記者会見

岩屋外務大臣会見記録

(令和7年7月29日(火曜日)15時52分 於:本省会見室)

(動画)岩屋外務大臣会見の様子

冒頭発言

(1)外務省の機構改革

【岩屋外務大臣】冒頭、二つ御報告がございます。
 本日の閣議決定を踏まえ、8月1日から外務省の機構改革が行われます。
 もう既に内容は御案内のことと思いますけれども、今回の機構改革は、国際情勢が激動する中で、外務省が時代の要請する任務を遂行できるようにするための体制を、組織横断的に構築するものです。
 また、2027年3月から、横浜で開催予定の「GREEN×EXPO 2027」に向けた準備を加速すべく、同じく8月1日付で、「2027年国際園芸博覧会室」を新設いたします。
 新たな体制の下で、これまで以上に機動的かつ戦略的に外交政策に取り組んでまいります。

(2)日韓外相会談及びワーキング・ディナー

【岩屋外務大臣】2番目に日韓外相会談についてです。
 本日から明日まで、就任間もない趙顕(チョ・ヒョン)韓国外交部長官が訪日されます。
 日本と韓国は、互いに国際社会の様々な課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国です。
 この後の日韓外相会談、及びワーキング・ディナーにおきまして、日韓関係の安定的な発展に向けて、また、地域情勢や国際情勢、日韓米の協力について、趙長官との間で、じっくりと議論し、そして信頼醸成を図っていきたいと考えております。
 冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。

外国勢力からの選挙介入

【日経新聞 馬場記者】参院選期間中の、外国勢力からの選挙介入についてお伺いします。政府内で介入に警鐘を鳴らす発言が相次ぎ、内閣官房への対策組織設置などを求める声も上がっています。外務省として、この厳しい国際環境の下で、どう対応していくべきだとお考えになるか、また、日本の同志国とどのように連携していかれるお考えか、お伺いします。

【岩屋外務大臣】今おっしゃったような選挙期間中のSNSを使った偽情報の拡散、あるいは外国勢力からの選挙介入については、しっかり対応することが必要だと考えております。
 国家安全保障戦略においても、偽情報などの拡散を含めて、認知領域における情報戦への対応能力を強化することとされております。
 また、先般、7月1日に内閣官房に国家サイバー統括室が設置されましたけれども、そこにおいて、今、御指摘のあった件なども、しっかり検討してもらいたいと考えております。
 外務省としては、我が国の外交政策に関する情報空間の動向については、AIなども活用しながら、情報収集・分析を行っております。その結果を踏まえた戦略的対外発信を適時適切に行うようにも努めておりますが、引き続き、関係省庁とも緊密に連携しながら、必要な対処を行っていきたいと思います。
 また、外国からの情報操作につきましては、これまでもG7などの多国間の枠組みに加え、米国など同志国間で、情報共有や対応能力の強化に向けた協議などを行っております。引き続いて、問題意識を同じくする国と連携して、対応能力を一層強化してまいりたいと考えております。

パレスチナ国家承認

【時事通信 千葉記者】パレスチナの関係でお伺いします。フランスのマクロン大統領が、パレスチナを国家として承認することを表明し、今日、国連での会合でも各国に呼びかけを行っていると思います。G7で国家承認は初めてとなりますが、この動きをどう見ていらっしゃるか、また、日本としての立場について改めて教えてください。

【岩屋外務大臣】我が国は、御承知のように「二国家解決」、これを一貫して支持してきております。これに一切変わりはございません。独立国家樹立に向けたパレスチナの人々の希望を理解して、これに向けたパレスチナ人の努力を、我が国は支援してまいりました。
 この観点から、パレスチナをめぐる情勢や国際的な議論については、御指摘の国家承認の件も含めて、高い関心を持って動向を注視しております。
 現在、ニューヨークで行われている国際会議におきましては、我が国は、政府代表を送ってノルウェーと共に、パレスチナの経済的自立性についての分科会の共同議長を務めているところです。
 和平の進展を後押しする観点から、パレスチナの国家承認につきましては、その適切な時期や態様も含めて、引き続いて、総合的な検討を行っていきたいと考えています。
 また、我が国は、パレスチナ支援の独自のイニシアティブとして、私(岩屋大臣)が参加した、この7月11日のマレーシアでの、私(岩屋大臣)が議長を務めた「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合」(CEAPAD)の閣僚級会合を開催いたしました。ここでは、人道支援、復旧・復興支援、パレスチナ自治政府(PA)の改革支援のための行動計画を採択したところです。今後、そのフォローアップも行いながら、引き続き、パレスチナ人の努力をしっかりと、我が国として、支えていきたいと考えております。

