記者会見
岩屋外務大臣会見記録
(令和7年6月27日(金曜日)13時50分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)岩屋大臣の米国訪問
【岩屋外務大臣】冒頭、いくつか報告がございます。
まず、米国訪問についてです。
私(岩屋大臣)は、6月30日から米国を訪問して、7月1日に米国主催でワシントンD.C.において行われる日米豪印、クワッドの外相会合に出席する予定です。
日米豪印は、基本的価値を共有する4か国が、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、海洋安全保障、経済安全保障、サイバーセキュリティ、こういった幅広い分野で、実践的な協力を進めていく取組でございます。
本年1月のワシントンD.C.での前回の会合に続きまして、外相間で、戦略的かつ率直な意見交換を行ってきたいと思っております。今回のクワッドの外相会合を通じまして、インド太平洋地域へのこの4か国の力強いコミットメントを、国際社会に示す機会にしたいと考えております。
また、滞在中に、ルビオ国務長官との間で、日米外相会談を実施する予定です。同じく、インド及び豪州との外相会談につきましても現在調整中です。
(2)イラン・イスラエルからの邦人退避
【岩屋外務大臣】それから、次にイラン・イスラエルからの邦人退避についてです。
我が国として、今般のイスラエル・イラン間の停戦合意が、着実に実施されていくことを強く期待しています。双方に対しまして、停戦合意の着実な実施を働きかけるとともに、米・イラン協議を始めとする対話の道が再開されるように、引き続き、あらゆる外交努力を行ってまいります。
また、邦人の安全確保も外務省の重要な役割です。これまでに、イラン・イスラエルそれぞれから、計128名が、アゼルバイジャン、又はヨルダンに無事に退避することができました。
邦人退避に御協力をいただいたアゼルバイジャン及びヨルダンの政府を始め、全ての関係者に、深く感謝申し上げたいと思います。引き続き、現地の状況をしっかりと把握して、邦人の安全確保に万全を期してまいります。
(3)参議院議員通常選挙に伴う在外公館等投票の実施
【岩屋外務大臣】3番目に、参議院の通常選挙に伴う在外公館投票の実施についてです。
第27回参議院議員通常選挙の実施に伴いまして、公示日翌日の7月4日から、世界各地の日本大使館や総領事館等におきまして、在外公館等投票が開始されます。投票終了日は各公館によって異なるのですけれども、最短で7月11日、最長で7月14日までとなります。
外務省としては、海外在留邦人の皆様の積極的かつ、適正な選挙参加を促進するために、広報に努めて、投票を呼びかけていく考えでございます。
冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。
ドイツにおける慰安婦像
【産経新聞 松本記者】慰安婦問題に関してお伺いします。ドイツのボンにある博物館で、慰安婦問題を象徴する像が設置されることになりまして、近く除幕式が行われる予定です。過去の類似のケースと同様、日本政府としては、撤去を求めていくことになるのか、方針をお聞かせください。また、今回の件に限らず、慰安婦問題に関する日本政府の立場について、国際社会の理解を得るために、どのような取組が今後必要になっていくか、お考えを聞かせください。
【岩屋外務大臣】御指摘の慰安婦像の設置は、我が国政府の立場やこれまでの取組と相容れない、極めて残念なことだと考えております。
政府としては、これまでも様々な関係者にアプローチをし、我が国の立場について説明をし、強い懸念を伝えてまいりました。ドイツについても同様です。今後とも、関係者に対して適切な対応を求めてまいります。
それと同時に、引き続き、この慰安婦問題についての我が国の考え方や、これまでの真摯な取組について、様々な機会を捉えて、国際社会に対し、明確に説明を行ってまいりたいと考えております。
岩屋大臣のオランダ訪問
【日経新聞 馬場記者】NATOサミットについてお伺いします。今回のNATOサミットに合わせて、オランダ国王主催の晩餐会が開かれました。石破総理の代わりに、岩屋大臣が御出席されるべきだったのではという、専門家の方の指摘も出ています。オーストラリアからは副首相、韓国からは国家安保室長が参加されたとのことですが、岩屋大臣の御出席がかなわなかった理由が、もしありましたらお伺いいたします。
【岩屋外務大臣】御指摘のオランダ国王・王妃両陛下主催の晩さん会については、事前にオランダ政府から、首脳のみが出席可能であるという説明を受けておりました。
その後、総理がNATO首脳会合に出席されないということが決定した段階で、改めて、首脳以外の出席の可否をオランダ政府に確認をいたしましたけれども、従来と同様の説明がございましたので、主催国の考え方を尊重して、出席をしないということにしたところでございます。
原爆投下に関するトランプ大統領発言
【中国新聞 宮野記者】米国のトランプ大統領が、イランの核施設への攻撃に関して、戦争を終わらせたとして、広島・長崎の原爆投下と「本質的には同じだ」と発言しました。原爆の使用を正当化し、戦争の終結を早めたというような言質でありますが、大臣の受け止めをお伺いします。また、抗議など、今後米側に、何らかの働きかけをされる考えがあるかも、併せて伺います。
