記者会見
岩屋外務大臣会見記録
(令和7年2月14日(金曜日)11時39分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)日・パラオ外相会談
【岩屋外務大臣】まず、冒頭私(岩屋大臣)から、2件ご報告がございます。
まず、本日、パラオ共和国のアイタロー国務大臣と、外相会談を行いました。
1月の私(岩屋大臣)のパラオ訪問、大統領就任式に伺ったのですが、そのとき以来、ちょうど1か月で2回目の会談となりました。
12日に行われました日・パラオ首脳会談に引き続き、日本とパラオの「トクベツ」な関係、これパラオ語になっておりますが、この特別な関係をより深めることができたと思っております。
パラオは、「自由で開かれたインド太平洋」、FOIP実現においても、重要なパートナーでございます。今後も緊密に良い連携をしていきたいと考えております。
(2)日米韓外相会合
【岩屋外務大臣】次に、本日からの、ドイツ・ミュンヘン訪問の機会を捉えまして、G7の外相会合に加えて、日米韓の外相会合も実施する予定でございます。
地域の安全保障環境が厳しさを増す中、日米韓が引き続き結束をして、地域の平和と繁栄に向けた取組を主導していくということを確認してまいりたいと考えております。
冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。
日米韓外相会合
【日経新聞 馬場記者】先ほど冒頭で御説明がありました、日米韓の外相会合についてお伺いします。今回、会議を開かれるということですけれども、大臣は既に対面で、それぞれの大臣と会談をされていますけれども、今回の会合の、改めて意義と、トランプ政権以後に、どのようにこれまでの協力を維持されていくか、お考えをお伺いします。
【岩屋外務大臣】先月の日米の外相会談、そして、これまでの日韓外相会談におきまして、それぞれ、ルビオ国務長官及び韓国の趙兌烈(チョ・テヨル)外交部長官と、日米韓連携の重要性を確認してきているところでございます。また、先般の日米の首脳会談でも、北朝鮮に対応し、地域の平和と繁栄を堅持する上での、日米韓の3か国パートナーシップの重要性を確認をしたところでございます。
今回、3人が一堂に会する機会に、日米韓の外相会合を実施することによりまして、米国の新政権の発足を受けて、日米韓が、引き続き結束して、地域の平和と繁栄のために取り組むということを確認する機会にしたいと考えております。
地域の安全保障環境がますます厳しさを増している中で、日米韓の戦略的な連携がこれまでになく重要であると、このことに変わりはないと思っております。この認識に立って、具体的な取組を進めていく、その有意義な契機にしていきたいと考えております。
核兵器禁止条約
【NHK 米津記者】来月開かれる核兵器禁止条約の第3回締約国会議の日本のオブザーバー参加について、まだ、政府としての方針というのが明示されていないもので伺いたいんですが、政府は、過去に参加実績のある他国の事例を検証するとしていましたが、現在の検証状況とオブザーバー参加するかどうか、今のお考えをお聞かせください。
【岩屋外務大臣】核兵器禁止条約に関する対応につきましては、これまで、オブザーバー参加した国々が参加に至った経緯、各国の内政及び外交・安全保障上の課題、同盟国との関係などについて、公開情報のみならず、各国政府などからも情報を収集して、検証を行ってまいりました。
核兵器禁止条約締約国会合は、御案内のとおり、2022年6月、及び2023年11月の2回開催されております。会合時点で、核兵器国と同盟関係にあって、核による拡大抑止の下にあったと考えられるオブザーバー参加国は、第1回会合においては、ドイツ、ノルウェー、ベルギー、豪州、オランダの5か国、でございました。また、第二回会合では、ドイツ、ノルウェー、ベルギー、豪州の4か国でございました。
これらの国々がオブザーバー参加した経緯については、国ごとに様々な事情があったことが分かっております。
例えば、ドイツ、ベルギー、ノルウェーの場合、総選挙後の連立政権発足にあたり、連立合意にオブザーバー参加の方針が盛り込まれたと承知しております。
オランダの場合は、議会で、オブザーバー参加を求める動議が可決された経緯があると承知しております。なお、オランダは、第1回の会合の後に、外務大臣から、「今回の参加経験に照らして、オブザーバーとして、さらに参加していくことには意味がない」とする下院議長宛ての書簡を提出し、第2回会合には参加しなかったと承知しております。
