記者会見

岩屋外務大臣会見記録

(令和7年6月20日(金曜日)15時15分 於:本省会見室)

(動画)岩屋外務大臣会見の様子

冒頭発言

(1)今国会会期末に当たっての外交活動の振り返り

【岩屋外務大臣】国会の会期末を迎えるに当たりまして、ここまでの外交活動を振り返って一言申し上げたいと思います。
 就任から約9か月が経過したところですけれども、国際情勢は、この間、日々激動しております。毎日緊張感を持って、日々の外交活動に取り組んできたところです。また、国会の会期中は、霞の記者の皆さんにも大変お世話になりました。今後ともよろしくお願いしたいと思います。
 この間、まず、日米同盟については、引き続き、我が国の外交・安全保障の基軸であるということから、しっかりと取り組んでまいりました。日米同盟は、インド太平洋地域の安定と繁栄の礎でもございます。1月のトランプ政権発足直後に訪米いたしまして、ルビオ国務長官との間で、揺るぎない日米同盟の重要性を確認するとともに、2月には、私(岩屋大臣)も同席した、石破総理とトランプ大統領との首脳会談におきまして、日米協力を更なる高みに引き上げていくことを、首脳間で確認をしたところです。
 また、国際秩序が大きく揺らいでいく中、法の支配に基づく、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けまして、同盟国・同志国、さらにはグローバル・サウスとの多層的かつ重層的な連携に、積極的に取り組んでまいりました。さらには、近隣の中国、韓国との間で、未来志向の建設的・安定的な関係を作るためにも、努力をしてきたところです。
 就任以来、対面での外相会談は90回以上となりました。また、外相電話会談は40回以上実施してまいりました。外国訪問も10回を超えまして、地球を約6.5周分回ったことになるそうです。
 引き続き、ウクライナや中東など、情勢は緊迫しておりますけれども、であればこそ、「対話と協調の外交」を通じて、国際社会における日本の役割を積極的に果たしてまいりたい。日本が、対立と分断に向かう世界を、協調と融和に引き戻していく、そういう役割が果たせるように、努力してまいりたいと考えております。

(2)岩屋大臣のオランダ訪問

【岩屋外務大臣】それから、今後の予定ですけれども、6月24日から26日まで、NATO首脳会合に出席する石破総理大臣に同行いたしまして、オランダ王国のハーグを訪問する予定です。G7を始めとする各国と二国間会談などを行いまして、現下の重要な国際課題について、しっかり協議してまいりたいと考えております。

(3)岩屋大臣の沖縄県訪問

【岩屋外務大臣】それから、6月23日、私(岩屋大臣)は、外務大臣に就任して以降、初めて沖縄県を訪問いたします。戦後80年、沖縄全戦没者追悼式に参列する予定です。
 同式典は、沖縄戦において、戦場に斃(たお)れられた御霊(みたま)、また、戦禍に遭われ亡くなられた御霊(みたま)に思いを致す、大切な機会でございます。外務大臣として、謹んで哀悼の意を表するとともに、沖縄戦で犠牲になられた全ての方々の御冥福をお祈り申し上げてきたいと考えております。
 冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。

イスラエル・イラン情勢

【読売新聞 上村記者】中東情勢に関してお伺いします。今日で、イスラエルとイランの交戦が始まってから1週間となります。まず、日本政府の立場を確認させていただきたいんですが、この間出たG7の声明では、イスラエルの自衛権について言及されました。今回の攻撃が、イスラエルの攻撃が、自衛権の行使に当たるのかどうか、国際法上、どのように評価しているのか、日本政府の御見解をお聞かせください。併せて、イランの自衛権については、どのように評価されているのか、これもお聞かせください。