中国における邦人拘束

【共同通信 鮎川記者】中国における邦人拘束について伺います。一部の報道によると、中国当局の説明などから、日本政府が内容を把握した判決の中身について、これまでスパイ行為をしたとか、中国の国家の安全に危害を加えたというような理由で拘束された17人の日本人の方のうち、9人の方が日本の情報機関に報酬と引き換えに情報を渡したと、そういうふうに中国が認識しているという報道があったのですが、事実関係について伺います。
 また併せて、関連してビジネス等々で中国に訪問したり、滞在したり、常駐したりされる方に注意喚起があれば、それを伺いたいと思います。

【岩屋外務大臣】まず、御指摘の報道については、当事者のプライバシー保護の観点から、立ち入ってお答えすることは差し控えたいと思います。公安調査庁の情報収集活動については、公安調査庁にお尋ねいただきたいと思います。
 政府としては、中国における拘束のリスクについて、従来から様々な形で邦人の皆さんへの注意喚起を行ってまいりました。その上で、中国においてどういった行為がいわゆるスパイ行為とみなされる可能性があるのか、違法な行為とみなされる活動があるのかなど、渡航・滞在の際の注意点について、引き続き周知をすることが必要だと考えており、22日にも、スポット情報という形で改めて注意喚起を促しているところです。それを御覧いただければ、内容については、すぐ分かると思います。
 今後も、こうした注意喚起を一層強化していきたいと考えておりまして、邦人の安全確保に万全を期してまいりたいと思います。
 また、拘束されている邦人の早期釈放・解放を、引き続き、中国当局に求めてまいりたいと考えております。

西サハラ(ポリサリオ戦線)のTICAD参加

【パン・オリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 北西アフリカについてお伺いします。
 来月開催予定のTICADには、50を超える国々が参加予定です。これは、日本がアフリカ大陸の発展に非常に重要な役割を果たしていることを反映するものです。その中、一部の報道で、日本や国連加盟国の大多数が承認していない、いわゆるサハラ・アラブ民主共和国を代表してポリサリオ戦線が参加するとの報道があります。実際に、日本の警察は、米国の一部国会議員と同様、この組織をテロ組織と認定しています。
 そこでお伺いします。ポリサリオ戦線のTICADへの参加は、それを承認せず、テロ組織と認定する日本政府の方針と矛盾するのではないでしょうか。見解をお伺いします。 

【岩屋外務大臣】我が国は、今おっしゃった、通称西サハラを国家承認はしておりません。TICAD9におきましても、我が国として西サハラを招待しないという方針に変更はありません。
 ただ、TICADは、我が国とAU委員会との共催ということになっておりまして、TICADの参加範囲につきましては、これまでも共催者であるAU委員会と協議を行ってきておりますが、その詳細については、外交上のやり取りですので、控えさせていただきます。
 なお、我が国は、テロ組織を法的に認定するような制度は有しておりません。日本政府が、したがって今、御指摘のあったポリサリオ戦線をテロ組織に指定しているといった事実はございません。
 過去のTICADにおきましては、TICADの共催者であるアフリカ連合委員会(AUC)が、AUメンバーである西サハラを招待したこともあるとは承知をしているところです。

スパイ防止法をめぐる議論

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】スパイ防止法について2点、質問します。2025年6月12日の参議院外交防衛委員会で、自民党の高市早苗氏らが諸外国と同水準のスパイ防止法制定を提言し、これに対して岩屋大臣は、「国民の基本的人権に配慮しつつ、多角的に検証すべき」であり「国民の十分な理解が得られることが望ましい」との見解を示されました。大臣のスパイ防止法についての考えについて、もう少し具体的に教えていただけますでしょうか。
 また、参政党の神谷代表や日本保守党の北村晴男氏らが、秋の臨時国会でのスパイ防止法の成立を目指して、保守派の国会議員との間で意見交換を開始した旨、Xに投稿しております。大臣は、こうした動きをどのように御覧になっているでしょうか。御教示ください。よろしくお願いします。

