記者会見
岩屋外務大臣会見記録
(令和7年6月17日(火曜日)17時18分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)G7カナナスキス・サミット
【岩屋外務大臣】冒頭、私(岩屋大臣)から4点、御報告がございます。
まず、G7サミットでございます。
現在、石破総理は、G7カナナスキス・サミットに出席するために、カナダを訪問中です。
初日は、世界経済、経済安全保障と重要鉱物のサプライチェーン強靱化・多様化、山火事や移民への対応といった幅広い課題に加えまして、イラン・イスラエル情勢が緊迫化する中東、ウクライナ、インド太平洋といった国際情勢についても、率直かつ突っ込んだ議論が、首脳間でなされたと承知しております。
G7は、発足から50周年を迎えるわけですけれども、このG7が連携・結束して、国際社会の諸課題への対応を主導していくことは、極めて重要だと考えております。明日のセッションにおきましても、石破総理は、アジアからの唯一のG7メンバーとして、インド太平洋の視点も含めまして、日本の立場と取組を発信してまいります。
(2)日米首脳会談
【岩屋外務大臣】二番目は、このG7サミットに合わせて開催をされました日米首脳会談についてでございます。
現地時間の16日、G7サミットの機会、石破総理は、トランプ大統領と約30分間、日米首脳会談を行いました。
両首脳は、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を推進し、両国が世界の平和と繁栄に一層貢献すべく、日米同盟を更に強化していくことを確認いたしました。
また、両首脳は、米国による一連の関税措置に関して、率直な議論を行い、担当閣僚に対して、更に協議を進めるように指示することで一致を見たところでございます。
(3)中東情勢(イスラエル・イラン間の攻撃の応酬)
【岩屋外務大臣】それから、三番目に、中東情勢についてでございます。
現下の、イスラエル・イラン間の攻撃の応酬を深く懸念しております。これ以上事態をエスカレートさせるいかなる行動も慎むべきであり、我が国として、全ての関係者に、最大限の自制と事態の沈静化を強く求めてまいります。
私(岩屋大臣)からは、16日に、アラグチ・イラン外相に対しても、これらの点について強く申し上げたところです。
イスラエルとの間では、これまでも様々なレベルで働きかけを行ってきており、先月5月13日、サアル外相とも会談をいたしましたが、引き続きコンタクトを取って、最大限の自制を要請していきたい、外交努力を沈静化に向けて継続してまいりたいと考えております。
また、事態は緊迫の度合いを深めておりまして、邦人保護に最大限の緊張感を持って取り組んでまいります。特に、イランの状況は深刻でありまして、イランに対する危険レベルを更に引き上げて、イラン全土に退避勧告をまもなく発出する予定です。
(4)日韓国交正常化60周年記念レセプション
【岩屋外務大臣】4番目に、日韓国交正常化60周年記念レセプションについてでございます。
昨日16日、ソウルにおきまして、在韓国日本大使館主催の日韓国交正常化60周年記念レセプションが開催されました。席上、李在明(イ・ジェミョン)大統領からビデオメッセージが寄せられたほか、多くの方々が来場され、大変盛況だったと承知しております。
また、今週木曜日19日には、東京におきまして、駐日本韓国大使館による記念レセプションが開催されます。
この節目の年に、今後の日韓関係の安定的な発展に向けて、私(岩屋大臣)自身も引き続き取り組んでまいります。
冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。
日米首脳会談
【読売新聞 上村記者】冒頭、大臣から御発言のありました日米首脳会談についてお伺いします。まず、対面会談で、今回、2月以来、首脳会談が行われた意義についてお聞かせください。それと、関税措置に関する交渉は、継続で一致をしました。この交渉継続で一致というものが、この交渉全体で見たときに、前進と言えるのかそうでないのか、その辺りの評価についても、併せてお聞かせください。
【岩屋外務大臣】ワシントンの首脳会談以来の会談だったわけでありますが、この間、御承知のとおり、電話会談も数度行っておりますし、そういう意味で、非常にうち解けた率直な意見交換が行われたというふうに聞いております。
関税についてですが、石破総理からも既に申し上げておりますように、米国の関税措置について、これまで日米双方が、真摯な議論を精力的に続けて、ギリギリまで合意の可能性を探ってきたけれども、現段階では、双方の認識が完全に一致していない、一致していない点が残っていると、したがって、パッケージ全体としての合意には至っていないということです。
こうした中で、今回の会談では、担当閣僚に対して、更に協議を進めるように指示をすることで、一致したということです。
我が国としては、引き続き、国益を守りながら、日米双方にとって利益になる合意が実現できるように、日米間で精力的に調整を続けていくということになります。