【岩屋外務大臣】イスラエル・イラン情勢については、我が国としては、事態の沈静化に向けた外交努力が何より重要だと考えております。G7サミットでは、イランの核兵器開発は決して許されないということ、そして、協議を通じた核問題の解決が重要であることなどが、首脳間で確認をされたところです。
 これを受けて発出された声明におきましては、中東地域全体における平和と安定に対するG7のコミットメントを強調し、その文脈においてin this context という、その文脈において、イスラエルは、自国を守る権利を有していることを確認しているところです。したがって、今般のイスラエルが行った行為全般をもって、自衛権として確認しているという意味ではございません。
 その上で、イスラエルによる今般の軍事行動及びその後のイスラエル・イラン間の攻撃の応酬につきましては、事実関係の十分な把握が困難である中、確定的な法的評価を申し上げることは控えたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、冒頭に申し上げたように、我が国としては、全ての当事者が国際法に従って行動すること、交渉協議によってこの問題を解決することを、改めて強く求めたいと思います。
 今後とも、G7各国はもとより、国際社会と緊密に連携して、事態の沈静化に向けた必要なあらゆる外交努力を行ってまいりたいと思います。

日韓関係(日韓国交正常化60周年)

【時事通信 千葉記者】日韓関係についてお伺いします。明後日22日に、日韓国交正常化60年を迎えます。先日、総理と李在明(イ・ジェミョン)大統領も会談して、緊密に意思疎通を続けることで一致したとのことですが、大臣、日韓関係の現状をどう捉えていらっしゃるか、また、今後の日韓関係をどう発展させていくべきだと考えるか、併せて、歴史問題についてもどう管理していくか、お考えをお聞かせください。

【岩屋外務大臣】今、御指摘があったとおりで、先般、カナダにおいて、日韓首脳会談が行われました。非常に良好な雰囲気の中での会談だったと報告を受けております。
 また、昨日は、これも御指摘あったように、日韓国交正常化60周年の記念のレセプションが開催されまして、石破総理も御出席の下で、盛大に、和やかな雰囲気の中で開催をされたところです。
 1965年6月の国交正常化以来、日韓間には、様々な局面があったことは事実でございます。しかし、両国間の交流、幅広い分野での協力が、今日、拡大して、これが更に前に向かって進みつつあるという状況だと思います。
 日本と韓国は、お互い国際社会の様々な課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国関係でありまして、現下の国際情勢、あるいは戦略環境を考えれば、日韓関係、あるいは日米韓の協力の重要性は、従来にも増してきていると認識しております。
 したがいまして、今後とも、李在明大統領や、今後任命される外交部長官を始め、韓国側との間でも緊密に意思疎通を行っていきたいと思います。隣国であるがゆえに、難しい問題も存在しておりますけれども、我が国としては、歴代の内閣の立場を全体として引き継いでいるわけでございまして、日韓関係が未来に向かって、建設的安定的なものになるように一層努力してまいりたいと考えております。

日韓関係(日韓首脳会談)

【共同通信 鰍澤記者】日韓関係について関連して、先日のG7サミットでは、首脳間での「シャトル外交」についても継続することで一致しました。この会談に対する大臣の受け止めを、改めてお願いします。

【岩屋外務大臣】G7サミットの際に行われた日韓首脳会談、先ほど申し上げたように非常に良い雰囲気の中での会談だったと思いますけれども、そこでは、両首脳のリーダーシップの下に、日韓関係の安定的発展に向けて、両国政府間で緊密な意思疎通を推進していくことで一致をいたしました。すなわち「シャトル外交」みたいなものをこれからもしっかり進めていこうということで、一致をしたところでございます。
 今も両国関係は非常に良好な基調の下に進んでいると思っておりまして、特に、国民交流が、非常に活発に行われております。したがって、国交正常化60周年である今年も、政府としては、そういった取組をしっかり後押ししていきたいと思いますし、そういうことでも日韓間で一致を見ているところです。
 それから、先ほども申し上げましたが、ほどなく新しい外交部長官も任命されると思いますので、私(岩屋大臣)も、できるだけ早くお目にかかって、しっかりと意思疎通をしていきたいと考えております。