また、スウェーデンとフィンランドは、第1回会合にのみオブザーバー参加しております。フィンランドは、第2回会合前にNATOへの加盟が認められ、スウェーデンは、NATO加盟申請中ではありましたが、この条約が、NATO加盟から生じる義務と両立しないということを公表しております。
続きまして、これら各国の締約国会合における行動について、明らかになったことをご説明したいと思います。
NATOによる拡大抑止の下にある国は、おしなべて、核抑止への支持を強調しつつ、この条約が、自国の安全保障政策と根本的に相いれず、締約国になることはないという趣旨の発言を行っておりました。
例えば、ドイツは、第1回会合におきまして、「NATOの核抑止に完全にコミットする。ドイツは、核兵器禁止条約に参加することはない」と、表明しております。
また、これらの国々は、核兵器不拡散条約(NPT)が、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎であるといったNPTの重要性を訴える発言を行っておりました。
これらの検証を通じまして、これ以外にも、今申し上げた以外にも、様々な情報を得ることができましたが、相手国との関係もあり、対外的に明らかにできない点があるということは、ぜひご理解をいただきたいと思います。
その上で、オブザーバー参加の是非を判断するためには、以上に加えまして、あり得べき我が国の安全保障への影響や、唯一の戦争被爆国として、核軍縮において、実質的な進展を得るために、いかなる取組が真に効果的なのかという点を熟慮する必要があると考えております。
これらの諸点を総合的かつ注意深く考慮した上で、第3回締約国会合への対応について、しかるべく判断をしてまいりたいと考えております。
米国の関税措置(大統領覚書)
【共同通信 阪口記者】トランプ大統領の発言についてお尋ねしたいと思います。トランプ大統領が相互関税の発動に向けた大統領の覚書に署名されました。非課税障壁を調査して、改善策を報告するように商務長官などにも指示しております。政権の高官が、日本を例示して、「関税は低いけれども構造的な障壁がある」と述べていまして、日本経済への影響も懸念されますけれども、どのように対応されていく方針かお尋ねします。
【岩屋外務大臣】御指摘の米国による相互関税の導入に関する発表については承知しております。この発表を受けまして、既に米側と意思疎通を開始しております。
我が国としては、今後明らかになる措置の具体的な内容、及び我が国への影響を十分に精査して、適切に対応していきたいと考えております。
米露首脳電話会談(ウクライナ情勢)
【時事通信 川上記者】ウクライナの関係でお伺いします。先日行われた米露首脳電話会談で、両国はウクライナの停戦に向けた交渉を開始することで合意しました。トランプ大統領は、「2014年(平成26年)以前の状態にウクライナが領土を回復する可能性は低い」とも述べています。ウクライナの領土回復ができないままの停戦合意は容認できるのかなどを含めて、一連の動きをどのように受け止めていらっしゃるか伺います。
【岩屋外務大臣】御指摘のトランプ大統領の発言については承知しております。
ウクライナをめぐる様々な現在の動き、これについては政府としても、重大な関心を持って注視しております。また、情報収集を行っております。本件については、まさに、国際社会で議論が進行している途上にございますので、我が国として確定的な評価を、今申し上げるのは時期尚早だと考えております。
引き続き、ウクライナにおける公正かつ永続的な平和が一日も早く実現するように、国際社会と緊密に連携していきたいと考えております。
ミュンヘン安全保障会議(ウクライナ情勢)
【読売新聞 上村記者】今の点に関してなんですけれども、ミュンヘン安全保障会議に大臣、出席されますが、その場ではウクライナ問題についてどのようなことを主張されていくお考えでしょうか。
【岩屋外務大臣】今申し上げたように、ウクライナをめぐる様々な動きについては、重大な関心をもって注視しておりますし、情報収集も行っておりますが、当然のことながら、当事者であるウクライナが、しっかり関与する形で、公正で永続的な平和が、一日も早く実現することが大事だと考えております。
我が国は、主権や領土の一体性というものが極めて重要だと考えておりますので、そういう考え方に基づいて、議論に臨んでいきたいと思っております。
米露首脳電話会談(日露関係)