この間、赤澤大臣も、4回、5回、6回と閣僚間の協議を続けてきて、その成果も踏まえて、首脳会談を行い、完全に一致はしていないけれども、残った点については、閣僚間で協議を進めなさいということになったわけですから、まあ、一歩ずつ、着実に前進しているというふうに理解しております。
中東情勢(日本の役割、邦人退避)
【日経新聞 馬場記者】冒頭で御説明のあったイスラエル・イラン情勢についてお伺いします。先週以来の応酬で事態は悪化しており、国際社会が自制を訴える声も、両国に響いていないように見えます。岩屋大臣は、昨日、先ほども御説明があったように、イランの外務大臣と電話会談をされましたけれども、日本が今の中東情勢で果たすべき役割を改めてお伺いします。また、現地には日本人の方も住んでおられますけれども、安全確保、現地からの退避に向けた準備状況、また、国民の退避での第三国との協力の可能性についてもお願いいたします。
【岩屋外務大臣】冒頭申し上げたとおりに、現下のイスラエル・イラン間の攻撃の応酬を深く深く懸念をしております。そして、イスラエル、イラン、あるいは全ての関係者に対して、最大限の自制と事態の沈静化を強く求めておりますし、これからも求めてまいります。
イスラエルも、もちろん我が国の友好国でありますし、イランとも長年にわたる外交関係がございますので、日本の果たすべき役割は、あくまでも、対話・協議によって、この問題を解決すべきだということを、双方に対して、働きかけていくということだと考えております。
中東地域の平和と安定は、我が国にとっても極めて重要です。今後とも、G7を含む関係国・機関と緊密に連携して、必要なあらゆる外交努力を行っていきたいと考えております。
それから、在留邦人の保護に関してですけれども、今、イラン及びイスラエルの在留邦人に対して、適時注意喚起を行っております。昨晩の、テヘラン市内へのイスラエルの攻撃に当たっては、在留邦人の安全な場所への具体的な退避支援を行いました。なお、現時点で、邦人の生命身体に被害が及んでいるという情報には接しておりません。
また、両国における国外への退避手段についても現在調整しております。当然、第三国との協力についても検討を行っているところです。適切に、事態の状況を見極めながら、適切に判断していきたいと考えております。
中東情勢(邦人退避、イスラエルとの電話会談の調整状況)
【共同通信 阪口記者】今ありました邦人保護について、まず伺います。具体的な安全な場所への退避についての支援を行われたということですけれども、具体的な在留邦人の方に安全な場所の情報提供を行われたとか、そういう理解でいいのでしょうか。それとも、こちらが安全だからという形で、大使館の方から具体的に避難の場所を提供したりとか、そういったことを行われたのか、どういったシーンだったのか、もう少し具体的に伺えればと思います。それと、冒頭おっしゃいました、渡航レベルを引き上げということですけれども、「退避勧告」ということですので、レベル4に引き上げという理解で、まずよろしいのか確認させてください。併せて、昨日、イランのアラグチ外相と会談されましたけれども、イスラエル側とは、どのような調整をされているのか、具体的な調整状況、外務大臣会合について、見通しがありましたら教えてください。お願いします。
【岩屋外務大臣】まず、具体的な退避支援ですけれども、安全な場所への誘導を行ったということですが、それがどこであるかということについては、まさに邦人の安全確保のためにそれは控えさせていただきたいと思っております。「退避勧告」も、事態の推移を踏まえて、適切に判断していきたいと思っております。イランの状況が非常に厳しいということで、これは迅速に引き上げることになると思いますが、イスラエルの状況は、よく見ながら、これも適宜適切に判断を行っていきたいと思います。
それから、イスラエルとのコンタクトについては、直接の電話会談も含めて、様々、今、調整しているところです。
中東情勢(日・イスラエル関係)
【パン・オリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
私の質問も中東に関するものです。イスラエルがパキスタンの核兵器庫を攻撃する計画があるという報道や、イスラエルがエジプトに対して核兵器での威嚇を行ったという報道があります。これはイスラエルの首相及びエジプトの公式声明によるものです。
イスラエルは、核兵器不拡散条約(NPT)に署名しておらず、昨日のG7では、イスラエルに対し、自衛の名の下に、誰を攻撃しても良いという支持を与えられました。そのため、日本政府は、ロシアに対して制裁を呼びかけたのとは対称的に、周囲に対する制裁を求めるのではなく、急速に軍事的技術面での連携を深めているように見受けられます。
イスラエルに対する多くの声明が発表されたことは承知しています。しかし、制裁を科さないという日本政府の政策は、イスラエルによる違法な占領と他国に対する卑劣な戦争を続けさせることを助長していると思いませんか?