イスラエル・イラン情勢

【パン・オリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 中東で起こり得る核戦争について伺います。イスラエルによるイラン攻撃に米国が加わるのでは、との報道が世界中で出ています。トランプ大統領は、2週間後に決断すると述べましたが、そのようなことがいつ起こるかは誰にも分かりません。イスラエルとその同盟国の政府関係者の中には、イランに対する核兵器の使用を公然と求める声もあります。日本とG7は、イランの核開発計画のみに懸念を表明する一方、イスラエルの核兵器保有については、支持しているとまでは言わずとも黙認しているように見受けられます。このような戦争が核戦争に拡大した場合、日本と日本経済にどのような影響が及ぶとお考えですか?

【岩屋外務大臣】先ほども申し上げましたけれども、イスラエル・イラン情勢については、我が国としては、事態の沈静化に向けた外交努力、これが最も重要だと考えているところです。G7サミットでは、イランの核兵器開発は認められないということを声明として発表しております。また、同じく協議を通じた核問題の解決が重要であると、協議を通じた解決が重要であるということも、G7では発信をされているわけです。
 イスラエルによります今回の行動については、先ほども申し上げましたが、事実関係の十分な把握が困難であって、確定的な法的評価は控えたいと思いますけれども、いずれにしても国際法に従ってしっかり行動すること、協議によってこの問題を解決することを、強くこれからも求めていきたいと思っているところです。

岩屋大臣の沖縄県訪問

【朝日新聞 里見記者】冒頭、御発言のあった沖縄の訪問ですけれども、沖縄といえば、大臣は防衛大臣の頃に、辺野古の土砂投入が始まった経緯もあって、いろいろ思いがおありになるかと思うのですが、今回、この訪問の際に、例えば上空から現在の状況を視察をするとか、現地に赴くなど、そういった別の御予定を今お考えになっているのかとか、そのあたりをお聞かせいただけますでしょうか。

【岩屋外務大臣】今般の沖縄訪問は、極めて短時間になりますので、なかなか日程的な余裕がありませんが、外務省も事務所を構えておりますので、そういう事務方との現状確認というか、そういうことはやっていきたいと思っておりますけれども、なかなかその他に費やす時間がないのが現状です。
 辺野古につきましては、やはり一日も早く世界で一番危険だと言われる普天間飛行場の全面返還を成し遂げたいと、そのことによって沖縄の負担を軽減したいという思いで、当時、防衛大臣の時も、その作業に着手をさせていただいたところでございまして、引き続き、重大な関心を持って作業の推移を見ているところでございます。
 一日も早く、初期の目的が達成されるように、外務省としても全力を尽くしていきたいと考えております。

イスラエル・イラン情勢(G7首脳共同声明)

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濵本記者】イスラエル・イラン情勢について伺います。G7は「先制攻撃」をしたイスラエルの自衛権だけを認め、攻撃を受けたイランの自衛権は認めず、核兵器を作ろうとしていたとして、イランを責めています。しかし、イスラエルは既に核兵器を保有しており、IAEAの査察も拒否しています。であるにもかかわらず、IAEAの査察も核合意も受入れたイランだけをG7は責めています。2002年、ネタニヤフ首相は、イラクが大量破壊兵器を保有していると主張し、翌年、米国はイラク戦争を始めました。しかし、大量破壊兵器はなかった。これは、その繰り返しではないでしょうか。日本政府は、なぜG7の不平等な姿勢に迎合するのかお聞かせください。

【岩屋外務大臣】これについては、先ほど来説明しておりますように、先般のG7サミットでは、中東地域全体における平和と安定に対するコミットメントを強調し、その文脈において、イスラエルには、自国を守る権利はありますよねということを言っただけであって、同時にやはりこの問題は、協議によって解決をされなければならないということをG7として発しているわけです。したがって、法的評価はこの段階では控えたいと思いますが、我が国の立場としては、あくまでもこういう軍事力による解決ではなくして、交渉・協議によってこの問題が解決されるべきだということを、全ての関係者にしっかりと求めていきたいと考えております。

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