに発動してもらうように働きかけを強めてまいりたいと考えております。

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