【岩屋外務大臣】我が国としては、現下の緊迫する中東情勢を受けまして、事態のエスカレーションというのは、国際社会全体の利益にならないということで、イスラエルを含む全ての関係者に対して最大限の自制、そして、事態の沈静化を強く求めているところです。
言うまでもなく、イランの核兵器開発は許されないと考えておりまして、これについても協議を通じた解決が重要であると考えているところです。
引き続いて、事態の更なる悪化を防ぐために、最大限の必要な、あらゆる外交努力を重ねていきたいと考えているところです。
中東情勢(イスラエル・イラン間の攻撃の応酬、ガザ情勢)
【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】日本の外交方針について質問します。米国は、米英豪の同盟関係ともいうべきAUKUSから手を引くことを宣言し、カナダのカーニー首相は、米国との同盟を解消すると発言するなど、いわゆる西側、あるいは、G7のまとまりは急速なスピードで分裂・解体しつつあり、「もう西側は既に存在しない」という欧州委員会委員長のフォン・デア・ライエン氏の発言どおりの状況となっているように見えます。そこで、イスラエルとイランとの戦争についてですが、日本政府は、既にバラバラの西側と協調するという惰性の外交から、国益を第一に考え、第3次石油危機の、危機を避けるための独自の外交を進めるべきではないかと考えます。日本は、G7での孤立を恐れず、ガザでジェノサイドを続け、核保有国でもあるイスラエルに対し、強い自制を求め、先制攻撃を仕掛けたイスラエルに対して果敢に停戦を呼びかけ、更にパレスチナとの二国家共存、パレスチナ国家承認にまで踏み切るべきではないかと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。
【岩屋外務大臣】G7が分裂・解体しつつあるという御指摘には同意をいたしません。むしろ、世界が分断・対立に向かい、様々な紛争が勃発している中にあればこそ、G7がやはり結束をすることが大事だと思っておりまして、今般のカナダでのサミットにおいても、日本が果たすべき役割というのは、G7の結束をもう一度しっかりと図る。課題によっては、テーマによっては、意見の相違があるであろう中にあって、やはり結束を強固にするために、日本が結び目の役割を果たしていくということだと思いますし、石破総理は、その役割を、今、しっかり果たしていただいていると考えているところです。
それから、後段の点については、全く同感でございまして、先ほど来、申し上げておりますように、ガザ情勢についても、今般のイラン・イスラエル間の問題についても、全ての関係者に対して、国際法に則った対話・協議による解決ということを、我々は主張してきているわけです。ガザについては、人質解放と停戦に関する合意、せっかくできた合意を、しっかり誠実かつ着実に履行することが、双方にとって重要だという立場ですし、このことについても、イスラエルを含む全ての当事者に対して、交渉に立ち戻って、合意の継続に向けて誠実に取り組むように求めてきております。
それから、パレスチナの問題については、これも、これまで一貫して申し上げてまいりましたように、当事者間の交渉を通じた「二国家解決」を、一貫して我々支持しております。独立国家樹立に向けたパレスチナ人の希望を理解して、これに向けたパレスチナの努力を支援、日本がしてきたところです。
しかしながら、その上で、パレスチナの国家承認については、やはり和平プロセスをいかに進展させるかということが大事だと思います。現行の状況で、ただ、国家承認をすることが事態の改善解決につながるのかどうかということを、しっかり考えていかなくてはいけないと思っておりますので、「二国家解決」が、最終的な解決だという方針を堅持しつつ、引き続き、総合的に、どの段階でどういう対処が最も有効かということを総合的に検討していきたいと思っているところです。
中東情勢(イスラエル・イラン間の攻撃の応酬)
【ラジオフランス 西村記者】イスラエルとイランの情勢について、一点確認したいと思います。イスラエルのイランへの攻撃の直後、石破総理が、強くイスラエルの行動を非難しました。その後、日本の政府からイスラエルに対して同じような厳しい発言はなかったような気がするんですけれども、最初の受け止め方と、今の受け止め方の違いがあるのでしょうか。