【岩屋外務大臣】我が国としては、従来から申し上げておりますように、広島及び長崎に対する原爆投下は、大変多くの尊い命を奪い、病気や障害などで言葉に尽くせない苦難を強いた、人道上極めて遺憾な事態をもたらしたものだと認識しております。
また、核兵器の使用は、その絶大な破壊力、殺傷力の故に、国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないと考えております。
その上で、我が国としては、唯一の戦争被爆国として、核兵器による広島・長崎の惨禍は決して繰り返されてはならないという信念の下に、引き続き、「核兵器のない世界」の実現に向けて、現実的かつ実践的な取組を積み重ねていくことが大事だと考えております。
この原爆投下に関する我が国の基本的な考え方については、累次の機会に、米側に対して伝達してきているところでありまして、引き続き、米側とは緊密に意思疎通を図っていきたいと考えております。
イスラエル・イラン情勢(G7首脳声明)
【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】前回の会見で質問し、御回答いただけなかった点について、重ねて質問いたします。イスラエルは、核兵器保有が許され、イランはウラン濃縮すら許されない。イスラエルが国際法違反の先制攻撃をしても、イスラエルの自衛権だけが認められ、攻撃を受けたイラン側の自衛権は認められない。これは、非核保有国に対する差別的扱いのように思われます。また、石破総理は、イスラエルによる「先制攻撃」は到底許されないと毅然として発言されましたが、G7では、イスラエルの自衛権のみ特筆して認める不平等の声明に署名されました。日本も非核保有国であり、プルトニウムを蓄積している国でありながら、なぜ、このような署名をしたのでしょうか。よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】まず、イスラエルは、自国の核兵器保有を確認も否定もしないという方針をとっていると承知しておりますが、我が国は、国際的な核不拡散体制の維持・強化を重視する立場ですので、こうした我が国の考えは、イスラエルを含む関係国に対して、様々な機会を捉えて伝達してきております。
イスラエルもNPTに参加すべきだということも、一貫して伝えてきているところです。今後も、こういう外交努力を続けていきたいと思います。
その上で、先般のG7サミットでは、当然、サミットでの合意文書ですので、我が国の考え方だけではなくて、イスラエル・イラン間での攻撃の応酬が行われていた情勢を受けて、首脳間での議論を踏まえて、首脳声明の発出に至ったという経緯でした。その声明の中で、中東地域における平和と安定に対するG7としてのコミットメントをまず強調し、その文脈において、イスラエルは自国を守る権利を有するということを確認したところでして、イスラエルの一連の行為を自衛権の発動として認めるという趣旨の文章ではないと、御理解をいただきたいと思います。
また、同文書の中で、協議を通じたイラン核問題の解決の重要性が、首脳間で確認をされたということでした。
我が国としては、言うまでもなく、事態の沈静化が極めて重要だと、そして、交渉によって問題が解決されるべきだという考え方でございまして、24日に行われた米国によるイスラエルとイランとの停戦合意が、双方において着実に実施されていくことを期待しておりますし、そして、米・イラン協議を始めとする対話の道が、他にも、E3を始め、様々な国が、この対話の再開に努力していただいていますし、私どもも、働きかけていますけれども、この対話の道が再開されるように、引き続き、必要なあらゆる外交努力を行っていきたいと考えております。
フェンタニル不正輸出
【日経新聞 馬場記者】フェンタニルについてお伺いします。米国に合成麻薬フェンタニルを不正輸出する中国の組織が、日本に拠点を作っていた疑いがあると、弊社の取材で判明いたしました。事態の受け止めと、政府の今後の対応、関税交渉を含む日米関係に及ぼす影響についての御見解をお伺いいたします。
【岩屋外務大臣】御指摘の日経さんの報道については承知しておりますが、その上で申し上げますと、我が国は、フェンタニルを始めとした薬物の管理を厳しく行っている。御承知のとおりでございます。この合成麻薬を含む違法薬物の製造、販売、所持・使用はもちろん、許可を得ない輸出入を絶対に許さないという観点で、これまでも適切に対応してきております。
その上で、我が国としては、フェンタニルの国際的な違法な製造、そして流通ネットワークを断ち切り、更なる被害を防ぐことが、重要だと考えております。
そのためには、言うまでもなく国際的な協力が不可欠でございまして、引き続き、米国を始めとする関係国、さらにはUNODC(国連薬物・犯罪事務所)といった国際機関との連携によって、このフェンタニルを含む違法薬物残らず、根絶に向けて積極的に取り組んでいきたいと考えておりまして、お尋ねの日米関係及び日米協議に与える影響というのは、現段階においてあるとは考えておりません。