【岩屋外務大臣】まず、政府としては、国の重要な情報の保護を図るべく、カウンターインテリジェンスの取組を強化するなど、必要な対策を講じてきているところです。
 スパイ防止法とよく言われますけれども、いわゆるスパイ防止法であって、その中身は何なのかということが、必ずしも明確ではありませんので、イメージだけでこれを議論するというのはいかがなものかと、私(岩屋大臣)は考えているところです。
 我が国の情報保護については、私(岩屋大臣)はこの間、かなり前進をしてきたと考えておりまして、例えば、特定秘密保護法、このときも大変な議論になり、常時国会がデモ隊に取り囲まれるという状況の中で、激しい議論が交わされましたが制定されました。私(岩屋大臣)は、衆議院の情報監視審査会の最初からのメンバーでして、後に会長も務めさせていただきましたが、各省庁にまたがっているいわゆる特定秘密については、適正に現在、管理されていると考えております。
 そのほか、防衛機密あるいは日米同盟に関する機密等については、既に現行法によってカバーされております。これに加えて、経済安全保障の情報保護法ができまして、セキュリティ・クリアランスの制度もスタートしておりますし、機密保護・情報保護ということに関しては、かなりしっかりとカバーされてきていると思います。
 特定秘密保護法は、量刑については、最高で10年の懲役、1,000万円以下の罰金ということになっておりますし、そういう様々な現行法によって、いわゆる国家機密なるものがカバーされている中で、しからばスパイ防止法というのは何を言っているのか、どんな情報を、どのような行為を罰するのか、どういう量刑にするのかということが、この段階では明らかにされていないまま、言葉だけが躍っているという状況ですので、これは多角的に、慎重に検討していく必要があるということを申し上げているところです。

石破総理の続投方針

【共同通信 鮎川記者】政務の関係で少しお伺いしたいと思います。昨日、参院選を総括する自民党の両院議員懇談会が行われて、党内で石破首相の退陣を求めるような声も結構広がっているというふうに報じられていますが、大臣は、首相を支える内閣の一員として、どのように受け止めておられるか、また参院選で過半数割れをしたという、大敗と言っていいかと思いますが、結果についての責任の取り方というのをどのようにするべきと考えておられるか、伺えますか。

【岩屋外務大臣】この御質問については、大臣の立場を離れてお答えをさせていただきたいと思います。
 昨日の両院議員懇談会、私(岩屋大臣)も参加をいたしました。4時間半に及んだということでしたけれども、後の予定がありまして、3時間は現場におりました。閣僚という立場ですので、発言は控えさせていただきましたが、それぞれの同僚議員の御発言をしっかり聞かせていただいたところです。
 総理・総裁を目の前にして、自由闊達な、ちょっと闊達すぎるかなという感じもしましたが、議論が行われるというのは、ある意味、自民党らしいというか、自民党の良き伝統なのかなと感じましたし、それは開催の意義は大いにあったと感じております。
 しかし、議論を通じて私(岩屋大臣)が強く感じたのは、今般の参議院選挙の結果、生まれた現在の政治状況についての認識が、十分ではないのではないかということを総じて感じた次第です。今や衆参ともに与党は過半数を失っているわけですから、与党だけでは日本の政治は前に動かない、政策が揃っていない、野党が集結したとて政権運営はできそうにない、しかし、国政の停滞は許されない、内外に難題を抱えたまま、迅速果断な対応が求められている、そういう中で、長らく政権を担ってきた自民党が、どう振る舞うべきかということが最大の課題であり、そのことが、今、問われている政治状況だと私(岩屋大臣)は考えております。
 総裁に、選挙結果に対する責任がある、執行部にもある、これは組織論として当然のことだと思います。しかし、かかる政治状況の中にあって、内閣総理大臣としての責任は、それ以上に重たいものがあると私(岩屋大臣)は考えております。それらを比較考量して、石破総理が、ここは続投して遅滞なく日本の政治を前に進めたい、対米関税協議のフォローも含めて、しっかり国民の皆さんに御心配をかけることがないようにやりたいという判断をされたのだと思います。
 そうであるならば、これを尊重し、しっかり支えていきたい考えているところです。

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