【岩屋外務大臣】現下のイスラエル・イラン間の攻撃の応酬を深く懸念しております。当初はイスラエルからの攻撃があったのですが、イランからも報復があって、その応酬が今続いてしまっているというのが現状でして、現在の状況を我々深く懸念しております。
今回のG7サミットの首脳声明につきましては、現下の情勢を受けて、首脳間で議論をした結果を踏まえた、コンセンサスが発出されたと受け止めているところでして、中東における平和と安定に対するG7としてのコミットメントを改めて強調するものだったと考えております。
いずれにしても、日本政府としての立場は、本日の会見冒頭に、私(岩屋大臣)から申し上げたとおりです。イスラエルに対しても、イランに対しても、事態を沈静化させ、対話・協議によって問題の解決を図るべきであるというのが日本政府の考え方です。
G7カナナスキス・サミット
【日経新聞 馬場記者】G7サミットについてお伺いします。出席された米国のトランプ大統領が、会合途中退席しました。米国の首脳がG7サミットに不在になることについて、これまでG7の結束の重要性を訴えてきた日本政府としての見解をお伺いします。
【岩屋外務大臣】他国の政府の判断について、我が方からコメントすることは控えたいと思いますけれども、米側の発表によりますと、トランプ大統領は、現下の、中東情勢に鑑み、G7カナナスキス・サミットの16日の国際情勢に関する議論を終えた後に、帰国することになったと承知しております。
したがって、中東情勢に対応するために、やむを得ず途中退席することになったと理解しております。しかし、トランプ大統領出席中に、首脳間で様々な課題に関して率直な議論が行われてきたと承知しております。G7の連携結束の重要性は共有できたと考えております。あくまでも、やむを得ざる事情による退席だったのではないかと受け止めているところです。
米国の関税措置に関する日米協議
【共同通信 阪口記者】G7での日米首脳会談についてお尋ねします。関税交渉について、今回の会談で合意するんではないかという期待感も多少あったかなと思うんですけれども、今回は、今後も協議を進めていく方向で一致したと思います。今後の進め方として、大臣として、時間をかけて、しっかりとした合意を求められるべきなのか、7月9日という追加関税の猶予措置という日程もありますけれども、どのような方針で、日程感で進めていくべきだというふうに岩屋さん、感じられるのか、率直な意見を伺えればと思います。
【岩屋外務大臣】首脳会談を終えたばかりでもありますので、今後の協議については、これから調整することになってまいります。いずれにしても、両首脳が議論して、更に閣僚間の協議を加速せよという指示を出したわけですから、日米間で精力的に調整を行って議論を続けていくことになると思います。
日米双方に、言うまでもなく、譲れない国益というものがあるわけですけれども、我が方で言えば、基幹産業である自動車分野の利益を守ることは、我が国の国益の根幹だと考えておりますので、石破総理も再三おっしゃっておられるように、こうした国益に沿った形での合意の可能性を、真剣に今、探っているところですので、なかなかこの段階で、いついつまでにということは、申し上げることは困難ですけれども、一日も早く合意ができることに越したことはない、望ましいわけでございますから、そこへ向かって、更に日米間で精力的に議論を続けていきたいと考えております。
日韓国交正常化60周年記念レセプション
【共同通信 阪口記者】重ねて失礼します。冒頭、御発言ありました日韓についてお尋ねいたします。向こうのレセプションに、李在明大統領のビデオメッセージがあり、長島補佐官も出席されたと思います。19日の日本側でも、韓国大使館のレセプションあると思いますけれども、今、政府として、どなたが出席される予定なのか、岩屋さん、御出席されるのか、総理が出席されるのか、その辺り調整状況、もしありましたら教えてください。
【岩屋外務大臣】そこはまだ決まっておりません。調整中ですが、ソウルにおいても大変良い式典を、レセプションを開催していただいたということですので、本邦においても、日韓関係を前にしっかり進めていくという象徴になるような式典になるように、政府として、最善の対応を行っていきたいと考えております。