【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】先ほどからありますように、トランプ氏とプーチン氏の会談が実現し、米露関係が今後劇的に変化する可能性があります。日本は、バイデン政権時代のロシア弱体化戦略に従ったまま、岸田政権から石破政権に変わって以降も、ウクライナ支援と対露制裁の継続を維持し、先日もウクライナに88億円の支援をしたばかりです。この先、米露関係が劇的に変わった場合、日本政府は、これまでの姿勢を180度改め、ロシアとの関係改善を図る用意があるのでしょうか御教示ください。
【岩屋外務大臣】ロシアによるウクライナ侵略、この問題に対応するにあたって、米国とロシアの対話というのは極めて重要だと考えておりまして、我が国政府としてはその動向を注視しているところでございます。
その上で、先ほど来申し上げておりますように、我が国は、ウクライナにおける公正で、そして永続的な平和が実現するということが大事だと考えておりまして、G7、また、関係国と意思疎通をしっかり図って、取り組んでいきたいと考えております。
日露関係について申し上げれば、日露間には懸案事項もたくさんあります。今、日露関係は厳しい状況にありますけれども、一方で、隣国であるロシアとの意思疎通も必要だと考えております。
引き続いて、我が国外交全体において、何が我が国の国益に資するかという観点から、ロシアとの関係も適切に判断していきたいと思っております。
核兵器禁止条約、核軍縮
【毎日新聞 金記者】核禁条約の関連で伺います。今伺ったところ、だいぶ検証状況、進んできたというふうに感じられましたけれども、この検証状況、概ね終了したという認識でよろしいでしょうか、そして、この検証状況を踏まえて、日本政府としては、オブザーバー参加見送りという方向で、今、検討を進めているというそういった認識でよろしいでしょうか。
【岩屋外務大臣】まだ結論には至っておりません。ただ、先ほど申し上げた諸点を総合的に、かつ注意深く考慮、そして熟慮をした上で、第3回の締約国会合が、3月上旬に開催予定であるということも念頭に置いて、叱るべく判断していかなければいけないと考えております。
【毎日新聞 金記者】今の関連で、これまでオブザーバー参加の是非に対する議論というのが、これまでもあったと思うんですけれども、今回改めてこういった検証作業に着手された意義と、この核禁条約の背景となっているNPT体制の弱体化であったりとか、遅々として進まぬ核軍縮交渉、軍備管理の問題等あると思うんですけれども、その点について改めて大臣、どのようにお考えか教えていただければと思います。
【岩屋外務大臣】まだ結論には、最終的な結論には至っておりませんので、結論を出す段階で、それらのことについても申し上げさせていただきたいと思いますが、基本的に我が国としては、核保有国、そして非核保有国の両方が参加しているNPT体制の中で、その両者の橋渡しをしていくという役割を果たすことが、大切だと考えて、これまで取り組んできたところでございます。そういったことも含めて、更に熟慮を重ねて、然るべく判断して、そのときにしっかりと説明をさせていただきたいと思っております。
拉致問題(日米の協力)
【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
日本は、過去20年間、北朝鮮から拉致被害者を連れ戻すために、歴代米大統領に支援を常に求めてきました。これらの米大統領は、支援を約束したが、誰も解放されませんでした。
トランプ大統領は異なるアプローチを取っているようです。例えば、ハマスに対しては、今週土曜日までにイスラエルの人質が解放されない場合、ガザを地獄に変えると脅しました。
以上を踏まえ、私の質問は、日本もトランプ大統領に、米国との同盟を基に、例えば、日本人拉致被害者をある期限までに解放しなければ北朝鮮を地獄に変えると脅すような、類似のアプローチを取ってほしいと考えますか。
【岩屋外務大臣】日米首脳会談におきまして、拉致問題の即時解決について石破総理から引き続いての理解と協力を、トランプ大統領に求め、トランプ大統領から全面的な支持を得たということは、大きな成果だったと思います。また、このことは、拉致問題の解決に向けた、我が国の主体的な取組に寄与するものであったと考えております。
首脳間を始めとする、日米の強固な信頼関係、協力関係の下で、全ての拉致被害者の一日も早いご帰国を実現するということに向かって、石破総理の強い決意の下に、政府として、何が最も有効な手立てかということを考えて、取り組んでいきたいと思っておりまして、ここは、米国の協力を得ながら、あくまでも我が国は主体的に解決していくべきことだと考えております。